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横山秀夫「第三の時効」犯人との闘い以上に刑事部内の闘いが凄まじい。

横山秀夫「第三の時効」は凶悪犯罪者を追い詰める刑事たちのハナシ6編。各編とも巧妙なプロットがストーリーをスリリングなものにしている。 だが刑事たちと犯人との闘い以上に、刑事部内の上司部下の、ライバル同士の闘い、確執がすさまじく、ドラマに引き込まれる。 短編集というより、6部構成の長編だ。読みはじめると止められないのはいつものこと。まだ当分は横山秀夫から離れられない。

「陰の季節」「顔」と続けて横山秀夫にハマってる。

「64(ロクヨン)」が素晴らしかったので「陰の季節」「顔」と続けて読んで横山秀夫にハマった。 陰の季節は4編だが人事屋のニ渡が主役でハナシも繋がっている。短編というより4編合わせてて長編を読んでいるようだった。スジが見えないサスペンスであると同時に、警察内での確執、妬み、葛藤等々ドロドロの人間模様に止められない。 顔は連作短編ではないが、7編は独立しているともいえ陰の季節と似ている。こういうのが初期のスタイルだったのかな。 こちらの方は鑑識課の平野婦警がさまざまな事件にぶち当

「64(ロクヨン)」横山秀夫がこんなすごい作品を書いていたとは。

横山秀夫「64(ロクヨン)」2012年出版。このミス1位、本大2位など多数受賞は当然だろう。警察内部の刑事部と警務部、キャリアとノンキャリの対立の中での主人公の葛藤。二つの誘拐事件が収斂していく重厚なストーリー、緊迫感がすごい。ミステリーというにはあまりにも人間の心理を奥深く描いている。横山秀夫は半落ち等初期の短編・中編は読んでいたが、こんなすごい作品を書いていたとは。もっと早く読めばよかった。

「キネマの神様」山田映画は原田マハの書いた奇跡の物語じゃない。

原田マハの「美しき愚かのたちのタブロー」に大感動したから「キネマの神様」を手にとったらもう止まらなかった。すごい、これも傑作。最後は泣きそうになったよ。 で、あまりに感動が大きくて冷めないものだから、我慢できずに山田洋次の映画化作品を観たんだけど。 うーん、唸ってしまった。 原田マハ、なんでこんな映画化に同意しちゃったの? いや原田の映画化作品じゃないってことなら、いい、面白かった、って言える。まさに山田映画だ。ジュリーも寺島しのぶも宮本信子も他のひともみんないいし。 しかし

原田マハ「美しき愚かのたちのタブロー」史実に基づく大感動のドラマ。

原田マハ「美しき愚かのたちのタブロー」は2019年出版。わたしらが今日観ることができる国立西洋美術館、松方コレクションを創った人たちの物語。松方幸次郎、吉田茂、矢代幸雄その他たくさんの人たちの、こんな人生をかけた努力、闘いがあったのだ。膨大な参考文献のリストをみればこの作品を書くことがどれほどたいへんだったか想像がつく。すごい作家だ。 「たゆたえども沈まず」(2017年)、「楽園のカンヴァス」(2012年)もよかったが感動の大きさではこの作品が一番。

中山七里「護られなかった者たちへ」一気に読了。すごい。

中山七里「護られなかった者たちへ」一気に読了。心が揺さぶられた。 2018年の作品で、2021年に映画化されているが見ていない。映画も是非とも見たいが、苫篠刑事と利根の心理を深くリアルに描くという点では小説の力が優るのではないか。 でも想像するに、映画にはたぶん東日本大震災で荒廃した風景や傷ついた人々の映像があって、それが感動を深くしたかもしれない。 それはともかく中山七里は初だったが素晴らしい作品だ。 実はこの前には大沢在昌「黒の狩人」を読んでいて。でも上巻を読んだらもうい

桐野夏生「玉蘭」恋愛を通じて人間の本質に迫った。

桐野夏生「玉蘭」は戦前と現代の上海を舞台に時空を超えた二組の恋愛を描いたものだが、そのうちの1人は夏生の祖母の弟がモデル。その大叔父は戦前、日清汽船ぼ機関長で戦後行方知れずになった。元々は彼の物語を書こうとしたのだという。だが現代の女性たちの苦悩も書きたくなってもう一組を登場させ、この二組の恋愛が交錯する複雑なドラマになった。恋愛を軸にドラマは展開するが、時代の荒波の中でさまざまな困難にぶつかり、もがくこの4人の姿に人間の本質が描かれる。 アウト、グロテスク、魂萌え、柔らかな

「間宮兄弟」映画を観たら小説の良さがわかってきた。

「間宮兄弟」を江國香織のベスト1に北上次郎が本の雑誌で、10年ぐらい前だが選んでいた。 仲のいい独身兄弟のほのぼのとした日常のハナシで、スラスラ読んだけど、これが江國の1位なのかって思った。 で今日、61歳で亡くなった森田芳光監督の2006年の映画を見たら、もうたまらなく面白かった。キャストも信じられないほど豪華で。佐々木蔵之介、塚地武雅、常盤貴子、沢尻エリカ、北川景子、戸田菜穂、岩崎ひろみ、佐藤隆太、髙嶋政宏、中島みゆき。 江國はあとがきにこう書いている。“この2人には

桐野夏生「柔らかな頬」犯人がわからなくてガッカリする必要はない。

「OUT」に続いて手にとったのは直木賞受賞作「柔らかな頬」だが。結局カスミの真相がわからないままのエンディングで、ええって声がでてしまった。 夢の中でのストーリーとして、殺されたり、誘拐されたり、を読まされて気がはやり、疲れて最後のあたりは、それでホントは誰が? どうなる? って味あうことができずちょっと飛ばしたりしてて速読。 でも書かれてない、え、なんで? で、いま何時か経って思った。 ああそうか桐野夏生はミステリー小説を書いたんじゃないんだ。犯人探ししながら読んで最後の

瀬尾まいこ「そして、バトンを渡された」わたしたちには幸せな物語が必要だ。

瀬尾まいこ「そして、バトンを渡された」は母2人父3人に育てられた高校生優子が短大を卒業し就職を経て24歳で結婚するまでのハナシ。5人の親達はみんな善人で、彼らからこよなく愛されて成長していった優子の結婚式がフィナーレ。文句なくぐっとくる。 複雑な家庭環境下での青春の日々には、友情や恋やイジメやもろもろ出来事があるんだけど。決して暗くならず、優しい心を失わず、全てを受け入れ、前向きに生きていく。瀬尾まいこの描くこの優子がまばゆい、とても素敵なのだ。 5人の親に育てられるこんな設

「永い言い訳」映画も小説も今イチオシ西川美和氏の傑作。

今イチオシの西川美和氏、映画作品6作「蛇イチゴ、ゆれる、ディアドクター、夢売るふたり、永い言い訳、すばらしき世界」は全て原作・脚本・監督。 これってすごくない? マジすごいって思う。 で、「永い言い訳」の映画を観やっと観た。小説とちょっと違うような気がして、観終わってすぐに小説後半をを開いて思い出した。原作は竹原ピストルが風俗店で風俗嬢に首を絞めさせて、苦しくなって突き飛ばして大怪我させて逮捕。でも映画では自動車事故にかえてた。18禁になるのを避けたかったのか。 これ本木雅

今年の読み納めは瀬尾まいこ「あと少し、もう少し」。

2023年の読み納めは瀬尾まいこ「あと少し、もう少し」。この文庫本解説が「風が強く吹いている 」の三浦しをん、ってなにこれ。青春・スポーツ小説の傑作を書いた2人の文章がこの一冊に続いてる。すごい。 でもいくら傑作でも、大晦日に悲しい小説は読みたくなくなかった。だから「そして、バトンは渡らせた」ではなくこれを選んだ。 6人の中学生ランナーの独白という構成。読み進めるうちにどんどん感情が昂ぶった。フィナーレにすぐ続いて三浦しをんの解説を読むようになっていて。 それを読んでから

真山仁「ハーディ〜ハゲタカ2.5」はなんと国際サスペンス。

真山仁「ハゲタカII」のあとに選んだのは、「ハーディ」(上下)。ハゲタカ2.5、とサブタイトルがつけられている。松平貴子がミカドホテルを取り戻すハナシと要約するのは適切ではないだろう。 ハゲタカⅠ、Ⅱとは全く作風のことなる国際サスペンス劇なのだから。とはいっても貴子がミカドホテルを奪われたスジからは繋がっている。鷲津はほとんど登場しないけれど。 ストーリーは目まぐるしく二転三転、まさにサスペンス。それが最終章で急展開し貴子が取り戻すというのはハナシがうますぎる。 でも、わざと

真山仁「ハゲタカII」前作よりさらに一気読みした。

真山仁「ハゲタカII」(上下)をこの3日で読了。 「Ⅰ」より止まらず一気に読んだ気がする。 前作は「不毛地帯」や「亡国イージス」ほど登場人物の内面が深く描かれていないなどという不満をちょっと書いたが、この「II」では落ち込んだ鷲津が故アランの両親に会うシーンで泣きそうなほどグットをきた。 このあとどういう順番で読めばいいんだろうってウィキペ見たらイマイチわかりにくくて。 他の検索したら「ニコイチ読書」ってサイトにこう書いてあった。 まだまだあるんだなぁ。でもこれはやめられん。