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花見をするために生きている

6年ぶりにPCゲーム業界花見。
もうかれこれ25年くらい続いている恒例のお花見である。

コロナが明けて本格的に花見ができるようになった。
この日を待っていたぜ俺はずっと!

ゲーム業界老人会

しかし98年にDirectXの仕事をやっていた時はまさかコンシューマが衰退してPCゲームが生き残るとは思わなかった。あの頃の僕は22歳。まさに25年前である。

最近、自分を人に説明するのがどんどん面倒になってきていて、UberEats配達員ですら無くなってしまった僕は、もはやただのシラサー(シラス配信者)として糊口を凌ぐ日々。ちなみに2022年6月の住民税は今も分割払いで払っている。

この国は年収が上がるのは良くても下げるのはとても難しい。ある日突然、月の収入が1/10になってしまったとしても、住民税は前年の年収から算定され、しかも無職になると4ヶ月分を一括払いしなければならないのだ。

その最初の月が6月である。6月に会社を辞めた場合、6月に住民税を4ヶ月分一括払いしなければならない。僕の場合、それは三桁万円だった。

もちろん貯金などない。貯金などする人間は経営者はともかく創業者に向いてないと思う。手元にお金があるのがストレスに感じるくらいじゃないと新しい事業は興せない。

久しぶりに会うPCゲーム業界の人々は、基本的に全員先輩である。そりゃそうだ。22歳だったんだから。

まあでも花見ができるようになって本当に良かった。俺は本当に花見ができる国に住んでいて幸せだ。この国で花見ができなくなったら、外国に移住するかもしれない。

まあ外国に住んでいたとしても花見の季節だけ帰って来ればいいだけの話ではあるが。

花見の後はゲンロン総会に向かった。

なぜか川上さんと話をするという謎のイベントだった。

川上さんと東さんで、ドワンゴ黎明期の話をする。
あれ、なんだこのデジャブ感。10年前にも同じようなイベントやったはずだが。

東さんが完全に忘れていたので同じ話をまたする。
僕のシラス番組の会員の方も来てくださったらしいんだけど、席が足りなくて立ち見になっていた。僕はこのシステムがよくわからなかったんだけど、このトークのチケットだけ別売りしてるのか、第一部という全体のチケットなのか。とにかくチケットを買ったのに席がないという苦情を寄せる方がいた。しかしこの話、面白かったのだろうか。よくわからない。そして壇上で寝てしまったらしい。割と僕の場合よくある。むしろこんなに酒を飲み続けて第二部までできる東さんはやはり超人としか思えない。

ところで今回のゲンロン総会では、東さんと一緒に作った、僕にとって11番目の会社である「クジラ」のデモを行った。

クジラとは、シラスを飲み込むイメージの名称である。
かねてより僕は、AIの性能を決定づけるのはデータだと主張してきた。

例えばイーロン・マスクはTwitter(現X)のつぶやきを丸ごと学習させてGrokというLLMを作った。オープンソースのLLMとしては史上最大規模の314Bという膨大なパラメータサイズを持つが、使ってみると「イマイチ」という感じがするのは、GrokがTwitterのデータを主に読んでいるからだと考えられる。

ChatGPTやGeminiなどの高度な返し方ができるLLMは、市販されている本や有料記事を主に読み込ませている。

ただ、日本では著作物を読み込ませるのは法的に一切問題がないにも関わらずそうしたデータの制作に及び腰になりがちである。日本にはたとえ法律に明文化されていても「誰かが怒りそうならやらない」という「事なかれ主義」が蔓延しているからだ。

そこで弁護士のアドバイスをもとに、地方自治体と共同で図書館ハッカソンというものを企画した。このハッカソンでは図書館の蔵書を自由にスキャンして学習させることができる。学習させたモデルは持ち帰ることができるが、学習に用いたスキャンデータは著作権保護のため持ち帰ることができない。

図書館が知識の宝庫であるのと同じように、教養番組配信サービスとしてのシラスには、数百時間に及ぶ膨大な動画データがある。

この動画データをAIに読み込ませ、史上初の哲学者AIを作ろうというのがまずクジラの第一目標である。

そのための足がかりとして、シラス番組を全てAIで文字起こしして特徴空間検索を行うシステムを来月リリースする。開発はnpaka大先生。ちなみに総会のトークイベントで川上さんも言っていたが、ニコ動の字幕を最初にスーパーインポーズしたのもnpaka大先生である。

3Dモデルの制作は「どこでもいっしょ」の開発元であり、僕の電通大の先輩である南治一徳さんの株式会社ビサイドにお願いした。

ひとまずはRAGと検索機能のみを公開するつもりだが、最終的には独自のマルチモーダルモデルを構築したいと考えており、技術の進化を継続的に追いかけながら適切なタイミングで学習させたいと考えている。

シラスは質の高い情報の宝庫であり、たとえ情報量がTwitter全体の1億分の1しかないとしても、元々の内容の質の高さで他者のAIの性能を凌駕することになるだろう。

FreeAIでLLM開発の研究をしているのはそういう意味もある。

これからの世界は、いかに「独自の良質なデータ」を持っているかが重要になる。それを学習させたAIこそが、それぞれの組織体にとって最大の財産となる。それを僕は知能資本と呼ぶことにしている。

これまで知能資本はもっぱら人間だけが担っていた。
しかし人間にはハードウェア的に致命的な欠陥がある。
それは寿命と再現性だ。

どんな偉大な科学者も寿命を克服したものはいない。もうすぐ克服されるという噂もあるが、寿命を伸ばすことはできても無くすことはできないだろう。

優れた科学者は必ずしも自分と同じレベルで科学者を養成できるとは限らない。北野宏明によれば、人類の科学的発見はほとんど偶然によって発見されてきた。優れた科学者が優れた科学的発見をするのは事実だが、全ての優れた科学者が優れた科学的発見をできるわけではなく、ほとんどの場合は偶然に左右される。

知能資本と人的資本がイコールだった時代は、組織を維持するためには属人性を排除し、どのレイヤーの仕事も「誰でもできる」ようにすることが求められた。大企業の社長は、極端な話「誰でもできる」のである。なぜかというと、大企業では事業部長が事業を掌握し、事業を成長させる責任を担っている。大企業における社長の役割というのは事業部長を誰にするか決めるくらいだが、それとて事業部の推薦を無視できない。船頭のように会社の周辺環境がどのように変化し、現在の事業にどのように影響を与えるか予測し、事業の方向性を決めなくてはならない。これは一定程度の賢さがあれば本当に「誰でもできる」仕事だ。会社中を「誰でもできる仕事」で満たすと、原理的には人を増やすだけで線形に利益が上がるようになる。これが大企業だ。大企業の失策というのは、経営トップが世の中の環境変化を掴み損ない、事業部編成を間違った時だけに起きる。昔のシャープが液晶だけに頼って一瞬だけうまくいってその後に瓦解したように、大企業を維持するには事業ポートフォリオの管理が重要だ。ある技術の利益率がある瞬間だけ高いからと言って、それが未来永劫続くとは限らない。だから企業は多角経営に移行し、多国籍企業へと成長するのだ。大企業のトップにとって個性は排除すべき要因で、そもそも「個性」は常に好ましい形で発揮されるとは限らない。トップが立て続けにセクハラで退職するような会社も世の中にはある。

僕の作った10番目の会社は、まさにそのような大組織のノウハウが最大限発揮された結果、僕のような個性を必要としなくなった。ある意味で組織の完成形であり、僕は最後の会社を辞めることでいろんなストレスから解放され、お金には苦労したがそれまでの何倍も楽しく暮らせるようになった。

ただし、自分で中小企業を立ち上げた経験をもって大企業の成功則を学ぶと、「果たしてこれが企業の完成形なのか」と疑問を持つようになった。

企業にとって望ましいトップとは、「常に正しい方向性を示してくれる知能」であり、これが人間である必要はないばかりか、むしろ人間であると色々とまずいことが起きる可能性が高まる。

ベンチャーの社長には個性的な人が多い印象があると思うが、個人的な経験から言うと、単に個性的な人よりも真面目な人の方が会社を成功させる確率が高い。

個性的な人が個性を生かしたまま仕事をするとクリエイター(創作者)と呼ばれ、真面目な人が真面目に仕事をするとマネージャー(経営者)と呼ばれる。どちらも一人の人間がこなすのは難しい。

では経営をAIにやらせたいと考えたとしても、次の問題がある。
「正しい経営の方法」についての教材が全くないのである。

ChatGPTに聞いてもろくな答えは返ってこない。「正しい経営の方法」なんて誰も教えてくれないのだ。仮に大企業の創業者による手記があったとしよう。そう言う本はたくさんあるし僕も沢山読んだ。しかしそこに書かれている内容は既に古すぎて現代には通用しない。

実際問題として、世の中には、本物の経営者による経営の説明など実際にはほとんど行われていない。

世に蔓延る「起業セミナー」や「経営セミナー」の多くは、士業やコンサルティング会社やベンチャーキャピタリストが自社の営業を目的として行なっている。そこで講師を務める人々も、現役の経営幹部か経営経験のないただの士業や社員が多い。経営経験がない人に経営の本質が説明できるわけがないし、現役の経営者がわざわざ自分のライバルを増やすようなためになる話をするわけがない。

したがって「経営セミナー」を受けて実際に成功する経営者になれるわけではない。成功する経営者になれる人は、経営セミナーを受けなくても成功できる。実際、僕の周りの成功した経営者で、起業する前にその手のセミナーを受けたという人を見たことがない。

そこで僕は、経営指導AIを開発するために、「成功体験があり、尚且つ現役を引退したばかりで誰にも遠慮なくモノが言える元経営者」を集めて、「本当の経営の真実」をAIのために説明するセミナーをシリーズで開催することにした。

このセミナーの目的はAI向けの学習用データセットを作ることであって、本来は観客を一人も必要としない。

しかし、講師というのは難しいもので、観客が誰もいないと話すモチベーションが湧かない。そこで、ごく少数の人々に対して直接語りかけるセミナーを企画している。まずは4月、5月、6月の3回に分けて行う。4月、5月は20名限定のセミナー方式、6月は10名限定で合宿形式で行う予定。

詳細は明日、4月1日に解禁される。僕はエイプリルフールが嫌いなのでたとえ4月1日でも決してつまらない冗談を言うつもりはない。

ただし、最初はシラス会員や周囲の経営者など親しい人たちから解禁する。人数が限られているのでその段階で埋まってしまうかもしれない。

これから先、人間のためではなくAIのためにセミナーをやり、そのついでに人間の聴講生も募集するというやり方が知能資本の集め方として主流になっていくだろう。その先鞭をつけてみようというわけだ。