[読書] リーダシップに出会う瞬間 - 個人の成長に向き合う指針を伝えてくれる良書
「視座を高めることが重要」といった話は非常によく聞かれますが、あまりピンとこない方も多いと思います。
「どうすれば視座を高めることができるのか」というのは、自転車の乗り方を説明するように、自分では(ある程度)できる自負はあるものの、説明しようとすると難しいものであるように感じられます。
また、「自律的なチームをつくる」ことが大事なのはわかっているものの、「自律性」はどうやって獲得すればいいのでしょうか。
あるいは「自律性 = リーダーシップを発揮すること」だとすると、そもそもリーダーシップとは何だろう、という疑問も湧いてきます。
そうした疑問を感じる中で、リーダーシップに出会う瞬間 成人発達理論による自己成長のプロセスという本を読みました。
この本では「成人発達理論」をベースとして、リーダーシップとは何か、個人がリーダーシップを発揮するために何が必要で、どのように壁を越えていくかを紹介しています。
冒頭の疑問を解消し、リーダーシップの成長について理解を深めるために非常に良い本でした。
出だしから特に印象的だったのが以下の内容です。
人はそれぞれの価値観を通したフィルターでしか世界を見ておらず、「自分がどのようなフィルターを持っているか」を知ることで、客体化された視点を獲得できる
そのために必要なのが「体験を通して自分自身の感情の起点を観察する」こと
よく話に出てくる「経営者の立場に立って物事を考える」といったアプローチとは違い、個人の内面からみたプロセスについて言及されているところに、とても感銘を受けました。
全体の構成としてリーダーシップの発達段階について順を追って解説されているのですが、普段の 1 on 1でもメンバーのリーダーシップの発揮の仕方を発達段階として捉えることができるようになりました。
まだマネジメントに活かそうという段階で、少し 1 on 1で取り入れてみた程度ではありますが、以前よりもその人に対してどのような支援をするべきかが明確になり、メンバーへの働きかけ方の質が高まったように感じています。
この本は著者の有冬典子さんによる小説形式で物語が進んでいくのが特徴です。
「リーダーシップがどのように成長していくのか」を表現するには物語を使うのはとても相性がいいと思いました。
私は物語に対して感情移入する度合いが強く、読むためにエネルギーを大量消費してしまうことが多いため、小説形式が苦手だったのですが、どの登場人物からも学ぶことも多く、読んでよかったと思わせるものでした。
(舞台となっている企業はちょっと風土が古そう、かつ問題を放置しすぎていてマネージャー的にツッコミどころが多い部分はありますね)
書籍の各省の末尾に、監修・解説をされている加藤洋平さんのコラムが載っていて、物語で起きたことを俯瞰的に整理する機会を与えてくれます。
小説ならではの主人公が趣味について語るような表現はありつつも、あくまでも成人発達理論を紹介するための物語である、というバランスがとても良いと思いました。
「リーダーシップとは何か」と考え始めたときに、入り口としてとても参考になる本だと思います。
Link
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?