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そのうち

昨日、小学校の同級生が死んだ。
 
病気でなく事故だったようだから、歳のせいではない。
手先が器用で車好きだった。一緒にミニ四駆やラジコンでしょっちゅう遊んだ。
 
自動車修理工をやっていたことや、地元から離れたところで暮らしていたことを、その報せで知った。
悲しいとか寂しいとかいう気持ちはもちろんだったけど「あいつのほうが先か」と諦念にも似た感情を抱いた。
どっちが先か。ファミコンの順番をじゃんけんで決めたことを思い出した。
そういや貸したゲームカセット、まだ返してもらってない。
 
皮肉屋でもあり、ノートに描いていた下手なマンガを馬鹿にされたことがあった。
だから、一応絵でプロになったんだぞ、と、そのうち、言い返してやろうと思ってたけど、そのうち、は有効期限が切れた。
 
母のときのことをまるで反省できてなかった自分に呆れていたら電話が鳴った。
遠くに住む親友からだった。同じ報せを受けて連絡してきた。一緒に遊んだ仲間だったから。
 
「次は俺の孤独死の報せかもしれないぞ」なんて冗談交じりに話してたら「おまえ、名古屋に来い。ウチの近くで暮らせ」と心配された。
それもいいかもな。今やこの仕事、どこでもできるし。
その気遣いを嬉しく思う一方で、愛犬のこともあるし、実際は簡単ではない現実に押し流され、つい「そのうちな」と答えてしまった。
 
次の、そのうち、は来るのだろうか。
また期限切れになるかもしれない。
行くのが名古屋でなく死んだ同級生のとこなら「お前、同じこと繰り返してんじゃねーよ」とか皮肉られそうだ。
 
まあちょっと待ってろ。そのうち、必ず行くだろうから。
あ、貸したゲーム、返せよな。

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