私は昨年からコルクラボに所属をしている。
コルクラボでは毎週「お題」が出る。
今週のお題は「みんなのお気に入りのカフェ、レストランを教えて」というものだった。
佐渡島さんから出されたこのお題には「どこに行ってもマックやスタバに行っていてはその街を好きになれない」と書いてあった。

その時に私はスタバやマックに行くことがほとんどないことに気がついた。
スタバやマックに行くときはお気に入りがまだ見つかっていないとき、とりあえず...の時だけ。
それは大抵どこに行ってもお気に入りがあるからだ。
今でもアナーバーの町にお気に入りのカフェやレストランがいくつかある。

私はどこに行ってもだいたいお気に入りがあるのは、自分のこだわりが強いからだと思っていた。
冷めて美味しくなくなるコーヒーが嫌だ、置いてあるスイーツが美味しくないのが嫌だ、そんな理由からお気に入りを見つけているのだと思っていた。

でも自分がその街を好きになっていると思うと、それはとても素敵なことのように感じた。「好き」がたくさんある人生は楽しい。

私はこだわりが強い方で、プリンならここ、ガトーショコラならここ、食パンならここ、牛肉ならここ、ネイルならここ、と私のお気に入りや定番が昔からあるタイプだった。
とにかく、ここじゃなきゃダメ、これじゃないとダメ、というのが強いので、違ったものを買ってこられると途端に機嫌が悪くなるくらいだった。

料理も材料をすべて揃えるタイプだったが、子どもが生まれてからだろうか。だんだん「代わりに」を使って料理ができるようになってきた。
自分の食べたいもの、食べたい味をレシピ通りでなく再現できるようになってきた。これが代替可能ということ。
例えばアメリケーヌソースパスタを食べたいと思ったら、ホタテやエビを炒めて白ワインを入れる。生クリームはわざわざ買わずにクリームチーズと牛乳、トマトペーストで代用する。
私の場合、生クリームは使い切らないことが多いので、他にも使えるクリームチーズが便利だ。
このような作り方は邪道だと思う人もいるかもしれない。
でも、自宅で作るもので、市販のものより安全で美味しくて、お店の味に似ていたり、お気に入りの味が再現できるのであれば問題ない。
お店で食べるものを完璧に家で再現する必要はない。
代わりを使ったお気に入りで十分満足できる。

今でもお肉を買うならここのお店、野菜はここ、と自分の中での買い物場所がだいたい決まっており、買い出しに行く際には数軒のお店に行く。
しかし、ここはアメリカ。
日本と同じものは手に入らない。

今住んでいるアナーバーには日系のスーパーはないので、日系スーパーに行くには1時間弱運転をしなければならず、行ったとしても日本で私が買い物をしていたスーパーとはかなり違い、私が欲しいものは手に入らない。だからあまり行く気にならない。
欲しいレベルのものが手に入らないのであれば、近くにあるアメリカのお気に入りスーパーで質の良いものをそろえて、「代わりを使ったお気に入り」料理をつくる方がずっと良い。

日本にいるときから少しずつ「代わりのもの」を使う生活をしてきていたことで、ここアメリカでも「代わりのもの」でお気に入りをかなり再現出来ている。

代わりになるものを探すことが出来るようになり、「これじゃなきゃ」のこだわりがなくなると、自然と求めていたもの、求めていたものの代わりになるものが手に入ることが多い。
そうすると喜びは何倍にもなる。

アナーバーにいるのにこんなのも手に入っちゃったー！という具合に。

私はこれまで「お気に入り」というのは、そのものでなくてはいけないと思っていた。
もちろん代替不可能なお気に入りもある。
しかし意外にも「代替可能なお気に入り」はたくさんあるということに気づいた。代替可能なお気に入りが増えると幸福度は増す。
お気に入りに触れる頻度が高まるからだ。

自分のお気に入りの何どこが代替可能かまで、細かく言葉にできなくてもよい。ある場所にいって、ああここはお気に入りになるな、と感じるならそれをお気に入りリストに入れればよい。
でも時々共通点を探してみるとよいかもしれない。

今回のお題で私はカフェを回答したが、その共通点を探ってみた。
ソファやゆったりと座れる場所であること、
外が見えてその時の天気が感じられること、
木製の家具、布のソファなど自然の温かみが感じられること、
暖炉の火や植物など店内に自然を感じられるものがあること、
カフェラテが覚めてもおいしいこと、
日替わりなど選ぶ楽しみがあること。

これらを押さえておけば私はだいたいの場所でお気に入りのカフェを見つけることができるだろう。

次はどこの国、街でお気に入りのカフェに出会えるか楽しみだ。

代替可能なお気に入りって素晴らしい。