オナラことわざ辞典__2_

【オナワザ】#22 愛のままにわがままな僕が一番傷ついた

年末から2週間弱、実家のある大阪に帰省していました。
「みうらじゅんになる」と会社を辞めてから初めての帰省だったこともあり、当然のことながら数々の友人に退社までの経緯や今後の話をすることに。

しかしどうも上手く伝わらないんですね。

自分のまとめ方や説明の仕方が至らない部分が多いのですが、そもそも「みうらじゅんって誰…?」と言われることがほとんど。
「ゆるキャラとかマイブームって言葉を作った人」と言うと「へえ!すごい!」となるのですが、そこからMJの魅力を最大限伝えようと『ゴムヘビ』や『Since』『尿瓶』について熱弁をすると、段々友人の顔は歪んでいきます。


このままではイカンと思い、今度は「ブログを読んでくれ」と頼みました。

私がMJに宛てた届くはずのないラブレターを読む友人は、「うん、わかる」「確かにね」と何度も頷きながら読み進めてくれます。特に昔からの友人は私がお笑い好きであり、その道への憧れがあった背景をよく理解してくれているようでした。
しかし、私がMJといとうせいこうさんのライブで感銘を受け、退社を決意する部分から顔が曇り始めます。そして最後には「いや、分からん!」と雑に(私の)スマホを投げられてしまいました。


基本的にはその時点で興味を無くされてしまい、それ以降の弁明は許されません。上告は却下です。
最終的には「まあ、頑張れよ」と取って付けたような常套句で話を打ち切られる始末。もはや、彼らがお盆に会ってくれる保証はありません。

ですが私は紛れもなくMJへの「愛のままに」決めたことなので、後悔はしていません。


そして実家といえばもう1つ伝えなければならない相手がいます。
「家族」です。

私は母子家庭の一人っ子、祖父も物心つく頃にはいませんでした。
そのため、伝えるべき相手は祖母です。

まずは母に伝えました。

母「あんた、会社辞めてどうすんの?」
私「ああ、一人でやっていくで」
母「すごいなあ…(汗)

基本的には放任主義な母なので、まあ予想していた通りの結果でした。
ただ、予想以上に小首を傾げた時の角度がついていたかもしれません。そんなに小首傾げる?と素直に思うほど。小首が曲がり続けて「アベシ!」となるのでは?と心配になるほど。


次に伝えたのは祖母です。
祖母は昔から私のことを気にかけてくれており、強がりだった私も祖母にだけは辛いことも打ち明けられるのでした。

イメージとしてはのび太のおばあちゃんを思い描いていただければと思います。
そこに「関西弁」と「オーバーなリアクション」を追加してよくかき混ぜてください。私の祖母が完成します。


私は祖母から「あら、そうなんや。まあ大変やと思うけど頑張りね」と、そっと背中を押してくれる言葉を期待していました。
と言うより、それ以外の言葉は想定すらしていませんでした。

そして、実際に祖母とした会話はこうなりました。

祖「あんた会社辞めてどうすんの?」
私「え、一人でやっていくで。」
祖「え!?生活は?」
私「まあ、アルバイトとかしながらになるよ」
祖「えぇ!?私の一番なってほしないようになったなあ…

「私の一番なってほしないようになったなあ…」
この言葉は私の中で何度もリフレインし、言葉を失わせるのでした。

考えてもみてください。

ドラえもんの映画「おばあちゃんの思い出」で、小5ののび太が『感謝を伝えたい』と過去にやってきておばあちゃんに会うシーンがありますよね。
ドラえもんが「未来からやってきたなんて信じられるわけない」と言うも、おばあちゃんは「そうかい、よくきたね」とのび太を受け入れてくれる名シーンです。
もしそこでのび太が「僕はみうらじゅんになるんだ」と言った途端に顔が豹変し、「え、それ生活どうするの?」「いつまでお父さんとお母さんに助けてもらうの?」「いつ自立するの?目処は?」と鬼詰めしてきたら言葉を失うでしょう。


その後、帰り際には「まあ、あんたが幸せなんやったらそれでええけど」とフォローはもらえたのですが、祖母の瞳の奥に「世間」を見た気がします。
夢を追いかけて不安定な道を進むこと。それはドラマの中だから「ドラマチック」で済むのであり、現実に起きるとイタいだけなのです。

そのことを一番身にしみて感じた、とても良い経験でした。
愛のままに、わがままにやることは聞こえが良いことですが、それは「イタい」んです。イタいのは見ている人ではありません、やった本人が一番イタいんです。

しかし、世の中には挑戦することをもてはやす潮流が色濃く、こういった「イタい」という側面は語られていないのではないでしょうか。それは恐らく政治家が「イタい」人の割合をどんどん増やして、国民に無駄遣いさせて経済を回したいからです。

私はその潮流にまんまと、どんぶらこと乗ってしまいました。楽して会社に残って、甘い蜜をチューチュー吸っていれば良いものを、グラサンロン毛のおじさんに憧れて退社して野ざらしになっています。凍てつく風の吹きすさぶ東京で、野ざらし。

裸の王様だった私にそう気づかせてくれたのは、祖母でした。
だからこそ、私は声を大にして言いたいことをことわざにします。

愛のままにわがままな僕が一番傷ついた

【意味】
夢を追って挑戦することは偉大だが、最もイタい思いをするのは自分だということ。

【例文】
金は貸さない、ヘラヘラと夢を追いかけて会社なんか辞めるからだよ。
愛のままにわがままな僕が一番傷ついたって言うだろ。

サポートされたお金は恵まれない無職の肥やしとなり、胃に吸収され、腸に吸収され、贅肉となり、いつか天命を受けたかのようにダイエットされて無くなります。