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8/27_執筆制限時間10分小説_時間オーバー【214 杉藤 俊雄(すぎとう としお)は××したい】続く

「大川くんは、過去に大きな裏切りを受けたのかな? かなり周囲に対して不信感を持っているね。そんな中で山で遭難して、予想外の事態で彼の中でいろいろと限界が来てしまった。そこにたまたまオレが助けたことで、彼は異様に懐いてしまった。ある意味危険だと思ったよ。ただでさえ、他者への依存度が高いこともあって、リハビリの時や二人っきりの時、彼がどんな言動をしているのか、君は知らないし信じないだろうね。もう、リハビリの必要がないのに、強請られた時はさすがに参った。君が付き添った時点で、彼の足はすでに治っていたんだ。わざと、入所者との約束を優先したのは、オレがダメな大人で君が望むことをしないことを、表明したことにすぎない。ようは自立を促したのさ」

「……話は分かりました。それで、園生くんは?」

「彼のことは、いろいろと危険を感じたんだ。少しずつ話してくれたのだが、あの遭難に園生君が一枚噛んでいることを、本人が認めた。わざと君たちを山に遭難させて、君を事故に見せかけて殺そうとしたらしい」

「――嘘だっ!」

 葉山の言葉が信じられなかった。僕は即座に否定したけど、思い当たる園生くんの不自然な行動。異様に怖がり、僕たちをその場から移動させたいみたいだった。

「信じる信じないは勝手だよ。だけど、君たちは来年には社会復帰をして、元の生活に戻らなければならない。そこで君は園生君に対して、なにかしらのリアクションを取らないといけないことは確かだ。……オレは彼を邪険に扱うことにした。園生君は相手を支配しないと気が済まない性質を持っている。君との相性は最悪だと言ってもいい」

「デタラメだ。僕は信じない、僕は……」

 どうして、僕はいつも最悪の選択肢を選んでしまうのだろう。
 彼らが零れ落ちる砂のように、僕の前からいなくなったのは、至極当然のことだったのに。

 こうして、なにも解決を見いだせないまま、僕たちは中学生になった。

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