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「立方体の思い出」ホラー編

「いつまでも自分の箱の中に閉じこもっていては駄目」
ママはボクが学校に行かなくても怒らない。思い出したようにこんな言葉をかける。
「はーい」
返事はするけど視線は古い立方体のテレビ画面に釘づけ。だって気づいてしまったから。部屋は立方体の箱だ。箱から出てもそこは箱の町でそれは箱の国の中にある。結局箱マトリョーシカの外には行けっこない。
「そんなことないわ」
古いテレビがアニメ声でしゃべった。彼女のお腹の口に黒い直方体を押し込んで内側の幾重にも丸くからみついた薄くて細い磁気を読ませることは禁止されていた。でもボクじゃない、あいつ勝手に飲み込んだんだ。画面に粗い砂嵐。ママだ。包帯を引きずって部屋から出て行く。裏庭? 開いた箱にもぐりこんだ。中に入りフタをする。土がひとりでにフタにかかる? 何事もなかった地面。 ◀︎? これはいったい何? 
「逆再生」
背後でママがテープ状のものを引きずって答える。
「あの箱から出てきたの私もお前も」

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