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自己啓発本を卒業して、次のステップにいく道案内

こちらのツイートが話題ですね。「読書の秋」に読みたい本100冊を紹介しているのですが、、、

Twitterではさまざまな反応が寄せられています。

選書が自己啓発本ばかりで、ネガティブな意見が多かったですね。このブログ記事では、自己啓発本を読むことの問題、ではどのような本を読むのが良いのか?、具体的におすすめのコンテンツという順番で書きます。

読書習慣をつける意味では、自己啓発本は読まないよりは読む方がマシなのでは?

僕としては、読書習慣をつけるという意味では、全く本を読まないよりは自己啓発本を読む方がマシだと思っています。僕も前は自己啓発書もそれなりに読んでいました。しかし、自己啓発書の問題点は読んだだけでやった気になってしまっていて、行動しなければ何も意味がないことです。モチベーションが下がってきたら自己啓発書を読んで、万能感を感じて満足し、時間が経つとモチベーションが下がってきて、その繰り返しでは時間のムダです。

そして、自己啓発本で述べられていることは、だいたいどれも同じ内容なのです。自己啓発本の古典である、「7つの習慣」や「影響力の武器」あたりを読んでおけば、残りの80冊はほぼ同じような内容を言っているのではないでしょうか?

それは、自己啓発本を読む人のニーズは、新しい知的発見をすることではなく、モチベーションを高め、社会を生き残る不安を埋め合わせるために、言って欲しいことを言ってもらうことだからです。すでに知っていることをあえて言うことで、「自分は間違っていない」と自分の考えを補強してくれて安心できるのです。

自己啓発病社会

しかし、自己啓発本を読む人が悪いのかといえば、必ずしも彼らが悪いのではなく、自己啓発本を読まなくてはいけない社会の風潮が悪いとも言えます。

イギリスのサミュエル・スマイルズが書いた「自助論」は、自己啓発本の古典です。成功者たちの考え方を調べることで、成功するための共通点を見つけ出し、その方法を再現することを目指した本です。

このような自己啓発本が読まれるようになったのは、ここ20年くらいのことです。日本でこの本を広めたのは、郵政民営化で有名な小泉純一郎や、そのブレーンである竹中平蔵であると言われています。

日本では、戦後ベビーブームで若い人口が急に増え、経済の発展が上向きになり、世界で3位とも言われる経済規模に達しました。しかし、その後バブル崩壊を経て失われた20年に突入していき、経済は低迷します。ベビーブームで生まれた世代は高齢化し、彼らを支える若者が少ない、超少子高齢化社会に突入していきます。

国の人口がどんどん増えてお年寄りを支える若者が多いうちは、老後の生活を社会保障に頼ることができます。税金によってみんなで簡単に支え合うことができるのですが、少子高齢化社会になってくるとそうはいかなくなります。

そこででてくるのが「自助論」です。「このままではもう国が働けなくなった人を、支えることができなくなります。だから、自分で努力して自分の身を守ってくださいね。」ということです。最近では老後2,000万円問題などもありましたね。

「自助・共助・公助」という考え方がありますが、自助は自分のことは自分で守ると言う事、共助はみんなで支え合って助け合うこと、公助は国などの公的機関によってサポートしてもらう事です。

今は公助に限界があるので、自助、あるいは共助でなんとかしてください、と言うことです。これはある面では正しいと思います。公助に頼り切ってしまい、自分で問題を解決しようとしないと、その能力自体が失われていき、ますます公的な負担が増えていきます。

しかし、行き過ぎた自助もやはり問題です。自分さえよければいい、人のことはどうでもいい、と言う考え方の人が増えてしまった社会は殺伐として住みづらくなってしまいます。

また、「自助論」には、実は2つの翻訳が存在します。明治時代に翻訳された「西国立志編」と、抄訳の「自助論」です。新しい本は意図的に翻訳をしていない部分があります。それは、自分の身を助けるための努力である「自助」が、人々のために役立てられ、そうした人たちがお互いに支え合って「共助」になることが本質なのであって、「自助」は個人の立身出世のためではないと釘が刺されている部分です。

また、当初この本の対象は「医者」や「芸術家」「技術者」でした。確かに彼らが自分のために努力を積み上げて彼ら自身のスキルを磨けば、それはお客さんにとってより質の高いサポートを受けられて良いことです。さらにその努力が後世の発展になるわけです。しかし、抄訳の「自助論」では読者想定が「経営者」になっており、当初の本の理念とはかけ離れたものになっています。

日本では小泉純一郎や、竹中平蔵が自己啓発を広めましたが、その昔はイギリスの首相、サッチャーがこの本を評価しました。その共通点は「新自由主義」的政策を打ち出していることです。

国が傾いて不安定になると公助を維持することができなくなり、国民に対して自己責任で身を守ることを要請します。

さらに、さまざまな公的セクターを市場に開放し、税金ではなく営利企業によって運営させます。例えば、国鉄はJRに、日本電信電話はNTTへと民営化されました。こうして市場に解放する方が国の運営の負担が減り、競争によってより安いコストで効率的に同じサービスを提供できるからです。

その問題点とは何でしょうか?まさに、国営機関であった郵政が民営化されたことが良い例です。その結果として、最近ニュースにもあったように、土日は速達を廃止するようなサービスの質の低下が起こります。なぜなら、サービスを必要とする人がいたとしても、事業として成り立たなければその事業は閉めなければいけないし、より高い収益性を確保するためにサービスの価格を引き上げたり、サービスの質を悪くして原価を抑えるといったことが起きるからです。

そのような競争が加速されると、今までお互いに支え合って豊かに成り立っていた社会が、激しい競争に晒されて、常に努力し続けなくては生きていけないような息苦しい世の中に変わってしまいます。さらに、水道や教育や医療といった、人の生命の維持に欠かせないものまでも、市場に解放され高いお金を払わなければ健やかな人生を維持できなくなってしまいます。

話が脇道に逸れてしまいましたが、本を読むならこの「新自由主義」を理解しているかは、とても重要なポイントです。今社会にある様々な課題の根本の原因はここにあるからです。そこを理解すれば「自己啓発本」も相対化して読むことができるのではないでしょうか?

リベラルアーツと、高い思想を身につけるための読書

本来は、読書をすることで、自分の世界を広げられたり、自分になかった視点を獲得できたり、その体験自体が豊かなものなのです。

そして、先の見えないこの時代だからこそ「読書」は大切なものです。それはモチベーションアップのためではなく、時代を切り開く人間力を養うためです。読書はより高い人間性を身に付けるための手段でもあります。

APU学長の出口さんは、物事は「縦の糸」と「横の糸」、そしてファクトで考えなさいと言っています。縦の糸とは過去と未来の時間の軸です。横の糸は、他の国などの幅広い視点です。

例えば夫婦別姓問題であれば、縦の糸で歴史を振り返って見ると、鎌倉時代、源頼朝の妻は北条政子でしたし、戦国時代の足利義政の妻は日野富子でした。これは特殊なケースではなく、夫婦は別姓が当たり前だったのです。そして、横の糸で世界を見渡してみると、世界的にはほとんどが夫婦別姓であり、夫婦同姓は日本くらいなのです。縦の糸と横の糸で考えれば、夫婦同姓であることの方が歴史が浅く、世界的にもスタンダードではないことがわかります。

このように自分の中に「正しい」ファクトに基づいた「縦の糸」と「横の糸」を構築し、物事への判断の軸を作ることが「リベラルアーツ」であり、読書はその一助になるのです。

ここで大切なのは「正しい」ファクトと、自分にとって都合が悪くても様々角度からのものの見方を身につけることです。決して偏った主張である、韓国や中国が日本をダメにしているだとか、トランプが選挙で落とされたのは陰で世界を牛耳るディープステートの陰謀だ、などの自分を癒す情報をむさぼることではないのです。

以下の動画は大変おもしろいので、おすすめします。

リベラルアーツを学ぶための良コンテンツ

古典ラジオは本ではありませんが、ぜひおすすめしたいコンテンツです。膨大な歴史のお話を、わかりやすく楽しく学べます。運転中や、家事をしながら聞いてみると良いでしょう。

自己啓発本や実用書がHow toを教えるものであるとすれば、思想書はWhyを考えるものです。Whyを考えて自分の中に正しい方角を見つけられなければ、いくらHow toを身につけても意味がありません。慌てて駅に駆け込んで、快速に乗って早いスピードで移動しているけど、目的地と反対に向かっていたということがないように、正しいWhyを見つける必要があります。

Newspicksの「思想をRethinkせよ」は大変良い道案内になるでしょう。自己啓発本をたくさん読むことも、この動画の中で述べられている「不安」を埋め合わせための「無意味な反復行為」のひとつと言えます。その「不安」の原因とは何なのでしょうか…?


そのほかにも自己啓発本ばかり読んでいる人が、次のステップとして読むと、とてもおもしろい読書体験ができそうな本をピックアップしてみました。思想書やより深い知的探究への、入り口になるのではないかと思います。

さらにもう少しステップアップしてきたら、岩波新書や中公新書に手を出していくと良いでしょう。以下のツイートで紹介されているような本は、面白くはないですが(笑)、よい勉強になります。

ブックオフ新書100冊チャレンジもおすすめ

自分の中の思想レベルを上げていくにはとにかく色々なタイプの本を大量に読んでみるのがよいでしょう。ムダかもしれませんが、しばらく量をこなすとだんだん良い本と悪い本が見抜けるようになります。

これは人に教えてもらった方法ですが、1~2万円を持ってブックオフに行きましょう。そして新書コーナーに行って100冊選んで買いましょう。安い本なら110円、ちょっといい本なら400円くらいで買えます。とにかく100冊買ったら本棚に並べます。これだけでちょっと読んだ気になります。

それから毎日この本棚の前で過ごします。するとある時疑問が湧いたり知りたいと思うことができると、この本棚を毎日眺めているので読むべき本がわかります。そしたら、その本を1冊とって電車移動などの隙に読むのです。これを継続するだけでかなりの読書家になれますから、おすすめの方法です。

読書は自己投資

私は読書は自己投資の一つだと考えています。本はわずか数千円で、著者の膨大な時間をかけて学んだことと経験が手に入り、そこから得られるリターンは何倍にもなります。ですから、月に3万円くらいは書籍購入費に当てており、人に教えてもらった本は無条件にAmazonでポチるようにしています。

私は小説はあまり読まないのですが、本当は小説も読んだ方が良いですね。人の気持ちがわかるようになるにはとても良いものです、特に人を束ねるリーダーには、相手の気持ちがわかることが大切です。

もちろん、読書は何かに役立つだけではありません。読書それ自体がエンターテイメントであり、読んで新しい世界を知れること、それ自体が楽しいものでもあります。

皆さんも一緒に読書をして、より豊かな人生を過ごしていきましょう。

追記 2021/10/04 : サミュエルスマイルズの書いた本は「7つの習慣」ではなく、「自助論」の間違いでした。本の名前を修正しました。

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