もっと多く報道されるべき日本政府の功績

G7を主催する英国のジョンソン首相は、途上国・支援国への支援をアピールしています。

ただ、こちらの記事で指摘はありませんでしたが、実にイギリスは支援を3割ぐらい削減しています。ブレグジット関連など国内世論の影響のようです。

一方、日本では、もっと大きく報道されるべきニュースが6月2日にありました。

日本が共催したGavi COVAX Advance Market Commitment (AMC) Summitとは世界の低所得国にCOVID-19のワクチンを届けるために設置された世界的イニシアティブです。今回のワクチンサミットは低所得国へ18億回分のコロナワクチンを確保する為の83億ドルという目標額を掲げていましたが、結果は大きく上回る96億ドルを各国から確保しました。

これらのワクチンは2021年から2022年初頭に低所得国へ提供される予定で、これにより91カ国の低所得国の成人人口の約30%をワクチンで守ることができます。世界全体でこれまでに接種された10億本のコロナワクチンのうち、8割以上が高所得国へ行き、たったの0.3%しか低所得国に行き渡っていない現状からは大きな前進です。

日本政府は、今回のワクチンサミットで8憶ドルの拠出を発表しました。Gaviの公開情報で単純計算しますと、7500万人分以上のワクチンになります。これは関係者が期待していた金額を大きく上回り、去年に拠出を発表した2億ドルを加えるとCOVAXの設立来10億ドルとなり、20億ドルを拠出した米国に次ぐ10.6億ドルの拠出を発表したドイツと並んでいて、世界においてCOVAXのドナー国の最上位です。

しかし、日本国内のワクチン接種が他の先進国と比べると出遅れている事態の時に海外援助なのだ。自国を優先んすべきであろうという疑問を抱くかもしれません。

ただ日本の課題はワクチンが無いことではなく、ワクチンを接種するプロセスです。ワクチンを購入するお金が枯渇している訳でもありません。多く低所得国は、そもそもワクチンを確保できないという課題があります。また、ウィルスは変異し続ける特性があります。変異する度に感染力が強くなるリスクもあるからこそ、ワクチン接種が進まない途上国での変異種の発生は、日本人にとっても、自分コトです。

もう一つ重要なポイントは今回の拠出は成長戦略の一環である先行投資になりなることです。日本を含むドナー国が公平なワクチン供給を支援することで、今後5年間で約50兆円(4,660億ドル)の経済的利益をもたらす可能性があると言われています。

ワクチンサミットを迎えるおよそ1か月前の4月下旬に企業経営者で参画した「グローバルヘルスを応援するビジネスリーダー有志一同」の代表として私は官邸で要望書を総理に手交いたしました。

要望書をお渡しする際にお伝えたメッセージとは、総理の英断で宣言された「2050年カーボンニュートラル」と同様に、グローバルヘルス(国際保健)も新たな産業の成長戦略となるという内容でした。

新型コロナ・ウイルスの対応で日本国内の深刻な課題が山積みになっている中で、なぜ途上国・新興国向けのODAを増やす必要があるのかという疑問あると思います。しかし、環境問題と同様に、自国のみでは保健医療課題であるパンデミックは対処できません。

一方、自国のみで対処できない世界的課題ではありますが、的確な国家戦略を打ち出すことによって、自国のプレゼンスが世界で変わります。カーボンニュートラルと同様にグローバルヘルスは新たな産業の成長を促す日本の国家戦略です。コロナ禍の大衝撃を全員が体験したからこそ、実現させるべき新たな社会設計になるからです。

コロナ禍によって国境が閉鎖されたことで、人々の豊かな経済社会の暮らしに大きなマイナス効果があったことは明らかです。また、パンデミックに国境なしということも明らかです。国境内で対処しなければならないことが多い現状を踏まえながらも、国境なしの豊かな世の中を築くことは後世への責務です。

#日経COMEMO #NIKKEI

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