書籍から能力分析

Amazonで「力 能力」に関する書籍を検索し、「~力」を抽出した。


能力一覧

・社会人基礎力

・読解力

・語彙力

・社会生活力

・怒られ力

・批判的思考力

・影響力

・超影響力

・説得力

・異文化理解力

・論破力

・状況判断力

・グローバル力

・仲間力

・時事力

・英語を聞きとる力

・会話力

・漢字力

・京都力

・洞察力

・自立力

・秘書力

・勘違いさせる力

・日本語応用力

・ほめる力

・戦闘力

・知る力

・数学的に考える力

・未来を見る力

・説明力

・人と関わる力

・学びに向かう力

・国語力

・聞く力

・話す力

・雇われる力

・自治の力

・立ち直る力

・問題解決力

・社会力

・馬鹿力

・実践力

・人間力

・動機づける力

・論理的思考力

・考える力

・感じる力

・選ぶ力

・対峙力

・未来を生き抜く力

・超読解力

・「共にいる」力

・情報を読む力

・答えなのでない事態に耐える力

・文章力

・意志力

・自分をコントロールする力

・超直感力

・コミュニケーション力

・創造力

・決断させる力

・読む力

・地頭力

・数学的思考力

・地域創生力

・構”創”力

・常識力

・自分を愛する力

・超トーク力

・仕事力

・やり抜く力

・俯瞰力

・人脈力

・立て直す力

・雑談力

・生きる力

・論理の力

・巻込力

・自分で考え、行動する力

・批判力

・自分を変える力

・社会的想像力

・異文化適応力

・個人力

・指名され続ける力

・あきらめる力

・底力

・情報力

・治る力

・通す力

・現場力

・組織力

・内定力

・質問力

・思我力

・行動力

・交渉力

・群れない力

・逆境力

・戦略完遂力

・ブチ抜く力

・アイデア実行力

・瞑想の力

・読書力

・売れる力

・逃げる力

・賢くなる力

・目に見えないものを大切にする力

・怒らない習慣力

・共感力

・人望力

・人格力

・瞬発力

・対応力

・データ分析力

・予測力

・悩む力

・Instagram力

・適応力

・挫折力

・考え続ける力

・引き出す力

・問う力

・自己認識の力

・学習力

・実行力

・デザイン力

・暗算力

・決断力

・記録の力

・創造する力

・要約力

・成果をあげる力

・構想力

・「超」勉強力

・超雑談力

・アウトプットする力

・集中力

・求心力

・波に乗る力

・人生を自分で見通す力

・オンラインでズバリ伝える力

・育成力

・(いじめない力)(いじめられない力)

・危機突破力

・発信力

・接客力

・多動力

・自己を見つめ、学びを得る力

・突き抜ける力

・儲ける力 株関連の力

・証明力

・漢文力

・ひとりになる勇気、人とつながる力

・「問いかけ」の力

・チームを変える習慣力

・営業力

・キャッチコピー力

・伝達力

・統率力

・目立つ力

・積み上げ力

・超客観力

・歴史を活かす力

・決定力

・復活力

・まなざしの力

・整える力

・やりきる力

・言いかえ力

・創作力

・拒絶する力

・放っておく力

・超決断力

・学ぶ力

・問題を解く力

・指導力

・習慣の力

・超集中力

・似合わせ力(ファッション系)

・グローバルリーダー力

・議論する力

・傾聴力

・上司力

・強運力

・存在力

・超思考力

・言語化力

・課題発見力

・自分を信じる力

・感動力

・数字で考える力

・記憶力

・使う力

・教わる力→自己の判断軸を確立し、物事を取捨選択できる能力

・感化力

・課題設定力

・コンセプト力

・聴く力

・孤独をたのしむ力

・なんとかする力

・発想力

・率先力

・リーダー力

・絶対的コミュ力

・達成力

・一瞬で判断する力

・たとえる力

・感化する力

・人生力

・直観力

・危機を突破する力

・考えない力

・世界を俯瞰する力

・没頭力

・先見力

・学びなおす力

・自分を強くする動じない力

・地道力

・超速読力

・ゼロからはじめる力

・断る力

・逆境を跳ね返す力 2019

・結果を勝ち取る力

・人間関係力

・断食力

・自炊力

・本質を見抜く力

・深く考える力

・修正力

・睡眠力

・ファシリテーション能力

・知覚力

・続ける力

・手抜き力

・ハッピー力

・始める力

・巻き込む力

・敬聴力

・準備する力

・速読力

・応援力

・応援する力


気付き① 「超」がつく書籍が複数ある

「超○○力」「超○○術」という書籍が複数あった。超が付かないものもあるが、なぜ「超」がないとだめなのか、気になる所だ。


気付き② 他者との関係に関する能力が多い

上記に挙げた能力を可能な限り分類してみた。分類で一番多かったのが、他者との関係に関する能力だ。雑談力・仲間力・感動力などがその例だ。

次に多かったのが、思考系の能力。批判的思考力・俯瞰力・洞察力などがそれにあたる。

その次に、国語力とも言うべき力が多い。語彙力や漢字力、読書力などだ。これは他者との関係に関する能力の基盤であり、ひとまとめにして考えることも可能だ。


気付き③ あまりに能力が多い

能力の中には似たような表現はあるものの、社会に存在する能力はあまりに多い。「人格力」のように人格さえも「力」として表現されているほか、挙げた能力一覧には含まれていないが、自炊に関する「自炊力」という書籍もあった。

ご飯を作れることなど、普通であれば、「力」として意識することはない。少なくとも、私はそうだ。だが、それさえも力であるという。

なぜ、ここまでいろいろなものを「力」として捉えるようになったのだろうか。スキルアップ、能力主義といった社会の変化かがあるのかもしれないし、別の要因が関係するのかもしれない。

個人の自信のなさは要因の1つではないか。あらゆることを「能力」と定義すれば、「自分には何もない」と思っている人は救われた気分になるだろうし、自信が付く可能性がある。

例えば、悩みすぎている自分が嫌いだと考えている人がいたとしよう。その人が「悩む力」という書籍を見つけたとき、「悩めることも能力なんだ」と思い、悩みすぎる自分を肯定的に捉えられるかもしれない。

逆に、スキルアップを求める社会が要因の1つでもあるだろう。普通の能力ではなく他者にない力をつけたいと思っている人にとっては、見たことも聞いたこともないような力は魅力的に映るし、買いたくなるはずだ。

「自分にその力があるのか不安になり読みたくなってしまう」という人が多いなら、あらゆることを能力と定義する方が売り手にとって都合が良い。


問1 いつからこうした能力は出現したのか

いつから上記に挙げたような能力は言及され始めたのだろうか。ここでは、出版書誌データベースを使用して、「〇〇力」を入力し、それをタイトルとする書籍の発行年を調べる。

全て調べるのは面倒なので、印象に残ったもしくは複数の書籍で言及があったものを対象とする。


影響力:「影響力の武器 なぜ,人は動かされるのか」1991年

語彙力:「語彙力と読書 マッピングが生きる読みの世界」「語彙力の発達とその育成 国語科学習基本語彙選定の視座から」2000年 英語の書籍では1991年から使われていたが、国語に関連する語彙力と捉えたため、そちらは採用しなかった

文章力:「知的生きかた文庫 短くてうまい文章の書き方 文章力が驚くほどつく本!」 1992年

行動力:「躍進企業トップの発想と行動力 ワクを超えた変革のリーダー」 1985年

質問力:「人と組織を動かす カリスマな質問力」 2009年

雑談力:「人を2時間飽きさせない「雑談力」」 2006年

感動力:「感動力」 2004年

直感力:「船井幸雄の「直感力」の研究 いかに人間性を高め,すばらしい未来を創るか」1993年


などとなったが、これだけでは不十分なので、最初に挙げた能力のうち171の能力がタイトルにある書籍が初めて出版された年を調べた。結果は以下の通りである。

・2000年以降 122個

・2000年以前 49個

・2010年以降 71個

明らかに、2000年以降、新たな能力が増えている。たしかに、多くの能力が他の能力の下位概念となって能力の総数が減る可能性はある。例えば、話す・聞く能力はコミュニケーション能力に含まれるといえるだろう。ただ、それを考慮しない時に、能力は2000年代に非常に増えたという結果を得られた。

出版年の幅は1964から2021年までと幅が広く、特に、2010年以降は71個と、およそ10年で全体の40%を占める能力が出現している。


この結果を利用して、横軸に出版年、縦軸に書籍の数を取った相関図を作成したのが以下のものだ。

これをみると、20世紀後半に言及された能力は、時間が経っていることもあり、書籍の数は2000年代に出てきた能力と比べると多い。

逆に、2000年以降の能力の書籍の数は語彙力以外は100を超えておらず、能力1つ1つに関する書籍の数が少なくなっていることが分かる。これが2040年、50年になると2000年以前の能力と同様に書籍の数は増えるのだろうか。

ただ、書籍の分野が多岐にわたることに注意する必要がある。例えば、語彙力は国語だけでなく英語の書籍でも言及され、コミュニケーション能力は社会人の書籍だけでなく英語の書籍にも書いてある。書籍を数える際、これらの事情を考慮していないため、社会で使う場合に限定すると、結果が変化する可能性がある。


問2 能力に特徴はあるか?

①1950~1999年、②2000年~2009年、③2010~2021年の3つに区切り、能力の特徴を調べた。「これは能力と言えないのではないか?」と思える能力を個人的な主観で数えたところ、

①4個(睡眠力、直観力、人望力、直感力)

②7個(地道力、断食力、地頭力、自炊力、個人力、悩む力、人脈力)

③11個(人格力、没頭力、孤独をたのしむ力、怒られ力、手抜き力、応援する力、応援力、考えない力、強運力、挫折力、諦める力)

となった。年代の変化とともに、能力と言いにくい能力が増加している可能性がある。

また、③には、Instagram力やオンラインでズバリ伝える力など、SNSやネットを介した対話が主流になる現在に特有の力が見られた。


問3 能力と言えない能力が生まれるのはなぜか?

問2で生まれた疑問を考える。普通であれば、手抜きをすることを「手抜き力」とは言わないし、挫折している人を見てあの人は「挫折力がある」とは思わない。

なぜ、能力にもならないことを能力として定義するようになっているのだろうか。


仮説1 捉え方の変化が生まれた

人々に捉え方の変化が生まれたことは、明らかではないか。「挫折力」「悩む力」がそれを示している。

ではなぜ、捉え方の変化が生まれたのか。人々の捉え方を変化させたのは何か。2000・10年代に入って何が起こったのか。

その1つとして、SNSの本格普及が挙げられる。

SNSの歴史について、論文を引用しながらまとめてある。それによると、Facebookの日本支社設立が2010年、Twitterの日本支社設立は2008年・2010年にスマホ無料アプリ配布開始、Instagramは2010年にAppStoreでリリースされている。Youtubeは2005年にサービス開始、2007年に日本語対応を開始している。

トレンドを追うだけでなく、多様な意見に触れる機会が広がった結果、捉え方に変化が生まれたのではないか。


仮説2 ニーズを把握していた可能性

「個性」「自分らしさ」が求められる時代になり、他者と異なることが美であるように思える。「誰かと違う存在になりたい」そんなニーズを把握していたのではないだろうか。

先述の出版書誌データベースを使用して、「個性」が書名・副題にある書籍を戦後から現在まで調べた。結果は以下の通りである。

1945年1月~1960年12月 1冊

1961年1月~1970年12月 0冊

1971年1月~1980年12月 3冊

1981年1月~1990年12月 48冊

1991年1月~2000年12月 180冊

2001年1月~2010年12月 178冊

2011年1月~現在    166冊

1991年から10年ごとに減少しているが、1990年以前と比べて個性への関心が高いことはうかがえる。


次にグーグルトレンドを使用して、「個性」の人気度の動向を調べた。

2004年以降からしか見れないが、2010年を境にすると、2010~現在の方が人気度は上昇している。ヒロアカ・ポケモンなどで使われる「個性」もあるため、上昇のすべてを社会一般で使われる個性で説明できない可能性には注意する必要がある。

ただ、個性に関する書籍の数が豊富となり、人気度も上昇するなど、唯一無二の存在になりたいニーズを捉えていたからこそ、様々な能力が出てきたのではないか。


しかし、下記の「学習指導要領と臨時教育審議会答申にみる
「個性」 に関する教育理念と「個性」概念について」によると、「個性」という概念は、昭和26年(1951年)には既に出現していた。文部科学省の「道徳教育のための手引書要綱」で「すべての人々がその個性を重んじられる民主的な社会を建設し」という文言が登場していた。

それにもかかわらず、昭和時代の書籍の数は少なく、平成に入ってから関心が高まったことには理由があるのではないか。


仮説3 別なニーズを捉えていた可能性

人は困っているとき、苦しんでいるときに、突飛で革新的な考え方にすがりつきやすいと思う(私自身がそうだった)。

最新の研究では、自己中心的・自己愛的・不安的・抑うつ的・衝動的な人は、陰謀論にしがみつく傾向がそうでない人に比べてわずかに大きいことが示されているようだ。

少々悪い考えかもしれないが、不安になっている・困っている人に響くように、わざと突飛な能力を思い付いている可能性があるかもしれない。

「不安指数」でもあればよいが見当たらないので、不安な人を表す統計を活用する。

自殺者数:H9~H10に大幅に上昇するが、最終的には減少。

精神疾患:気分(感情)障害(躁うつ病を含む)の患者数は、H11からH26にかけて、H20~H23の減少を除いて、上昇している。その他の神経症性障害や精神作用物質使用による精神及び行動の障害の患者数は、H11と比べてH26は上昇しており、H26は、H11~H26の間で一番高い。不安を抱える人が増えてきていると言い換えられるのではないか。

完全失業率:1990年から2004年くらいまで上昇、その後減少するが2010年に再び上昇。それ以降は20年を除いて減少傾向だった。

上記より、2000年もしくは2010年以降の能力の上昇に関係するものとして、精神疾患の患者数が挙げられた。

そうした不安な状態にある人たちに届くように能力を生み出したとは考え難いが、関連性は見られるのではないか。


仮説4 保守より革新の流れが強まった

既にあったものを守り続けるだけでなく、新しいものを生み出す時代に変化したことも、1つの原因かもしれない。

例えば、創造的破壊(disruption)という言葉は、今の時代の代表的な言葉の1つだ。グーグルトレンドをみると、disruptionの人気度は2004年と比べると近年は明らかに、上昇している。

アクセンチュアのサイト・レポートでは、「この10年間で、収支報告や投資家向け発表、企業発表などで経営幹部が創造的破壊について言及する機会は増大しており、あらゆる業界で経営陣の不安は高まっています。」と述べられている。

従来のビジネスが成り立たなくなる中で、これまでにない能力が求められている。だからこそ、新たな力が出現している。そんな風に考えられないだろうか。


現在考えられる仮説はこの程度である。

列挙したように、非常に多くの能力が存在している。このほかに、主体性・積極性・内省、なども含めたら、膨大な資質能力のリストが出来上がるだろう。


6/16 追記

今度は、能力以外の資質を含めて、改めて調べることにする。


まずは、文科省の資料から。

・生きる力=確かな学力、豊かな人間性、健康・体力 平成8年

・課題探究能力(平成10年

キーコンピテンシー(平成11年~14年)

・言語や知識、技術を相互作用的に活用する能力=①言語、シンボル、テクストを活用する能力②知識や情報を活用する能力③テクノロジーを活用する能力

・多様な集団における人間関係形成力=①他人と円滑に人間関係を構築する能力②協調する能力③利害の対立を御し、解決する能力

・自律的に行動する能力=①大局的に行動する能力②人生設計や個人の計画を作り実行する能力③権利、利害、責任、限界、ニーズを表明する能力

・人間力=「知的・能力的要素=基礎学力、「専門的な知識・ノウハウ」を持ち、自らそれを継続的に高めていく力、それらの上に応用力として構築される論理的思考力・創造力」「社会・対人関係力的要素=コミュニケーションスキル、リーダーシップ、規範意識、他者を尊重し切磋琢磨しながら互いを高め合う力」「自己制御的要素=意欲、忍耐力、自分らしい生き方や成功を追求する力など」 平成15年

・社会人基礎力=⇒ ①前に踏み出す力(アクション)【主体性、働きかけ力、実行力】 ②考え抜く力(シンキング)【課題発見力、計画力、想像力】③チームで働く力(チームワーク)【発進力、傾聴力、柔軟性、状況把握力、規律性、ストレスコントロール力 平成18年

・イノベーション創出に向けて必要な資質(「困難に立ち向かいそれを現実のものにしようとするチャレンジ精神」「既存の枠、常識にとらわれない、多くの価値観から生まれる高い志」) 平成19年

・学士力(チームワーク、自己管理力、倫理観、社会的責任、生涯学習力、数量的スキル、情報リテラシー、論理的思考力、問題解決力、獲得した知識・技能・態度等を総合的に利用し、自らが立てた新たな課題にそれらを適用し、その課題を解決する能力) 平成20年

・社会的・職業的自立、社会・職業への円滑な移行のための「基礎的・汎用的能力」=①人間関係形成、社会形成能力②自己理解・自己管理能力③課題対応能力④キャリアプランニング能力 平成23年

・グローバル人材に必要な資質(「語学力・コミュニケーション能力」「主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感」「異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー」及び「幅広い教養と深い専門性、課題発見・解決能力、チームワークと(異質な者の集団をまとめる)リーダーシップ、公共性・倫理観、メディア・リテラシー」など) 平成23年


以下は、詳しい年が書かれていなかった資質能力。

・自立心

・協同性

・道徳性

・反省性、自律的活動能力、異質な集団での交流力(DeSeCo キーコンピテンシー)

・起業精神、ロボット工学、気遣い、関心、勇気、逆境を跳ね返す力、倫理観(OECDプレゼンテーション資料)

・自ら課題を見つけ考える力

・柔軟な思考力

・身に付けた知識や技能を活用して複雑な課題を解決する力

・他者との関係を築く力

・人間性

・創造性

・個性

・勤勉性

・協調性

・思いやりの心

・協同問題解決能力(PISA2015)


以下④、⑤、⑥は、詳しい年代が書かれていた能力に関する気付きである。

気付き④ コミュ力、課題に関する能力はほぼ含まれる

「イノベーション創出に向けて必要な資質」を除き、他者との関係に関わる力は必ず含まれている。協調・人間関係・チームワーク・リーダーシップ・コミュニケーションがその例だ。これは、課題解決や思考力に関するスキルも、同様の結果だった。

他に共通するものとして、自分の生き方や働き方を考える能力が挙げられる。キャリアプランニング能力(H23)・自分らしい生き方や成功を追求する力(H15)・人生設計や個人の計画を作り実行する能力(H11~14)がそうだ。


気付き⑤ 中身に目新しさがない

「グローバル人材に必要な資質」というと新たな力のように思ってしまうが、実際は、経団連が行う「新卒採用に関するアンケート」の資質能力の項目とかぶるものが多い。語学力、コミュニケーション能力、主体性、チャレンジ精神、協調性、柔軟性、責任感、専門性、課題解決能力、リーダーシップがその例だ。

グローバル人材と言いながらも、中身は社会人に必要ない、一般的な能力なのだ。


気付き⑥ 非認知能力ばかり

知識を能力とは言わないだろうから、非認知能力ばかりになるのは仕方ないかもしれない。ただ、非認知能力を発達させるには、基礎的な知識・技能が必要なはずだ。学習指導要領でも、知識・技能と明記されている。

認知能力を明記したのは、人間力の基礎学力と、グローバル人材に必要な資質の幅広い教養と深い専門性・語学力のみだ。

キーコンピテンシーとか、学士力とか、そうしたカテゴリーでまとめられる能力は生きていくために必要な力のはずなのに学力は含まれない。

経団連のこれまでの新卒採用に関するアンケートを見ると分かるが、専門性等の優先順位は低いままだ。

学力軽視と言われても仕方ないだろう。


ストレングスファインダー

自己分析ツールとして有名なストレングスファインダーは、4つのカテゴリーと34の資質に分けられている。

思考力(分析思考、原点思考、未来志向、着想、収集心、内省、学習欲、戦略性)

人間関係力(適応性、運命思考、成長促進、共感性、調和性、包含、個別化、ポジティブ、親密性)

影響力(活発性、指令性、コミュニケーション、競争性、最上志向、自己確信、自我、社交性)

実行力(達成欲、アレンジ、信念、公平性、慎重さ、規律性、目標志向、責任感、回復指向)

となっている。


どれもよく見る能力だが、

①人間関係力と影響力を分けている

②能力を構成する要素を定義している

③4つに限定している

ことに注目される。


本記事の趣旨から若干ずれるが、①②を分析したい。


分析①

ここでは、能力を構成する資質から、人間関係力と影響力の定義を明らかにしたい。

人間関係力の資質は、他者とのコミュニケーションよりも、他者との協調に重点を置いているようだった。積極的にやり取りする力ではなく、包含・調和・共感に見られるように、軋轢が起きないようにする力と定義されていると思う。

一方で、人間関係があって成立しそうな影響力の資質のうち、競争性・自己確信・自我には、他者に関する記述がほぼない。また、活発性は実行力に近いものだ。

たしかに、自我には大きな影響を与えることを望んでいるという記述はあるし、指令性はリーダーシップそのものだ。ただ、共通項のない資質が含まれている時点で、影響力を定義するのは難しい。

競争性、自我、自己確信は自己に関する記述だが、この資質の性格が他者に影響を与えるということであれば、影響力に含めるのも理解できる。競争心を露わにしている人がいたら、周りも「負けたくない」と思いそうだからだ。

先ほどの人間関係力と異なり、積極的に他者とコミュニケーションを取ることができる、それが影響力の定義だと考えた。



メモ

DeSeCo:「国際化と高度情報化の進行とともに多様性が増した複雑な社会に適合することが要求される能力概念「コンピテンシー」を、国際的、学際的かつ政策指向的に研究するため、経済協力開発機構(OECD)が組織したプロジェクト」 2003年にプログラムを終了したが、キーコンピテンシーを定義。



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