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決意のペン



【この企画・作品について】

5人の作者さんと一緒にリレー形式で
《1つの作品》を作りました。
作者の方たちは誰と一緒に作っているのか内緒にしたまま物語を紡いでいただきました。

任務として
①写真をイメージして物語を作る
②誰かがタイトルを決める
③指定ワード[違うと思う]を誰かが入れる
というものがありました。

こちらには作者さんの名前入り台本を置かせていただきます。

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《セリフ説明》
ア:アオイ(ボク/僕)
フ:フジオカ未来(みらい/ミク)
大:大地
お:おじいちゃん

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【いるか太郎】

大「おい!早く行こうぜ」
ア「まだ、まってぇ」
フ「ワタシ、当番だから先に行ってて」
大「分かった。アオイ!靴箱で待ってるから早く来いよー」
ア「うん。」

ボクは急がないとと思いつつ、少しゆっくり仕度をする。

フ「今日の3行日記どうしようかなー」
横目で、頬にえんぴつをあてているフジオカさんをみていた。
フジオカさんは、少し考えた後スラスラと日記を書き、窓を閉め始めた。

ボクも仕度が終わり
ア「こっち側の窓閉めておくね」
フ「え、ありがと」
ア「じゃ、公園でね」
フ「うん、あとでねー」
これぐらいしかボクには勇気がない。

ガラガラガラ。
ア「はぁ」
僕は小さく、ため息をついて待っている友達のところに向かった。


【②ぐぅ】

卒業まで1カ月きったかー。
誰か僕に勇気の出し方を教えてくれー。

大「おっせぇーなー。アオイ!」
ア「ごめんごめん。行こっ公園」

この元気で、せわしいのは大地(ダイチ)
僕と大地とフジオカさんは、幼少期からの腐れ縁。
3人で卒業式の後のお別れ会
の幹事を買って出て、放課後に学校の近くの公園で話し合うのが最近の日課。

大「よーいっしょっと」
ア「絶対にイルカだよね」
大「お前はアヒル。ミクはリス。昔からだもんなー」

ミク、というのはフジオカさんの事。
未来(みらい)が本当の名前なんだけど
大地は、ずっとミクと呼んでいる。
そして、僕は、ずっと、フジオカさん…。

ア「遅くない?フジオカさん。大丈夫かな。」
大「ミクは可愛いし性格もいいから、誰かに呼ばれて、告白でもされてんじゃないのー。」
ア『違うと思う!』

本当にそう思ったのか、ただの願望だったのか、自分への悔しさだったのか。
少し感情的に否定をした自分に恥ずかしくなり、スプリング遊具を強めにこぎだした。


【③よっしいも】

ホントはフジオカさんの隣のイルカが良かったのになー。一人だけちょっと遠い感じだったし。何だか悲しくなってきた。でもそう言うと、長い付き合いのアヒルが悲しむかな。ごめん、アヒル。お前はまっすぐ前を見て意志が強そうだな。うらやましいよ。僕を助けてくれ、アヒル!
 
大「どしたアオイ?難しい顔して?お腹でも痛いのか?」
ア「痛くないよ!ちょっとね!」
大「何だよ怪しいな。」
ア「ねぇ、大地は何か人に相談したいことってある?」
大「あんまりないな。」
ア「じゃあ夢とか希望とかはどう?」
大「世界を回ってみたいな。体力には自信あるし、楽しそうじゃん。とにかく何かあったら、何でも俺に相談しろよな。」
ア「分かった。ありがとう!」
 
大地、お前はいい奴だ。でもお前にこれは相談できないぞ。もしそうしたらとんでもないことになるからな。そもそもフジオカさんは、僕のことどう思っているのかな?それ考えるとあきらめる気持ちがでてきちゃう。うーー。
 
ア「大地さ、フジオカさんの3行日記って何書いてるんだろうな?」
大「分かんないよ。天気とかじゃない?日記なんだからその日の出来事じゃん。気になるの?」
ア「いや自分は日記書かないから、どうなのかなって思っただけ。」
大「アオイも書けばいいじゃん。」
ア「そうだな。」
 
僕も日記を書けば、フジオカさんとの会話のきっかけになるかもしれないし。あー書いたら現実になるペンなんかあれば最高なんだけどな!
 
フ「お待たせ!」
大「遅いじゃんか!」
ア「何かあったの?」
フ「先生につかまっちゃってね。お別れ会のことで色々聞かれちゃった。」
大「先生にあんまり教えてないもんな。楽しい会にしようぜ!」
ア「もちろん!」
フ「ちょっとしたサプライズもわくわくする!」
 
話が盛り上がってしまい、かなり時間がたったので、ここら辺で解散にしよう。
 
大「またな。」
ア「気をつけてね。」
フ「ばいばーい。」
 
家に帰る前に、本屋に寄ろう。勇気が出る本なんてあるのかな?特別なおまじないとか無いかな?そうだ神社にも寄ってお願いして帰ろう。何だか神頼みになってきたな。


【④シダ】

ア「あれ?なんだかこの感じ前にもあったような気がするな。」

おまじないの本を探すために本屋さんに行く。

でも、確かないんだよ。ピンとくる本はない。
そして本屋さんを出る時季節外れのニット帽を被ったおじいちゃんとすれ違う。

ほら、そうなった。

次は?確か、神社へと続く道の途中でちょうちょが目の前を横切る。やっぱり。

なんで僕は知っているんだろう。

風が大きく舞い上がり木々の音が響き渡る。視線を上げると神社に到着していたことに気づいた。


【⑤生野大輔】

ガシャン(照明がONになるの音)
神社の影からさっきのおじいちゃんが出てきた。
ニット帽のマークにはアヒルが描かれていた。
スポットライトが僕とおじいちゃんだけに当たっている。

(著作権がokなら「カノン」を流す)
お「どうだったかね、放課後に2人きりになったかね?」
ア「なりましたが、何も変わりませんでした」
お「そうだな。たった1回、過去の決断を変えたってぇ現実が変わるわけではない。」
お「お前は、フジオカ未来の最後の恋人になりたいと思っている。現実を変えるために過去にタイムスリップしたが、何も変えられなかった。」
お「さぁ、次に変える決断をこのペンで書きなさい!」
ア「いいよ。書いたって何も変わらなかったじゃん!」
お「お前はノートに『フジオカさんと放課後に2人きりになる』と書いたぞ。叶ってるではないか。」
ア「そうだけど、何も変わらない」
お「現実は変わらない、けど変わっていくことはお前の中にあるんじゃないか?」
お「さぁ、書きな!」

僕はしぶしぶ、ノートに「フジオカさんと会話を続ける」と書いた。

お「俺はひとつだけ叶えてやる。何を変えるかはお前次第だ。」

(「カノン」終了)
ガシャン(照明がOFFになる音)
スポットライトが消えた。

ちょうちょが目の前を横切る。

風が大きく舞い上がり木々の音が響き渡る。視線を上げると授業終わりの学校にいることに気がついた。

大「おい!早く行こうぜ」