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懐かしさと新しさ〜633「Bier Fest Tour」@ Zepp Nagoya(ゲスト:ストレイテナー/cinema staff)

633というデビューしたばかりのバンドがいきなりZeppツアーを行うという。しかも対バンは全公演にストレイテナー、そして名古屋にはcinema staffという豪華なゲスト陣。”ウインナーの化身“という可愛らしいそのビジュアルもあいまって、デビュー初期からマンウィズがなぜか界隈のバンドたちから熱い支持を受けていたことを思い出すような思い出さないような。633の正体を確かめるべく初ツアーに向かうことにした。(この記事のノリは伝わりづらそうですが、ストレイテナーの楽曲をいくつか聴いていただきそのうえで以下のティザーを聴いていただけば何となく察することができると思います〜)


1組目はストレイテナー。一発目から豪快な「The World Record」だし、続け様に荒々しい「POSTMODERN」だし、とここ数年の新曲モードとは対照的な攻撃性を全面に打ち出してきて驚いた。「DAY TO DAY」は歌メロこそ穏やかだがこの日に限ってはあのバッチバチなブリッジに着目して観てしまう。この頭3曲だけで、いわゆるフェスやイベントとも一般的なお呼ばれ対バンとも異なる、633との対バンだからこそな選曲とも言える。キッズな楽曲を得意とする633に寄り添ったような、初期の人気曲「PLAY THE STAR GUITAR」などもストレートに届く。2000年代のテナーをも全力で開示できる場だ。

冬に聴く「シーグラス」の風情もさることながら、テナーがこれまで生み出してきた冬めいた楽曲が多く並んだ後半も素晴らしかった。ホリエアツシ(Vo/Gt)がキーボードを奏でる「Lightning」の静謐さ、抜群にメロディアスな「TENDER」は芯から心を温めてくれた。こういった風格や包容力はやはり20年以上バンドで培ってきた経験値の賜物という威厳があり、説得力がある。最新曲「宇宙の夜 二人の朝」の激しくも切実な怒涛など、若さだけでは到達し得ない境地に今彼らがいることを示している。ラストの「冬の太陽」までタイトさと余裕が織りなす完璧なステージで“ゲストバンド”としての役割を果たしきっていた。

<setlist> 
1.The World Record
2.POSTMODERN
3.DAY TO DAY
4.PLAY THE STAR GUITAR
5.シーグラス
6.Lightning
7.TENDER
8.宇宙の夜 二人の朝
9.冬の太陽


2組目はcinema staff。実はこの日が全くの初見。というのも、ほとんど聴いてこなかったバンドの1つで。高2くらいの時に急に“ギターロックバンドはもうええ”という謎のトガリが芽生えて星野源とかオザケンばっか聴いてた時期があり、その頃頭角を現してきたのがシネマやノベンバやピープルで。つまりその辺のシーンが完全に空白。ゆえに少し身構えて見始めたのだけど一音目からその出音の迫力に慄き、かなり夢中になって観ることになった。混沌と狂騒の中に、飯田瑞規(Vo/Gt)の美しい歌声がふっと光るという、楽曲のデザイン性の高さに聴き惚れた。彼らもまた長年培ってきた地肩の強さが尋常じゃないのだ。

真ん中で暴れまわる辻友貴(Gt)の形相にも目が行きがちだが、三島想平(Ba)もあんなに激しいプレイなのに歌声めちゃうまくて掘り下げ甲斐のありそうなバンドだとよく分かる。中盤はösterreichの佐藤航を迎えて2曲をピアノ演奏と共に披露。ポップスとしても成立しそうなメロディをあくまでオルタナティブに届けるこの歪さもまた格好いい。終盤は「great escape」から「西南西の虹」で激情の彼方までぶっ飛ばした後の「3.28」が凄まじかった。うねり続ける展開の果て、大絶唱とも呼ぶべきフロント3人よる歌声が猛追してくるあの時間。イースタンユースかと思った。それぐらい、凶暴なピュアネスが胸に刺さった。

<setlist>
1. 白い砂漠のマーチ
2.海底
3.シャドウ
4.Name of Love(w/ 佐藤航)
5.storyflow(w/ 佐藤航)
6.great escape
9.西南西の虹
8.3.28


そしてホストバンドの633。ステージには紗幕がかかり、メンバーの姿は薄らとしか見えない。しかしメンバー全員、ちゃんとグラフィックの通りの格好をしている様子!ご機嫌な登場SEに乗せてステージインし、1曲目「Drink Up」が始まるとスクリーンには可愛らしいアニメーションが映り、笑みがこぼれまくり。ロックバンドのライブではあまり味わえないポップな可愛げと、新人とは思えない迫力ある演奏のギャップも面白い。その後も時にクールにシルエットのみで演奏したり、時にグラフィックがくるくる踊ったり、視覚的にも超楽しい。メンバーもSOFTCREAM(Vo/Gt)以外はボイスチェンジで喋ったりもする。

即座に反応できてしまう快楽中枢にブッ刺さるシンプルなポップパンクナンバーの数々。こねくり回さず、直線的なアレンジで押し切る気持ち良さ。そういうノンストレスな魅力が633には満ちている。基本的にはバンドサウンドのみの楽曲ばかりだが、「million」は少し異色。このスケールの大きく、明け透けなほどにオープンなアンセムっぷりはもしかすると633だからこそ出来たノリなのかもしれない。最後にはストレイテナーの大昔のメロディックパンクナンバー「BOUNDER ADVENTURE」を原曲そのままにカバーしてブチあげてくれた。新人とは思えない円熟味とセンス。夏フェスとか、沸かしまくって欲しい。

<setlist>
1.Drink Up
2.Sweet Rain
3.Girls Don’t Cry
4.Aurora
5.One Summer Day
6.Rooftop Party
7.The Great Escape
8.Million
9.Radio Song
10.BOUNDER ADVENTURE (ストレイテナー カバー)



ここからはノリからちょい降りて話しますが、、笑。アジカンのゴッチとかベボベのこいちゃんも“シンプルに楽器を鳴らす喜び“について最近よく語っていたり、ゼロ年代バンドが今こぞってキッズなテンションに面白さを見出してるんですよね。そんな中、633というとびきり可愛らしくて楽しいアウトプットに辿り着いたの、最高でしかないと思います。ある種の孤高性や鋭さをもって頭角をあらわしたバンドが、どんどんポップな音楽性になった先にかつてのサウンドをリブートさせながら、新しい演出方法(AdoとかVTuberとも通じますよね)で音楽を楽しもうとするって。その斬新な心意気、圧倒的に支持です。とりあえずカートゥーンアニメ化を待ち侘びています。


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