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【ハーブ天然ものがたり】乳香樹/フランキンセンス


共生を祈ります


「フランクに話そう」というと、気楽にハラわって話そうよと言ってくれてるんだな、と思います。

フランキンセンスの語源はフランク(本物の、真の)、インセンス(香り、薫香)からきています。
乳香にゅうこうは木の樹液で、主にカンラン科ボスウェリア属の木から採油します。
精油界のBOSSと呼ばれる乳香、学名のボスウェリアはボスつながりで覚えました。

精油となるボスウェリア属は約5種類ほどで、アラビア半島南部、ソマリア、エチオピア、ケニア、エジプトなどアフリカ大陸に自生する希少な樹木です。
香りや質は、産地・種によって微妙にちがいます。

伝統的な採油方法は、幹をうすく削いで表面からにじみ出た小指の先ほどの塊を採集します。
樹液はかたまると乳白色になるので乳香と呼ばれます。
表題写真は20年以上むかしに頂いたものですが、鼻を寄せるといまでも呼吸器にサァッと一陣の風を吹かせるような、ほんのり甘さの混じった樹の香りを運んでくれます。

樹液、樹脂は木にとってかさぶたのような役割をもっており、傷を保護して治癒するためのものです。
ヒトのからだで考えると、採血を年に100回も200回もされたら参ってしまいます。
1本の木に切り込みを入れるのは、年に12回までというガイドラインもあるそうですが、かなり辺鄙な場所に自生する樹々もあり、管理も一筋縄ではいかないようです。
乳香樹は絶滅が危惧されており、現在はフランキンセンスを守る運動も盛り上がりつつあります。

乳香の木は気温が15度以下になるエリアでは育たないそうで、むかしから自生地の特別な貿易品目となっています。
同じ重さの金と取引されたこともあるほど、貴重なものでした。
増やすのがむずかしいとされる乳香の木。
ウィキペディアには「最近の研究で今後50年で約90%減少すると予想されており、持続は不可能と考えられている」という一文がありました。

乳香樹 photolibrary


化粧は自然療法、装飾は魔除け


乳香は古代エジプト時代にミイラの防腐剤として、また神に捧げる薫香として使用されてきました。
キフィ(聖なる煙)という、複数の香り植物から調合された香料は特別なもので日の入に焚かれます。
没薬/ミルラの記事でもご紹介済みですが、

日の出に乳香
正午に没薬
日没にはキフィが焚かれたといいます。

乳香は太陽神ラーの汗であり、その香りある煙は太陽神ラーとともにあることを示し、没薬は太陽神ラーの涙、キフィは瞑想のために焚くものでした。


日の入の刻になると街中にキフィの薫香が漂い、瞑想と祈りが捧げられます。
古代エジプト時代にはあたりまえだった夢見世界と現世うつしよの、2重生活を彷彿とさせるキフィ習慣とは、いったいどんな暮らしぶりだったのだろうと、想像するだけで呼吸が深まります。

キフィのレシピで開示されている有名なものとしては、BC3400年以前の文章を書き写したと考えられているパピルスで、最古の医学書と言われている Ebers Papyrus(エーベルス・パピルス)に記されたもの。
もうひとつはエドフ神殿の壁画に記されているものです。
ハトホル女神とホルス神に捧げられたエドフ神殿は、年に一度ハトホルがエドフのホルスを訪ね、聖なる結婚を示す神殿と信じられてきた場所です。

その他にも古代エジプト神官がのこしたレシピや、歴代のエジプト王たちが使っていたとされるレシピなどがのこされています。

キフィの代表的レシピの一例
・乳香(フランキンセンス)
・没薬(ミルラ)
・ミント
・レモングラス
・アカシア
・レーズン
・ヘンナ
・ジュニパー
・ピスタチオ
・カシア桂皮
・シナモン
・松脂
・オレンジ
・ローズ
・蜂蜜
・ワイン

キフィを焚いた後の灰(スス)は皮膚に塗って化粧品や虫よけ、薬としても使われていました。
アイシャドウのはじまりは古代エジプト人といわれていますが、太陽光から目をまもり、魔除け・虫よけ・抗菌目的で目のまわりをキフィや乳香のススでふちどっていたといいます。

古代エジプト人の化粧はとどのつまり自然療法みたいなもので、寝ているときも水を求める虫たちから目を守る必要があったので、アイライナー的なものを落とすことなく眠っていたという記述を読んだことがあります。(出典忘失しました)

アイライナー的なものはコフと呼ばれ殺菌作用を重視するものでした。
代表的な作り方として、没薬、乳香を焚いて微細なススにして、粘性の強い植物油に混ぜるレシピがのこされています。
壁画や美術品にあるとおり、女性も男性もアイライナー的なものをばっちり引いて、肉体をまもっていたと考えられます。

青や赤などの色物には、主に鉱石を砕いて混ぜたものが使われたそうです。
悪意がこもった視線が目鼻口耳など、からだの穴から侵入してくると、そのエネルギーによって病気や死を招くと信じられており、悪い視線を受けてもはね返せるように色と鉱物の加護でまもっていた説があります。
目にはシャドウ、くちびるに紅、耳鼻にピアスは護符だったんですね。

動物(頭)の神々が君臨していた古代エジプト時代、物質性がいまの時代ほど固定化しておらず、魂も自在に脱魂していろんな生命種に出入りできたと想定するなら、ちょっとした視線ですぐに土元素にほころびが生じて、悪影響を受けてしまうのが常態だったのかもしれません。
肉体という固形物をまもるために、いろいろな工夫が必要だったのかな、と。
キフィは魔よけとして、歴代ファラオ達の寝室でも焚かれていたといいます。


BOSS


新約聖書のイエス・キリスト誕生時、その御印を空に見た東方の3賢人がうまやを訪ね、黄金と乳香と没薬を贈り物としてささげたというお話もいまでは有名になりました。

乳香は旧約聖書にもたくさん登場します。
シバの女王が古代イスラエルのソロモン王(BC約970年ころ)へ黄金、宝石、白檀びゃくだんと乳香を贈ったと記載があります。
シバの女王もソロモン王の宮殿も、学術的に証明できるか否か、みたいな論争はさておき、象徴としてなにを後世に伝えたかったのだろう?と想像してみます。

ソロモン王は知恵者のシンボル。
子供のことで争う2人の女に賢明な判断を示した逸話が世界に伝わり、日本でも大岡裁きの話に取り込まれたといいます。
神から授かった知恵は指輪という形になり、多くの悪魔を使役し、指輪をはめることで動物や植物と会話できたとか。

シバの女王はソロモンの知恵の噂を伝え聞いてソロモン王を訪問し、数々の質問をなげかけます。
すべてを回答したソロモンに女王は感嘆し、香料や宝石を贈って
「あなたの民は幸福です。あなたの僕や友人方も同様です。毎日あなたに拝謁し、あなたの知恵に絶えず耳を傾けることができます」と伝えました。

シバの女王がソロモン王を訪問するシーンは、映画や音楽、絵画のテーマとしてたくさん使われているので、一度は目や耳にしたことがあると思います。
ロマンチックな演出で、あくまでも男女間の愛こそすべて、みたいな仕上りになっているものが多いですが、個人的にはウィキにある記述
「シバの女王がドレスの裾をたくしあげた時、毛深い脚があらわになった」
という一文に興味を引かれました。

この物語は新旧の神々の交代劇を象徴しており、シバの女王は下半身ヤギの牧神、つまり古い神々のひとりだったのではないかな、と考えています。
たとえばギリシャ神話で、幼いゼウスに乳を与えて育てた雌の山羊精霊アマルテア(あるいはその分身とか)。
女神アルテミスの前身と思しき、山の獣たちを統べる知識の保持者、地母神キュベレ(あるいはその分身とか)。

ソロモン王の在位は(BC971 - BC931年ころ)とされていますから、時代背景的にも人間万歳!人型サイコー時代へ突入するあたりの出来事だったんじゃないかと。
(*人型サイコー!についての所感はフェンネルの記事に綴っていますので、ご興味ありましたらゼヒ♡)

古い神々代表シバの女王。
新時代を担うに相応しいものか、試験を受けるソロモン王。

シバの女王はソロモン王を、人型サイコー時代を担う人間界のBOSSと認めて黄金、宝石、白檀びゃくだんや乳香を贈ったとするなら、乳香と白檀が過去3000年のあいだ植物界のBOSSよ王よと崇められてきたのもうなずけます。

シバの女王のお墨付きを得て、新しい神々に授かった知恵を地上世界に降ろすパイプ役となったソロモン王は、古代イスラエルの最盛期を築いた王として称えられますが、堕落した王としての最期も伝承されています。
人型サイコー時代はソロモン王の人生をひな形として、BOSSたるものの栄華盛衰リファレンスがセットされ、大小さまざまなドラマを生み出してきたように思います。

ソロモン王の時代からおよそ3000年という月日が流れ、BOSSという概念は時代とともに変化し、日本では親分、親方、顔役、といった名称と同義語になりつつあり、なんとなく時代遅れな印象もつきまといます。

国際自然保護連合の、準絶滅危惧種リスト入りしてしまった精油界の「BOSS」と呼ばれる乳香しかり、さらに絶滅が危惧される「旦那」の語源となった白檀しかり、ソロモンひな型に関わる2つの聖樹は、そう遠くない未来に地球から姿を消してしまうかもしれません。

「フランクにいこう」と語りかけることができるBOSSは、ほんとうに実力があるので、膝を折って、腹を割って、関係性を築いていくなかで、情も、知性も、道徳心も、尊敬の念も育まれる。
そんな時代もあったねと、しみじみひとりごちる反面、次なる時代に突入していると思われる現代、つまり人型サイコーの次はどんな神々がお出ましになって、どんな時代設定となるのか、好奇心はとどまるところを知らず、膨れあがってもおりまする。

☆☆☆

お読みくださりありがとうございました。
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ほんとうにうれしく思っています

note 記事まとめに【ハーブ天然ものがたり】アネモネを掲載して頂きました。
皆様のご訪問のおかげと心より感謝申し上げます。


クリエイターが設定するマガジン機能は自分以外の記事もピックアップできるようで(ちゃんと理解するのに時間がかかりました;)、そちらにも多々ご掲載頂いており深く感謝申し上げます。
御礼をかねましてご紹介させて頂きますが、万が一掲載がご迷惑の場合、遠慮なくご一報くださればすぐに対応いたします。
ほんとうにうれしく思っています。ありがとうございます。

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