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ブラッドハーレーの馬車を読んで存在しない少女のために祈った話

たまに「救いのない話」「後味の悪い話」を無性に摂取したくなる。 そこで目に留まったのが、Twitterで物議を醸した「鬱マンガランキング」だが、折角なのでそこで1位に輝いた「ブラッドハーレーの馬車」を読んでみた。 「無限の住人」にハマっていたので、そんな沙村さんの描く鬱の世界とは……。 この世界になぜ万次さんはいないの……次のページで万次さんが現れて欲しかった……。 凶さんでもいい……。百林姐さんでもいい……。槇絵さんは……強いけど頼りにならんな……。 こんな世界があ

『院政とは何だったのか』

積読消化で読んだが、なかなか興味深い本だった。 東国国家論と権門体制論や荘園について。日本中世史を語るうえで欠かせない要素がわかりやすくまとまっていた。 平安後期~鎌倉時代では収入をどうやって得ていたか。収入源は「荘園」である。その荘園が、どう政治に影響していたか。 鎌倉時代の事を「経済」面から見るのに役に立つ本だった。

戦争は女の顔をしていない

ロシアがウクライナに侵攻開始したという話を聞き、以前話題になったこの本を読もうと思った。 第二次世界大戦の時に、ソ連の兵士として前線で戦った女性たちの話だ。 私は祖父や祖母から戦時中の話はよく聞いていた。その話をまとめた同人誌もある。 だから、なんとなく、幼い頃から戦争とはどんなものかイメージしてきた。でもこの本に書かれていた話は、私が祖父母から聞いた話より衝撃的なことだった。 だって私の祖母は兵士ではない。日本で兵士は男性だけだったのだから、祖母が戦争で兵士として銃

『毒になる親』を読んだら、親と仲良くしようと思った話

最近Amazonの読み放題を利用している。その中に『毒になる親』があった。 いわゆる「毒親」の名付け元となった本である、という知識はあったが読んだ事はなかった。創作のネタになるだろうと思って読んでみることにした。 感想の結論から書いてしまえば、この本は「毒親」に苦しめられている禍中にある人ではなく、何となく親にモヤモヤをかかえている人が、これから親になる、もしくは子どもにたずさわる人が覚悟完了するための本だ。 もちろん、この本を読むことで「私の親は毒親だった」と気付くき

哲学の本を読んでみたら、自分の立場が言語化された話

「哲学と宗教全史」元々哲学に興味があって、哲学の事をざっくりと知りたかったんですよ。でも本屋に並んでいるのは、哲学と銘打ったどこぞの経営者のノウハウだったり、哲学をビジネスに活かす方法だったり。 私が知りたいのは、「いつの時代に、こんな時代背景があって、こんな人が、こういう事を考えた、というのを時系列にまとめたもの」なんですよ。 できれば西洋哲学・東洋哲学も一本にまとめたものが欲しいと思って。 やっと見つけたのが、この「哲学と宗教全史」でした。 内容はまさに、私が求め