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戦国時代の自動操縦 ③

「もしもここがここでなくて、僕らが僕らでなかったならば、映画を作ってみたいんだが」
満天の星空の下で呑気に独りごちる戦友に、
いったいどんな映画なの? と、きいてあげずにいられなかった。
「それはね、自動操縦の技術が実現している未来を舞台にした映画だよ。片道分の燃料だけでも充分なようにさ」
相変わらずその声はのんびりしている。
「いいね」(でもそれはそれでやっぱりまずいんじゃないかな。本当はぼくら、平和を願うべきなんじゃ、)口に出しかけてやめた。
「もちろん、時代背景は変えるんだ、たとえば戦国時代の物語はどうだろうか。越後と甲斐の二大勢力が睨み合っているとするだろ? 甲斐の領民が塩不足で苦しんでいる。そこに越後の武将が敢えて敵に塩を送ってやる、そんな話だよ自動操縦で」
「さすがだね。やっぱり君も本当は平和を願っていたんだね。実はさっき、」
じゃあ、おやすみ。明日は出撃なんだ塩を積んで。
強いて明るい声で戦友のナメクジが言った。

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たらはかに様のお題に参加しています。

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