150年企業の構造改革

来年に創業150年を迎える資生堂は10年ぐらい前に低迷していました。当社の改革を進めていた前田新造社長が会長に就任し、世代交代のために社内の若手にバトンを渡したところ、それまでの会社の改革への期待が剝げ落ちてしまいました。

日本発の美を世界へ展開させる当社の可能性は長期投資に値すると、2008年に設立した弊社コモンズ投信のコモンズ30ファンドを2009年に設定した当時から投資先として組み入れいました。しかし、投資を開始してから4年間、その期待が実現することなく、株価はズルズルと低迷。

2013年頃になると、いくら長期投資であっても、手放すべきという声が投資委員会でも上がってきました。そんなとき、2014年に電撃的な発表がありました。

マーケティングの顧問として前年から当社に入っていた魚谷雅彦が社長に就任するという内容でした。140年以上続いている会社が経営トップを外部から招くことは初めてです。さて、これが吉と出るか、凶になるか。しばらく様子を見ることにしました。

数年後、その結果は明らかでした、眠っていた美女が目覚めたように資生堂が蘇ったのです。まるで成長産業の株価のようにぐんぐんと資本市場から再評価される数年が続きます。

そして、コロナ禍。特に中国人のインバウンドなどが売り上げのエンジンになったので、資生堂の事業モデルが急カーブに迫りました。その時の魚谷社長のハンドルさばきが求められる展開になりました。今回の発表は、その構造改革の進展を示すものになります。

ちょうど魚谷社長が本件の大詰めに入っている時期に、たまたま私はご本人に英語ポッドキャストをご依頼していたんだということを、今回の発表で気づきました。超ご多忙のタイミングにかかわらず、快くお引き受けいただけただけでなく、収録に2時間以上のお時間をいただけたことに本当に頭が下がります。

とても楽しい対談で学びが多かったですが、特に印象に残ったのは、10年弱ぐらいに我々コモンズ投信が資生堂に投資を続けた理由の一つに、当社のガバナンス体制と対話力がありました。当時の日本の会社としては、取締役会の多様性は群を抜いていましたし、我々みたいな実績もない小さな規模の運用会社でもIR部門がいつも真摯に向き合ってくれたのです。

今回のポッドキャストで魚谷社長が、どのように社長に就任したかをご本人からお伺いすると、やはり、そこにはガバナンス体制が、形式だけではなく、実践的に機能していたということが確認できました。

また、2018年のコモンズ投信の9周年イベントに対談セッションでご協力していただいたときに実感したことがありました。ああ、太陽みたいな経営トップが凍り付いていた資生堂のすみずみに足を運んだから、社内の色々なところで花が咲いたんだな、と。

これも、今回の英語ポッドキャストで再確認できたことです。

コロナ禍という世界級のグレートリセットに、今回の資生堂の構造改革が吉と出るか、凶となるか。展開が楽しみです。

英語になりますが、ご関心があれば、こちらです。なぜ英語かというと、日本から世界へ発信する英語コンテンツがPodcastでは少ないなとと感じたからです。魚谷社長のような経営者があるということを、誠に僭越ながら、もっともっと世界に知ってほしいと思っています。長時間いただいので、3部構成に編成しています。



#日経COMEMO #NIKKEI #madewithjapan

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