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「うんうんうんうん」という相槌 【相槌の研究】

相槌というのは、相手との関係性によって使い分ける必要がある。

相手が目上なのか、対等なのか、目下なのか。

相手が目上であれば、「はい」や「ええ」などが適当だろう。

A「予算を増やしたいと思っていまして、」
B「ええ、ええ。」

「はい」とか「ええ」という相槌は、ほとんど誰に使っても非礼にあたらないから便利だ。

相手がほとんど誰でも───上司でも、顧客でも、社長でも───たぶん問題ないだろう。

他方で、目下に対する相槌については、ほとんどなんでもOKだろう。
どんな相槌を打っても、そんなに無礼にあたるようなことはないはずだ。

だからあまり気を遣う必要はないだろう。

***

ところで、グレーな相槌というのもある。
「うんうんうん」というタイプの相槌だ。

「うん」「うんうん」「うんうんうんうん」
など、いくつかバリエーションがある。

これらを「うん系統」の相槌と名付けてみたい。

この「うん系統」の相槌は一般的には対等もしくは目下の相手に対して使うものだと思う。

だが、目上の人に対して使われているシーンも良く見かける。

「予算を増やしたいと思っていまして、」
「うん、うん」

この「うん系統」の相槌は、うまく使えばフランクさが演出できて、相手との距離を適度に縮めることもできる。

また、友人と話す時のような一番自然な形の相槌だろうから、リラックスしてコミュニケーションができる。

ビジネスでも、単に丁寧なだけではなくて、時には思ったことを素直に言えるような、良い意味で気を遣わないようなコミュニケーションが理想であるはずだ。

だから、「うん系統」の相槌をうまく使って、コミュニケーションをデザインすることは重要だと思う。

***

だが、この「うん系統」の相槌は難しさもある。

例えば、はっきりと発音すると、途端に「タメ口」感が強くなるのだ。

A「予算を増やしたいと思っていまして、」
B「うん!」

A「・・・・・・(この人、「タメ口使ってないか・・・?)」

だから、ポイントは「うん」とはっきり発音するのではなく、

「ぅん、ぅん」
「ぅん、ぅん、ぅん」
「んん~、ぅん」

という感じで、はっきり発音するのではなく、「んん」との中間くらいの音を喉から出すなど、「言い方、声の調子、演技力」でうまくアレンジすることが必要だ。

大事なのは、「熱心に話を聞いているがゆえに、『素』になってしまっている」感を出すことだ。

そうすれば、むしろちゃんと聞いてくれている感が出るし、コミュニケーションも固くならずにスムースになる。

また、「うん系統」の相槌は、使い過ぎも注意だ。

あんまりたくさん、そしてはっきりと「うん系統」を使いすぎると、タメ口の確信犯っぽくなるからだ。

A「うんうんうん。うん!」
B「・・・・・・(あれ!やっぱこの人タメ口使ってきてる!)」

と思われてしまうだろう。

だから、相槌の配球が大事になってくる。
内角を攻めるのは有効だが、攻め過ぎるとデッドボール、下手をすると乱闘に発展することになる。

「うん」の質と量をうまくアレンジすることが重要だ。

***

「うん系統」と似たタイプの相槌に「そう」というタイプの相槌もある。

「そうそうそうそう」

これも一般的には対等もしくは目下の相手に使う相槌だと思う。

だが、これも時にお客様など目上の方へ使うことがあると思う。

話が盛り上がって来た時とか、瞬発的なリアクションにおいてだ。

「そうそうそうそう!」

あるいは、

「そそそそそそそ!」

など。

これもポイントは「咄嗟に出た、心からのリアクション感」を出すことだ。

「私もそう思っていたんですよ!よくぞ、仰ってくださいました!」感を出すことだ。
そうすれば、感情がこもっていることを表現できる。

ただし、相手が社長とか、結構な目上で「さすがにタメ口はまずいだろ感」がある時は、フォローを入れることも大事だ。

そうそうそうそう!のあとに、

「そうなんですよ~。」
とちゃんと敬語を添える。

「そうそうそうそう! そうなんですよ~。」

このように敬語を添えておけば、

「あ、あくまで敬語を使うスタンスだけど、いまの『そうそうそうそう!』は、咄嗟に出た感じのやつね。」

と受け止めて貰えるはずだ。

***

オーラルコミュニケーションの半分くらいは、聞くパートである。

それにうまく聞くことはひょっとすると、話すことより重要かもしれない。

しかし、いまいち聞く技術についてはスポットライトが当たっていない気がする。

そして聞く技術の中でも、とりわけ相槌の技術については学校で教わらなかったし、誰も教えてくれないから独学するしかない。

今後も色んな人の相槌を観察・研究し、うまく相槌を打ちながら聞ける人を目指したい。

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