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本紹介『父を撃った12の弾丸(The twelve lives of Samuel Hawley)』


 この本は、少女と銃と父と、今は亡き母の物語です。

 主人公である少女ルーは、一風変わった父子家庭で暮らしてきました。その暮らしはルーと父のサミュエル・ホーリー(以下ホーリーと書く)の二人で各地を転々とするというもので、数ヶ月~一年ほど住んだとしても、ある日突然荷物をまとめてトラックに乗せて新しい町に移住しました。

 さらに変わっているのは、移住するときに持って行く荷物です。移住するときには、最小限の服や日用品と母の形見の入った箱、そして銃器類です。ホーリーは今亡き母のリリーに対する執着が強く、母の形見を常に浴槽と洗面台の周りに並べていました。また、数多くの銃器類です。サミュエルは、何故か拳銃からライフル銃、散弾銃などの銃器類を所持しています。

 そんな生活をしているある日、ホーリーが次の移住先を探している時に、ルーが一人でチェスをしているのを見て、定住先を決めてそこに行こうと決めました。その行き先は、主人公の母が育った町でした。

 その町へ行き、ルーは学校へ行きホーリーは海釣りをして生計を立てます。しかし、町の住民には受け入れてもらえず、ルーはいじめられホーリーが釣った魚はほとんど買ってもらえませんでした。そんなある日、その町で一番のお祭りがありました。そのお祭りの目玉のグリーシーポールという競技にホーリーが出場しました。そこで、服の下にある銃弾の痕をみせながらも華々しく優勝し町の住民たちから認められるようになりました。

 そして、ここからホーリーの受けた12の弾丸にまつわる話の章とルーが成長していく青春の物語の章とが交互に語られていきます。二つの章はそれぞれ特徴があり、12の弾丸の話は緊迫感があふれ、ホーリーの原点や銃を持つ理由そして妻のリリーと合った経緯などが分かり、ホーリーの考えの原点に迫れます。ルーの成長の物語では、危なげがありながらも様々な体験をしたり、ホーリーとの距離感に悩んだり、恋愛模様の瑞々しさが面白くなっています。

 このように、登場人物の心情を深く掘り下げられていて、とても面白いお話です。少し長いですが、一巻完結なのでぜひ読んでみてください。


<紹介した本>

『父を撃った12の弾丸』著:Hannah Tinti  訳:松本 剛史 文藝春秋

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投稿が2日遅れてしまい、申し訳ありませんでした。
本紹介以外の記事も近々投稿予定です!
来週もよろしくお願いします( `・∀・´) (総務部)

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