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ノンフィクション

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大下英治「孤高奮戦変革の人 平沢勝栄」興味深い内容あった。

大下英治の平沢勝栄の評伝を読んだ。発刊は2023年11月と新しく、興味深い内容があった。 そのひとつ。巷噂されている、岸田総理が近く電撃訪朝して、拉致被害者の田中実さんと金田龍光さんを帰国させ、見返りに巨額支援を与えるのではないかということについて、平沢はこれを支持している。この2人の帰国で北朝鮮は拉致問題を幕引きにしようとしているかもしれないが、それじゃ拒否すればいいという理由だ。そんな懸念より、2人でも拉致被害者を奪還することを優先すべきだと。 西岡力や山口敬之らはこうい

「OUT」「発火点」桐野夏生の想像力ってホントに凄い。

瀬尾まいこの幸せな小説2冊の次は、桐野夏生「OUT」。言わずと知れた桐野の代表作だが「グロテスク」を読んだ後は積読したままだった。ちょっと続けて読むのが辛い感じがして。 だが夏生の対談集を見つけてその中に大好きな西川美和との対談があって、それがすごく興味深い内容で、積んどいた「OUT」開いたらもう止められなかった。評判どおりスゴイ。 西川との対談で、見たこともない聞いたこともないようなことをどうやって書くのかと訊かれて、桐野は想像力で書くのだと答えて、”講釈師、見てきたような

大下英治「最後の無頼派作家 梶山季之」今日はノンフィクションが必要だった。

桐野夏生「玉蘭」のあと小説を読んでいなかったが、何日か前に恩田陸「まひるの月を追いかけて」を読みはじめたものの、百頁くらいでやめてしまった。 次の日に中脇初枝「きみはいい子」の後半をひらいたがこれも続かなかった。 積読本が何十冊もあるのに手が伸びなかった。 映画は毎日のように観ていたからふと思った。小説は映画ほど楽しめないのかな。おれは小説を必要としてないのかな。 ところが昨日図書館で借りてきた大下英治「最後の無頼派作家 梶山季之」を今朝読みはじめたら、これが止まらない。幼

江藤淳の「保守とはなにか」読んでいて

年末年始に江藤淳の「保守とはなにか」読んでいて、1995年阪神大震災で明らかになったことがあるというくだりに様々な思いが込み上げた。 先ずは当然村山内閣のお粗末な危機管理能力だがより本質的なこととして、江藤は皇室と自衛隊の問題を論じた。 阪神大震災のあと犠牲者の遺体がまだ埋まっている中で皇太子は神戸の被災者を見舞うことなく中東訪問に出発した。そうさせた宮内庁と外務省はいったい皇室を何だと考えたのか。 関東大震災のとき病気療養中の大正天皇にかわって、当時摂政官であった昭和天

デール・マハリッジ「コロナ禍のアメリカを行く」を読む

デール・マハリッジ「コロナ禍のアメリカを行く」(原書房、2021年、上京恵-訳)を読んだ。 長年貧困、差別などの社会問題について書き、ピュリッツアー賞も受賞した作家だが、2020年半ば西から東へと旅して、コロナ禍で仕事を、住む場所を失った人々の現実を見つめたルポタージュ。 GDP世界1のアメリカは、実は貧困がはびこり、セーフティネットがなく、生き延びることが厳しい国でもある。読むほどにそれが伝わってきて辛くなる。 作家は終わりの方でこう書いている。 何をなすべきかは、とっくの

オバマは「約束の地」の続編を書くべきだ

オリンピックでぜんぜん読書する気ならなかったけど、今日は朝からオバマの回顧録を読んだ。 オバマを評価しなかったのは、中国がやり放題にやるようになったのが、オバマの戦略的忍耐のせいだからというのが一番で。次は対北朝鮮政策でも何もやらなかったこと。そして3番目に日本軽視、特に1期目の、が頭にくるから。 2期目後半から、レガシーづくりで、イランとの怪しい核合意、キューバ外交、広島訪問、等々を進めたことも動機不純で、あさましいって気がした。 この回顧録でオバマが誇ったのは、リーマ