ESGの原理原則を外すな

「ESG]ファンドという名乗りながら、目論見書を読むと投資先企業のESGを選別する運用プロセスに「ESGを考慮する」ということしか掲載されていない投資信託が、一般個人に販売されていることに問題視していました。同じような認識が世間で広まってきているようです。

「日本料理」という看板がかかった店に入ったら、そこには「日本料理を考慮」するメニューしか無ければどうなんでしょう。初めて日本料理を食べる人であれば「こんなものか」と思うかもしれませんが、それで「日本料理」と名乗って良いのかと疑問が沸くでしょう。

ただ、日本料理と言っても、その調理方法は多様です。ESG投資も同じだと思います。例えば、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)を定量的にスコアリングする、あるいはESGコンサルにお墨付きしてもらうことだけがESG投資の運用プロセスではなくても良いと思っています。

そもそもESGは企業の非財務的価値への投資なので、その価値が正確に数値化できているかというと,、必ずしもそうではありません。一見、スコアリングは客観的な定量化に見えますが、実はかなりの主観性があります。そして、主観性=多様性です。ひとつの正しい答えがあるわけではない。

と言いながらも、ESG投資には外してはならない基準があっても当然なことです。それに自分がSteering Groupの委員として参加しているUNDP(国連開発計画)のSDG Impactの基本方針が参考になると思います。

SDG Impactとは、PEファンド、債券、企業がSDGsの達成に事業や用途がアライメント(沿う)しているという基準づくり、および認証(SDG Impact Seal)づくりのプロジェクトです。

ここで言う「基準」とは、ルールということより、どちらかと言えば原理原則のプリンシパルという考えであり、4つあります。

1.Strategy ー 企業理念や戦略がSDGs達成といかに接合しているかという確認。つまり、企業が「言ってる」ことです。

2.Management Approach ー 上記の理念・戦略がいかに融合的に執行されているかの確認。つまり、企業が「やってる」ことです。

3.Transparency ー 情報開示だけに留まることなく、その内容のコミュニケーションも含みます。つまり、企業が「見せてる」だけではなく、「説明している」」ということも含みます。

4.Governance ー そして、これらの取り組みへを株主だけではなく、多くのステークホルダーとのコミットメントを強化することです。ということは企業や投資家の一方的なモノローグのすれ違いではなく、双方向なダイアログ、つまり「対話」です。

【詳細は、こちら ↓ をご参照ください】

もちろんSDGsとESGは似て非なる関係です。SDGsとは、人間社会の持続可能性のまさにゴール(目的)である一方、ESGは企業の持続可能な価値創造への手段です。

ただ、SDGsを達成するための活動の基準評価は、ESGの原理原則の手段として十分応用できると思います。

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