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令和ロマン、爆発の夜に向け

数年に渡って贔屓にしてきた芸人がブレイクを果たそうとしている。令和ロマンが12/24開催のM-1グランプリ2023の決勝に進出し、ネタを披露するのだ。昨年の敗者復活戦で大きくその名を轟かせ、その勢いを維持したまま初のファイナリストとなった今年。昨年からの待望感もあり、明らかに勢いがノリきった状態である。初決勝ながら、優勝も大いにあり得ると思う。

19時台の大型テレビ番組で彼らのネタが爆発してしまう予感を思い、居ても立っても居られなくなったのでここで彼らのレコメンド記事を書いてみた。主に3点、令和ロマンの魅力についてあれこれ語らせていただきたい。


①同世代すぎる


ここから色々と好きなポイントを書いていくが、正直これに尽きる。私は彼らとあまりにも同世代すぎるのだ。19931994年生まれ、今30歳周辺の人間にとってネタ中に引用される固有名詞や、ラジオで突然引き合いに出される事象はあまりにもツボ。言うなれば同級生の思い出や価値観を共有したムードが超高度な技術で笑いになって届けられているのが令和ロマンの漫才だ。

しかし決して内輪ネタではない。漫才の題材はイメージしやすく(ドラえもん、恋愛リアリティショー、もしくは“男らしさを学ぶ”など)、そのモチーフに対して様々な角度から鋭いボケが飛んでくる。インターネットミーム的なもの、集合的無意識なもの、シュール寄りの大喜利解答的なもの。キレのある会話の連鎖が2人のパフォーミングによって万人に開かれたものになる。

これは”おもしろフラッシュ“的な感性のショーアップと言えるかもしれない。見知った題材に情緒を介さず笑いを詰め込む、そのスタンスが漫才へと転用されているのだ。松井ケムリの微笑と共に繰り出されるツッコミもあの乾いたインターネット空間を想起させる。この極めて同世代的なフィーリングに普遍性を伴わせ、世代を問わぬ笑いに加工した点こそが彼らの強さだ。



②孤高なるクレバーさ

令和ロマンは現役のM-1ファイターであるが、同時に徹底してM-1を研究している評論者でもある。特にくるまは自身がプレイヤーでありながら恐ろしい程に俯瞰した視点も持ち合わせており、M-1期間中は常に分析をし続け、準決勝後も即座にレポート動画を出していた。動画を見て頂くと分かるが、猛烈な早口で解説を捲くし立てており、ネタ中で見せるおとぼけ感は皆無。


この解析力はお笑いシーンそのものを読み解いていくような連載にも繋がるなど、徐々に浸透しつつある。演じ手であり、語り手でもある。この"渦中にいながらして離れることもできる"活動によって彼らの笑いは常に磨き上がっている。今回、M-1の決勝の舞台に向けても他の8組を想定し、そして敗者復活組も予想した上でチューニングが果たされているのかもしれない。

彼らのクレバーさは様々な場所でも発揮されている。ケムリはインターネットに文句を言うというスタイルのSNS運営で徹底的にそのパーソナルを排除している。くるまはダイヤモンド野澤率いる「お笑い大喜利」という悪ノリ中心のイベントに身を置きながら「何が面白いか分からない」と戸惑い続けてもいる。どこにも所在しない、所有されない、孤高な頭脳派コンビだ。



③エモくならない

ファイナリストの記者発表の場では初めての決勝とは思えない程に飄々と立ち振る舞う姿が印象的だった2人。もちろん彼らにしか分かり得ない苦悩はあると思うが、学生芸人として名を馳せNSC主席卒業、結成2年目にしてNHK新人お笑い大賞で大賞を獲得し、安定した舞台出番を確保しているコンビであり、傍から見ればその"苦労の少なさ"ゆえの振る舞いだったと思う。

今回のM-1において、リベンジ組や苦節十数年というキャリアを持つ組が多い中、彼らの物語性の少なさはむしろ際立っている。昨年、ウエストランドが競技的熱血さやエモーショナルなストーリーをぶち壊したことで物語重視のM-1グランプリの形は傾きつつある。エモくなれない、いやエモくなるのを拒む令和ロマンはこの荒野を闊歩するに相応しいコンビのように見える。

ボケの高比良くるまは幼少期から好きな漫画として「ボボボーボ・ボーボボ」を挙げており、納得感がある。同世代として私も理解不能なギャグをバトル漫画の中に落とし込んだあの世界観を好んでいたが、令和ロマンの漫才にもそれは通じている。王道の中にある置き去り感。サクサク笑えるのに妙に印象に残り続ける、エモ不要のただの"面白さ"。理想のお笑いなのだ。


さてあれこれ語ってきたがそろそろ分析を手放し、ただ笑うモードへとこちらもチューニングしていこうと思う。12/24、決戦はクリスマス・イブ。彼らを贔屓にし始めてからの3年間、その全てが爆発する夜になることを!!



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