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ガザ地区の惨状を見て思い出す/名作『アラビアのロレンス』の一場面

 国民を心底なめきっている岸田首相は、「期間限定の所得減税」などとフザけたことを言っている。消費減税には絶対に触れず、選挙後に大増税か。

 「これで騙されるようでは、日本ももう終わり」と言われ続けて十数年。支持率が下がろうがなんだろうが、小選挙区制と3割の岩盤支持層に守られてびくともしない。それどころか国民民主も維新もなびいて、ますます安泰か。

 腑が煮え繰り返る思いだが、結局「諦めずに頑張ろう」という結論しか出ない今日この頃である。自民党にもう少しマシな人間がいればねぇ。愛国心の一かけらもないわ。

 それで、パレスチナ情勢について娘と話していて、第一次対戦中のイギリスによるアラブ工作を描いた『アラビアのロレンス』の話題になった。もう60年以上前の映画になったなんて。

 私はこのデビッド・リーン監督が大好きで、『ドクトル・ジバゴ』も、なぜかアメリカの女性批評家から酷評されて監督生命が終わりかけた『ライアンの娘』も、いい作品だったと思っている。

 批評というのは本来、いいエンタメを生むために行うものだ。才能ある人間が真剣に作ったものを貶すのは、批評ではない。作品の出来以前に、真面目な制作者に対しては敬意を持つべきである。

 でも当時、彼女の影響力はとても強くて、みんながなびく結果になった。古今東西、こういうことはよくある。全否定というのは爽快感があって、気持ちのいいものだ。

 幸い、最後の作品になった『インドへの道』が評価され、いい形で人生を終えることができた。危うく、あの映画は制作できないところだったのだ。この映画は、インド人男性によるイギリス人女性へのレイプ疑惑という、難しい問題を描いている。その難しさは『アラビアのロレンス』に通じるものがある。

 『アラビアのロレンス』も今観ると、所々おかしなころがあるが、60年前の作品だから仕方なし。私が一番印象に残っているのは、ロレンスが夢を託したアラブ人の自治が、うまくいかない場面である。

 議会を作って話し合いをしようにも、部族同士の対立が激しく、すぐに口論になって話し合いどころではない。落胆するロレンスに、行動を共にしている部族長がこう言うのだ。「いいか! アラブ人というのはな、苦しんで生きろという意味なんだ!」←この言葉。

 この部族長を演じたのはアンソニー・クィン。メキシコ系アメリカ人で、個性的な風貌と頑強な肉体で、独自の存在感を放ったスターだった。他にも『革命児サパタ』『その男ゾルバ』などの名作に出演した。だが何と言っても、フェリーニの『道』、あれは圧倒的だった。あのラストシーンは映画史に残るものだと思う。
 

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