NY Bar合格後の手続

はじめに

 晴れてNY Bar(いわゆるUBE)に合格しても、登録にはまだまだやるべきことがあります。この点についても、先に合格された方々が書かれており重複する点も多く、私もそれらの記事を大変参考にさせていただきました。もっとも、運用が変更となったのか?私や私の周囲が経験したことと異なる点もありましたので、備忘と皆様の参考になればと思い、執筆しております。


MPREとNYLE

1.MPREの基準点取得

 MPRE(Multi-state Professional Responsibility Examination)、いわゆる弁護士倫理試験で基準点を取得しておく必要があります。コロナ前までは、マークシート形式だったようですが、現在ではtoeflのようにパソコンで回答する形式になっています。
 NY Bar受験資格を満たすためには、Professional Responsibilityの科目履修が必要なため、多くの受験生は履修終了後直近の試験日程で受験するかと思います。機会がありましたら、別途書いてみたいと思います。

2.NYLC & NYLE

 NYLC(New York Law Course)というビデオ講義を視聴した上で、NYLE(New York Law Exam)と呼ばれる択一試験に合格する必要があります。
 NY州法の内容を取り扱う試験であり、UBEの知識があること前提?の試験にも感じられましたので、UBE受験後に取り組むのがスムーズかな?という気がします。もっとも、試験自体はオープンブック形式でMBEほど時間もタイトではないため、ざっとcourse materialを読んでおけば、足りるかなと思います。

 試験日程はThe New York State Board of Law ExaminersのHPで公開されています。注意したい点は、試験日の1ヶ月前までにビデオ講義を完了しておかなければならないことです。
 7月にBarを受験される場合、直近のNYLEは9月実施ですが、申し込むためには、8月にNYLCの受講を完了する必要があります。試験終了後は、ご褒美旅行、研修先への引越し準備、日本への帰国準備等、何かと忙しい時期ですので、計画的にNYLCを受講しておかれることをお勧めします。

必要書類の準備

 MPRE、NYLC/NYLEが完了した後は、いよいよ必要書類の提出となります。NY州弁護士として登録するためには、以下の書類が必要となります。

1) Notice of Certification
2) Application for Admission Questionnaire
3) Two Affidavits of Good Moral Character
4) Employment Affidavits of Letters
5) Certificates of Good Standing and Grievance Letters
6) Skills Competency and Professional Values Affidavit
7) ProBono Affidavit
8) Law School Certificate

1) Notice of Certification(合格通知書)

 通知書の受領時点でMPRE、NYLEのいずれかをクリアしていない場合、"Passed Not Certified Notice"というタイトルとなります(もちろん、こちらは申請に使うことはできません)。

2) Admission Questionnaire(申請書)

 自身の経歴等に関する質問にひたすら回答していくものです。私の周りで記載方法に悩むポイントとなっていたのは以下の点です。

・(Q10 List all law school…の箇所関連)法学部卒の場合、大学の経歴をQ10に記載すべきか、それともQ9(List all colleges, universities…)に記載すべきか。

 友人は、Q10に法学部の経歴も記載して提出しましたが、特に問題ないようでした。NY Barの資格審査を受けるにあたり、法学部卒でも十分であることを理由としているため、Law schoolの経歴として記載するのが合理的に思われます。

・(Q14 Employmentの箇所関連)企業に所属したまま、アメリカ国内で研修をしており、その後日本で元の企業に復帰している場合の職歴の記載をどうすべきか。

 駐在派遣扱いならdispatched、休職扱いなら、temporary leave of absenceなどと理由を記載することで特に問題はないようでした。

 この書類は、公証(Nortarization)が必要となります。アメリカにいる間であれば、UPSなどで簡単に手続きすることができますが、問題は日本帰国後に公証しようとする場合です。
 日本国内では、大きく2つの方法(①公証役場、②アメリカ大使館)による公証が可能です(オンラインによる公証もあるみたいですが、利用情報がないため割愛させていただきます)。
 日本から手続きをされる場合、アメリカ大使館を利用するのが一番安上がりかつ確実かなと思います。
 アメリカ大使館を利用することのデメリットは予約が取りにくい点です。毎月1日(1日が営業日ではない場合、それ以降?)に翌月の予約スロットが開放されますが、すぐに埋まってしまうようです。そうすると、月の半ばくらいに予約しようとすると、場合によっては2ヶ月近くかかる可能性があります。
 ※ちょこちょこキャンセルが発生するようです。予約状況は、大使館の営業日であれば、毎朝更新されるようですので、こまめにチェックするとスケジュールを早めることができます。

3) Two Affidavits of Good Moral Character(推薦状)

 推薦状は、以下の条件に該当しない2名から取得する必要があります(要件の詳細はこちら)。
・Employment affirmation(雇用証明の記入者)
・Associated with applicant’s present employer(現在の勤務先の関係者)
・Related to applicant by blood or marriage(血縁者、配偶者)
・Members of the faculty or administrative staff of any law school attended by applicant(ロースクールの教授・職員)

 加えて、当該人物はreputable personsであり、かつ、2年以上知り合いであることも条件となります。また、1名は、Preferably, …should be completed by an attorney…とされています。
 マストでは無いのかな??とも思いますが、研修先のアメリカ人上司に聞いたところ、「この記載で弁護士の推薦状を出さないのはちょっとないかも・・・」とのことでした(日米の弁護士の数の差を見せてあげたいところです)。
 LL.M.留学生の中には、有資格者でBar受験をしない国・地域の人も結構いますので、登録が遅くなる可能性はありますが、そうした友人に依頼するのも手です。

4) Employment Affidavits of Letters(雇用元からの推薦書類)

 21歳以降or過去10年間に勤務経験のあるLaw-Relatedの雇用先全てから入手する必要がある書類です。経歴によっては、中々に骨の折れる作業となります。
 私は、日本の勤務先とアメリカの研修先の2箇所だけでしたので、比較的楽をすることができました。
 Law-Relatedではない職場からは取得する必要ありませんので、官公庁派遣の方(裁判官、検察官除く)等は、この書類を提出しなくても良いようです。また、私自身も一部職歴についてはlaw-relatedではないとして提出しませんでした。

5) Certificates of Good Standing and Grievance Letters(懲戒されていないことを証明する書類)

 日本の弁護士資格を保有している場合、こちらも提出する必要があります。発行から60日以内という期間制限が設けられているため、該当される方は、全体のスケジュールにご注意ください。

6) Skills Competency and Professional Values Affidavit(実務経験に関する書類)

 日本人の方がこちらの要件をクリアする場合、Pathway1(ロースクールの単位)、Pathway4(Law Officeでの6ヶ月以上の研修)、Pathway5(日本の法曹資格)のいずれかになるかと思います。それぞれの具体的な手続きは以下となります。

・Pathway1
 ロースクールによる必要単位数取得の証明となりますので、必要事項を記入後、ロースクールのrecord officeに連絡して、書類を送付してもらうことになります。後述するLaw School Certificateと同じタイミングで依頼するのがスムーズかと思います。

・Pathway4
 6ヶ月以上のLaw Officeでの研修をしたことを、研修先に証明してもらうものです。必要事項を記入後、研修先の監督者に署名してもらい、自身で送付することになります。
別記事でも書きましたが、このpathway4をどのように満たすことができるか、具体的には、何が"Law Office"なのか?(法律事務所のみ??)という点は、ちょっとした議論を巻き起こしていました。
 私の友人は、アメリカの民間企業の法務部研修にてPathway4の要件をクリアしました。研修先企業のアメリカ人弁護士複数に相談したところ、「あえて"law office"(law firmでは無い)という表現を用いていることから、少なくともアメリカ国内の法務部であれば、含まれると考えるのが合理的と思う」と言われたことから、pathway4で申請したようです。
 もっとも、後からadmissionにケチを付けられないようにするため、研修期間中は幅広い業務をアサインしてもらうようにしていたとのことです。

・Pathway 5
 必要事項を記載し、公証を受けるスタイルです。

7) ProBono Affidavit(プロボノに関する証明書)

 50時間以上のPro Bono活動を完了した上で、①必要事項記載、②公証、③書類を監督者に送付してサインしてもらう、の順番で書類を完成させることになります。公証が必要となる書類は、この書類とAdmission Questionnaire、(pathway 5で申請される方はそちらも)となります。

① いつやるか?
 50時間というそれなりの時間を要するため、計画的な対応が必要です。一般的にロースクール卒業後のプロボノは、法律事務所での研修が可能な方を除くと、プロボノの機会確保が難しいとして、避ける人が多い気がします。
 私個人は、ロースクール在学期間中にプロボノ活動をするのは、留学という貴重な時間を消費してしまうので避け、卒業後にのんびりと行いました。

②プロボノの探し方
 プロボノに対するサポート体制は、ロースクールによってかなり異なるようです。また、プロボノの機会もかなり流動的です。例えば、ここ数年日本人留学生の間で活用されていたオンラインオペレーター形式のプロボノは、募集を停止するところが出ています。留学前に聞いていたプロボノが渡米したら既に消滅していた、という事態は十分にあり得ますので、情報を得るため、ネットワークを広げていくことが重要です。

・留学生コミュニティを活用
 プロボノを探す1つのコツは、各国の留学生コミュニティと仲良くなっておくことです。例えば、中国人留学生のコミュニティは、非常に多くの情報を持っているようでした。NY Barを受けるインセンティブを持っている国・地域出身の同級生に聞いてみると、情報が得られるかと思います。

・ロースクールの教授・職員を活用
 ロースクールには、プロボノ活動を取り仕切っている教授・職員がいるかと思いますので、オフィスアワーなどを利用して相談できる関係性を築いておかれると、状況に応じてアプライできるプロボノ活動を紹介していただけるかと思います。
 特に、LL.M.だけではなく、JDのセクションを取り仕切る教授・職員とつながると、チャンスが広がると思います。現に私の周囲でも、JD向けのプロボノを取り仕切る教授経由でプロボノ活動を見つけられた人がいました。

・クラス代表を活用
 教授を見つけられないという人は、クラス代表経由でアプローチするのも良いかと思います。LL.M.のクラス代表、そこからJDのクラス代表ともつながることができると思います。そうすると、かなりの情報を入手することができます。
 私自身もLL.M.クラス代表の同級生から、プロボノ活動に関する情報を得る機会がありました。

8) Law School Certificate(ロースクールの卒業証明書)

 日本とアメリカ、それぞれから取得する必要があります。日本の法曹資格を持っている方は、司法研修所からもですね。

 ここまでの書類を準備した後は、いよいよ提出となります。私自身及び周囲には、3rd Departmentが提出先の方しかいなかったため、そちらを前提としますと、提出は、全ての書類を1つのPDFファイルにまとめて、メール送付でした。書類が受領された場合、その旨のメールが来ます。また、全ての書類が揃った段階で、その旨の連絡が別途ありました。

登録費用の支払い

 上記書類提出完了後は、登録費用の支払いとなります。案内メールが送られてきますので、リンク先からBOLE IDを用いて、アカウント作成の上で、費用を支払います。

宣誓式

 3rd Departmentは、しばらくの間、オンラインとインパーソンの併用で運用するようです。書類提出後、3、4ヶ月先の日程を仮でアサインされますが、インパーソンが良い場合は、それまで待つことも可能です。スケジュールは、3rd departmentのHPから確認することができます。
 3rd Departmentのオンライン宣誓式は、You tubeを時間になったらアクセスして視聴する形式という受動的なものでした。最後に参加したことを証明するためのコードが表示(同時に読み上げ)されますので、忘れずにメモします。私の場合、15分程度で終了しました。
 なお、オンライン宣誓式は、正午(12:00PM)(東海岸時間)から開始されました。日本時間だと深夜からの参加となりますので、寝落ちしてコードを見逃さないよう注意が必要です。

書類の送付

 宣誓式でメモしたコードを含む必要情報を、"Attorney Admission Verification Statement"(セレモニーに参加したことの証明)に記載、サインの上で、3rd Departmentに送付します。

 お疲れ様です!!Attorney Admission Verification Statementが無事到達すれば、1、2週間後に晴れて登録が完了した旨の連絡が来るかと思います。

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