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大雪の東京;帰宅指示を出さないリスク解ってますか?

こんちは!副業社労士まさゆきです

先週大雪の東京、SNSで「帰宅指示(命令)が出ない」がトレンドでした。
我が社は積雪当日16時に帰宅指示、翌日は基本テレワーク早退・テレワークで経営リスクを回避との判断です。積雪時に会社が考慮すべきは下記。

《通勤災害によるリスク回避》
帰宅中の怪我は通勤災害(労災)です。従業員の怪我は生産性を下げます。手続の手間も負担です。
第三者が労災事故に絡む(第三者行為災害)と更に面倒です。車に轢かれ従業員が被害者となった場合、加害者からの損害賠償と労災、どちらの給付を受けるか調整が必要です。
労災が先に給付された場合は、国が加害者に対し損害賠償を請求します。加害者から損害賠償を受けた場合は、その金額分労災給付されない。各々手続が異なります。
労務担当者は労基署と加害者(加害者が加入する保険会社)の間で利害調整します。更に、交通事故では加害者と被害者の過失割合認定で揉めます。

《マイカー通勤従業員が加害者なら会社も損害賠償支払の可能性あり》
マイカー通勤者が加害者ならもっと大変です。地方ではマイカー通勤も多い。従業員が加害者の場合、会社も使用者責任を負い損害賠償支払の可能性があります。判例では「業務に密接に関連しない」「会社に黙ってマイカー通勤」等でなければ、使用者責任が認められる例が多いようです。
自転車通勤でも同様に会社が損害賠償責任を負う可能性があります。損害賠償支払リスク低減のため帰宅指示を出すべきです。

《自然災害でも会社の安全配慮義務違反が問われる可能性はある》
「積雪は自然災害、使用者責任は問われない?」そうとも言えません。

(七十七銀行女川支店津波被災事件;仙台地裁平26年2月25日判決)
東日本大震災発生後、支店長は自治体指定避難場所(高台)へ避難指示せず3階建ての屋上に避難、行員らが津波で1名を除き死亡・行方不明となった事案です。裁判所は予見可能性がなかったとして使用者の損害賠償責任を否定しましたが、自然災害発生時でも使用者の安全配慮義務が存在することは明確に認めました。

積雪時の気象庁の呼びかけ(「不要不急の外出は控えて」)は震災時の避難命令と異なり使用者の安全配慮義務は問われないと思いますが、今後は判りません。留意しましょう。

《エンゲージメントを下げ生産性低下のリスク》
SNSで帰宅指示を出さない会社への怒り・諦めコメントが目立ちました。会社への貢献意識(エンゲージメント)低下は生産性低減リスク、と立証された今、帰宅指示を躊躇う理由が解りません

(エンゲージメントと企業業績に関する研究)
「モチベーションエンジニアリング研究所」と慶應義塾大学院経営管理研究科/ビジネス・スクール 岩本研究室が共同で行った研究結果です。
エンゲージメントポイント(ES)が高いと営業利益は高まるか、分析した結果が下のグラフです。両者には相関が見られ、「ES1ポイント上昇すると営業利益率が0.35%上昇する」ことが解りました。


「エンゲージメントと企業業績」に関する研究結果を公開 | 研究結果詳細ページ | Link and Motivation Inc. 株式会社リンクアンドモチベーション (lmi.ne.jp)

《会社は何故帰宅指示を躊躇う?》
帰宅指示発令は事業所責任者(支店長等)権限ですが、本社等の横槍(「顧客は大丈夫?」「本当にやむを得ないの?」)、本社の意向を勝手に忖度…躊躇う内に帰宅は定時、よくある話です。

日本には「会社に居れば仕事をしたことになる空気」が根強く残っています。テレワークで仕事が出来る環境が出来た今、無理な出社に意味はない。
「『出社すれば仕事したという空気』を変える勇気がなく『帰宅指示の合理的決断』が出来ない」だけではないでしょうか…

ではまた次回

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