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川端康成を読んだことはないけれど その1

宇多田ヒカルさんの7枚目のアルバム『初恋』が6月27日(水)に発売されます。

デビューアルバム『First Love』から20年目に『初恋』。粋ですね。U3での活動を除く、宇多田ヒカルさんのリリース曲のいっちばん初めの歌詞(『Automatic』)が「7」であり、ここにもつながりを感じます。発売したら全身で鑑賞し、全霊を込めてレビューを書こうと思います。書きます。とはいえ、これまでにレビューなぞというものを一度も書いたことがないので、その前に一度くらい書いてみます。

唐突ながら、小袋さんの『分離派の夏』のレビューを書いてみます。

まだ『分離派の夏』を聴いてなくて、ほかのどんな情報もインプットしたくないという方は読むのを控えていただけるとありがたいです(僕は誰に言っているのだろう)。ちなみに、さまざまな媒体に『分離派の夏』のレビューが上がっているのを見掛けましたが、どれも読んでいません。与太話ですが、変換ミスで「お袋さん」が出ると、森進一さんが想起されるのは昭和生まれだからでしょうか。

では。タワーレコード渋谷店で購入し、パッケージを開けて驚いたのは、ふつうのcdとは歌詞カードが逆向きに入っていることでした。

文字だと表現が難しいのですが、大半の歌詞カードは左綴じ・右開きで、左綴じの部分がケースの左側に来るように入っていますが、小袋さんの歌詞カードはなんと右綴じ・左開き(つまり「本」と同じ)で、歌詞カードがケースの右側に来るように入っています。こだわりを感じますね。ちなみに、歌詞カードの紙質も本で使われるものと同じか近いものだと思います。

こういうこだわりはとても大事ですね。聴く前から満点です。cdを買うからこその体験が提供できている。マテリアルを買おうがストリーミングで済ませようがそれは音楽の共創者であるリスナーの勝手ですが、マテリアルを買う人に付加価値を提供できている・しようという心意気に惚れました。会社の人に教えてもらったのですが、「タカヤ・オオタ」さんという、「MERY」のブランドロゴなどを手がけた方が、このアルバムのアートディレクションとデザインを担当されたみたいですね。一リスナーとして、感謝の気持ちを伝えたいです。ありがとうございました。ちなみに、僕が知る限り一箇所歌詞の記載の間違いがあります。ソニーにお伝えしたら、"第二版"という形で次からの生産分で訂正してくれるのでしょうか。

では、各曲のレビューに入っていきたいと思います。このアルバムは語りから入ります。

いわゆるブラック系の洋楽のアルバムにありがちな"イントロ""インタールード"っぽいですが、人によっては抵抗ありそうだなあと思います。語りだけのトラックに。しかも、僕がしらないだけかもしれませんが、著名な方ではなさそう。あと、6トラック目にも語りが入っています。同じように、おそらく著名な方ではなさそう。そうなると、なんでこの語りを聴かなきゃいけないんだろう、という疑問が浮かんできそう。このトラックに対して、某音楽雑誌で「不思議な語りが~」みたいな、ややネガティブな語り方がされていましたが、僕にとって、これらの語りが凡百のアルバムと『分離派の夏』とを違えています。語られている内容はわりとどこでも言われている内容です。雑に言うと芸術による精神の開放とでも言うんでしょうか。むかし音楽雑誌の『Snoozer』でDeerhunterなどのバンドで活躍していたブラッドフォード・コックスだったっけかが、自分にとっての創作は精神安定のための営みだと言っていたのを思い出しました。それ自体の解説は割愛しますが、ここで大事なことは、「小袋成彬」を「川端康成」(その他、先達)を引用して語っていることです。もちろんこれを制作しているのは小袋さん(と存在感がスケまくっている宇多田さんとここに書けないぐらいすごい・たくさんの方々)なので、この語りを1トラック目に持ってきたのは本人(たち)の意図です。なにが言いたいかということ、この1トラック目で「このアルバムは川端康成の系譜に属する芸術作品である」ということが宣言されていると僕は考えていて、上記の"歌詞カード"の意匠からもその意図が伺えます。僕のボキャブラリーや言語表現力が拙くてこの意義が伝わらないとだいぶ歯がゆいのですが、おそらくわりと多くの国民が注目するだろうメジャー作品のド頭で、「この作品は『伊豆の踊り子』の子孫です」と言う、このことがエポックメイキングです。

続きは今度書いてみようと思っています。ちなみに、『分離派の夏』の2トラック目のサビ終わりのあたまのフレーズが『「初恋」と呼ぶのはあのゲーム』です。宇多田さんの次のアルバムタイトルは『初恋』です。細かいですね。では、おやすみなさい。

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