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72候【花鳥風月】雨水の候


木の芽起こして山笑う、野点のだてさながらピクニック


雪どけ水や春の雨に潤された地面の下で、種や根がうごめきはじめるころは、ヒトのからだも解氷される季節です。
冬のあいだ、寒さから身を守るためにため込んでいた脂肪は、陽気がふえるとともに必要なくなり、からだのなかでは肝臓が自浄活動に大忙し。
不要物となった脂肪を捨てるため、春にむかっていっそう活発にはたらくといわれています。

この時期とりこまれる余分な脂肪などは、肝臓の許容量を超えると皮膚から排泄されるので粘膜の毛細血管が炎症を起こしやすくなり、春は花粉症やアレルギー症状がひどくなったり、吹出物やおできができやすくなったりすることもあるとか。

また寒さから身をまもるために緊張していたからだは、冬のあいだ肩甲骨を上げて肩をすくめる姿勢になりやすく、肩回りをリラックスさせることも大切で、肩が上がったままの姿勢で春を迎えるとアレルギー症状が悪化するという説もあります。

ボディワーカーの仲間内では春になるとトリートメントに肩回りのストレッチを多めに加えるのは共通認識でした。
知人友人に腋下やデコルテをていねいにほぐすプログラムをお勧めすると、鼻炎が緩和したとかアレルギーがいつもよりひどくならなかったなどのフィードバックを頂くことも多かったです。


自然界では草木が吸い上げる水も勢いを増し、循環リズムが匂いや質感など立体的な感覚となって五感を刺激します。
世界は春の音や色、香りに満ちて、ひと雨ごとに暖かくなり、冬のあいだクッションのようにまもってくれた脂肪などの排泄を促し、山から雪どけ水が流れるごとく、からだの循環力も高まります。

陽気が増して滋養たっぷりの春雨が降り、大地に潤いがもどってくると、水の精霊たちは春かすみとなって大気に充満するようになります。
水の比率が多くなったら循環パイプの出番です。
めぐりをよくしてどんどん動かし、春のリズムに同期をとって新陳代謝を高めます。

お山も笑う春のころ、四大精霊たちの春のダンスは自然界のあちこちではじまっています。
陽気のいい日にピクニックやキャンプに出かけて、大地に足をのばして座ったり、寝っころがったりするだけで、自然界や四大精霊たちとのリズム合わせ、チューニングができるような気がします。

地球の血流、大海に思いを馳せる春の朝

からだひとつで自然と対峙する心地よさを、いまさらあれこれ綴るのも野暮ったいことですね。
春雨の香りや音に耳を澄ませたり、海辺や川べりで地球をめぐる水に思いを馳せる。

春分まえにリズムを合わせて、地球といっしょに新しい一年のスタートを切れるよう、からだと自然界との同期をとるのは毎春の恒例行事です。
地球の循環システムに溶け込んでしまうような気持ちで精神を解放し、水、風、光、草いきれ、地球の鼓動を感じられる「いさぎよき所(清々しい場所)」を探しに、小さな旅に出かけるのは春のお楽しみのひとつになっています。


雨水の候、今年は2月19日から。

土脉潤起つちのしょううるおいおこる-雪は春雨になり大地が潤い寒さがゆるむころ
霞始靆かすみはじめてたなびく-霞がかかり山野に趣が加わるころ
草木萠動そうもくめばえいずる-草木が色づく芽吹きのころ


ビールをもたらした神々


地球の水は、大気から海底、地下水も含めてダイナミックに流動しています。
早朝の春霞はるがすみ、宵闇の朧月おぼろづき、大きな水が循環しはじめることを予感させる雨水の候は、水の精霊たちが大気に充満して合図を運んできます。

地上における水精霊の主神といえば海の神々。
北欧神話の海神エーギルは、海のような大釜で大量のビールをつくると伝承されてきました。

ウィキペディア-エール(ビール)
北欧神話、エーギルとラーン
9人の娘たちが大きな鍋でミードやエールを醸造する

アイスランドの詩人で政治家、歴史著述家でもあったスノッリ・ストゥルルソン(1178年-1241年)が著した「スノッリのエッダ」には、海神エーギルの従者を殺して追い出されたロキが、最高神オーディンに対して「私とお前は血を混ぜて、ビールを味わうときは二人一緒だと誓ったではないか」といい、オーディンに許しを迫るお話が収載されています。

ロキ神は「お前と俺とは血のさかずきを交わした仲だろう」的なことをいっているのかな、と。
ビール(麦)であれ日本酒(米)であれ穀物からできたお酒は、血を代用するもので、海神エーギルが醸造していたんなら、海水エッセンスも必須成分だったのでしょうし、海と血と酒は同じエッセンスが土台になっているのかもしれません。


エジプト神話ではオシリス神がビールを発見し、女神イシスによって人類に普及、女神ハトホルがビール醸造のプロセスを発明した、というように役割分担が明確です。

太陽神ラーが地上にビールを大量にぶちまけて、地表が鏡のように光輝き、ハトホル神はビールをたらふく味わい酩酊したという神話もあります。
酩酊するという単語にはネガティブな意味合いもくっついてしまっているので、いい方を変えてみます。

血液はふだん、からだのなかにきっちり収まっているものですが、そこにアルコールが混ざることで海エッセンスとつながって大海の雄大さを思い出し、自我の境界線を広げることができる、ということでもあるのだろうと。

女神ハトホルは地球に降り注いだビールを飲むことで、地球をつつみこむ大海に霊我を広げることができました、ということをエジプト神話は伝えているのかなと妄想しています。
ガイアと血のさかずきを交わしたってことなんじゃないかと。


発酵をたすけるハーブ


ビールには独特の苦みと香りがありますが、それは麦汁だけのものではなく、ホップの役割が大きいのは周知のこととなりました。
学名 Humulus lupulus 、アサ科(少し前までクワ科でした)のつる性植物で、和名は西洋唐花草セイヨウカラハナソウです。

ホップの毬花まりばな 受粉まえの雌花の果穂がビール製造に使用されます


ホップは雌雄異株の植物で、ビール用の原料は雌株の果穂から得られます。
受粉して種子ができると香りや苦味が損なわれるので、受粉前のものを使用します。
ヒトにたとえるならこの世に生を受けてはじめて開花した少女のような段階といえます。

純粋な開花のよろこび、いのちの美しさ、いさぎよく愛を受容する清々しさ。だれのなかにもある清純成分を目いっぱい表現し、その比率が多い状態ともいえるでしょう。
(成分の比率、発達段階についての所感です、清純成分多めについて甘いとかぬるいとか「善し悪し議論」に発展させることはご容赦ください)

清純成分を具体化すると、身もふたもないような感じになっちゃいますが、ビールの発酵をたすけて純化させるのは、果穂に入っている黄色いつぶつぶで、香りと苦味があります。
苦味成分の α 酸はビールの泡をつくるのに重要な役割をもち、雑菌の繁殖を抑えて保存性を高めます。

ホップは精油成分が多いアロマホップと、苦み成分の多いビターホップに大きく二分され、ビール造りに工夫がされているそうです。
ホップといえばドイツ、みたいな傾向がありますが、最近では国産ホップを使ったビールも市場に出まわるようになりました。

黒海とカスピ海に挟まれた地域が原産と考えられており、野生種はヨーロッパからシベリアにかけて分布しています。
北海道に自生する山ホップ・唐花草からはなそうは、西洋唐花草せいようからはなそうの近縁種です。

「雌花の小苞ならびに萼(うてな)には黄色の細腺粒が付着し、佳香を放ち、味にがく、その点、母種のホップ、すなわちセイヨウカラハナソウと異ならず」と、牧野博士の『日本植物図鑑』に記されています。

ビール酒造組合「ビールの豆知識」


ホップが使用されるまえの中世のころは、ビールといえばハーブやスパイスで風味づけしたグルートと呼ばれるビールが主流でした。

グルート(Gruit)は、ホップが使用される以前にビール、エールを醸造する際の味付け、香り付け、腐敗防止のために用いられていた薬草などを独自に配合したもの。原料や配合、製造法は秘密とされており、文献などにはほとんど残されていない。

グルートの製造は領主、修道院や都市などが独占しており、ビール(エール)の醸造業者に販売することで利益を上げていた。

グルートに使用されているハーブには以下のようなものがあると推測されるが、その分量や配合比率は上述のように文献に残されておらず、詳細は不明である。

・ヤチヤナギ(ヤマモモ科の低木で湿原を好んで自生する)
・アニス(セリ科、アニスシードの流通はポピュラーです)
・コリアンダー(セリ科、地上部はパクチー、種子はコリアンダーシード)
・フェンネル(下記リンク「フェンネル」ご参照下さい)
・セイヨウノコギリソウ(下記リンク「ヤロウ」ご参照ください)

*()内は補足した内容です。

ウィキペディア-グルート


8世紀のヨーロッパ修道院でホップの栽培がはじまり、12世紀になるとドイツのベネディクト会系女子修道院長であり神秘家、作曲家、ドイツ薬草学の祖ともいわれるヒルデガルト・フォン・ビンゲンが、自身の修道院でグルートの代わりにホップを用いてビールを醸造したとその著書に記しています。

ホップを入れて麦汁を煮るとビールが腐りにくく長持ちすることがわかり、さらにホップの爽快な香りと苦味が高く評価されて、だんだんとホップの栽培が普及してゆきます。

ビールについてはグルートを使用したものより、ホップを用いたビールのほうが味、耐久性が優れていたことから、15世紀以降はホップ使用のビールが中心となっていったそうです。
イギリスにホップでつくられたビールが輸入されると、グルートでつくったものをエール、ホップでつくったものをビールと区別しました。


ハーブ(薬草)としてのホップは健胃、鎮静効果があるといわれています。
夏の開花直後に花を摘み、乾燥して使用します。
神経に穏やかに作用して緊張や不安をやわらげるので、不眠や抗ストレス、消化促進、神経性の便秘や下痢などに効果があるとされ、皮膚の傷や膀胱炎などにも利用されてきました。
体内のめぐりを促すことで利尿作用、毒素排出、肝臓の浄化作用を早めると考えられています。

乾燥したホップの花でつくるハーブピローは、おだやかな入眠作用があるとして有名になりました。
飲用できるホップ・ハーブティも市販されていますが、独特な苦みがあるので人気があるとはいえません。

ヨーロッパで民間薬として用いられてきた歴史も含めて、現代では成分の解析も進み、ホップに含まれるエストロゲン様物質が更年期障害の改善につながることがわかってきました。
ポリフェノールの一種であるホップフラボノールには、花粉症を軽減する効果が期待されています。


ビールは死の治療薬だった!?


アルコール(お酒)は先史時代から存在し、中枢神経に作用して精神を広げ、解放するものとして重用されてきました。
最古のお酒といわれる蜂蜜酒(ミード)は、およそ1万4千年前に熊などに荒らされた蜂の巣に溜まっている雨水だったといわれています。

古代エジプト世界ではワインとビールが広く愛飲され、ピラミッド工事の人工にんくには栄養補給を兼ねてビールが支給されていたといいます。
「ピラミッドはビールによって建造された」と称されることもあるとか。

ウィキペディア-メンフィスとその墓地遺跡
ギザの大スフィンクスとカフラー王のピラミッド

エジプトにはBC3000年ころ、大麦といっしょにシュメールからビールが伝わったと考えられており、BC2000年ころの壁画にビール醸造や酒宴の様子が描かれたものが発見されています。

世界最古の医学書とされているエーベルス・パピルスには、ビールを薬として処方する内容が約700種記載されており、そのうちにひとつに玉ねぎ半分とビールの泡は「死に対する治療薬」というのがあるそうです。

ビールが死という運命さえ凌駕する薬であったなら、死という概念も現代とはまったく捉え方がちがうものだったのでしょう。

現代では「身体の機能停止」を死と考えていますが、神々とともに暮らしていた古代エジプト人は肉体というより、「魂の機能停止」を死と考えていたのかもしれません。

魂の機能が停止すると、大海とつながるような精神の広がり、解放感、地球との一体感、人類や動植物はもちろん神々との一体感を失ってしまう。
そのことを「死」と考えていたのではないかな、と。


太陽は魚座に入ります


12星座の年周期、さいごの宮が魚座です。
星座のシンボルとなっている2匹の魚は旅の終わりと新しい門出を象徴しています。

逆方向に引きあうのは、双方ともに外側にむかって形を失い、すべてと溶け合って海のなかでまたひとつになることを表しています。

溶け合うというのは腐って解体されることではなく、ホップを用いることによって防腐効果がぐんと高まったビールのように、透明度も風味も底上げされて別のフェイズに移ることと考えています。

楽しい、うれしい、面白い、ありがたい、よろこびで身のうちからわき起こる震えがとまらない(笑いがとまらない)。
活魚のようにとびはねる感情を、人目を気にせず遠慮せず、抑圧も強制もなしにのびのび表現できる環境に身をおくと、身も心もぽかぽか温かくなって、自然とうたったりおどったりがはじまります。
ミクロの世界でも、酵母の発酵はそんな風に進んでいるのではないかな、と。

春のまつりにつきものの酒宴とか、「年に一度の無礼講」という概念は、ほんらい喜びの感情を目いっぱい堪能することが目的だったのではないかと考えています。
それはきっと境界線がゆるむ魚座の時期に設定された、地球ルールのひとつだったのではなかろうか、と。

すべてと混ざる、すべてと溶けあう。
偏見も固定概念も先入観も、一度ぜんぶとっぱらって、大きな潮流(大きな自我)に身をまかせ、「名前や戸籍や社会的地位をもつ自分」という境界線を引いたときに排除したシャドウたちと合流して、ほんらいの自己をとりもどす。
水瓶座の季節に邂逅した、あらゆる存在たちとの情報共有が多いほど、シャドウとの再会もスムーズになると感じています。

つねに流動し、共感力が高く、喜びも悲しみも、すべての感情の機微を自分のことのように感じる魚サインは、ビールの力を借りなくとも24時間ほろ酔い気分で、大海に通じているような性質が特徴です。

「私とお前は血を混ぜて、ビールを味わうときは二人一緒だと誓ったではないか」とのたまうロキ神のごとく、自分以外のものと血のさかずきを交わし、兄弟以上の強いきずなを全方位的に広げます。

1年という区切りごとに、あらゆる経験は潜在意識という海に溶けこみ、ほどけない魔法の結び目によってすべての生命種と共有されてゆきます。
魚座のころは、どこで自分が終わり、どこから他人がはじまるのか、境界線があいまいに感じることも多くなると思いますが、苦味と香りのホップ成分(清純成分)多めの醸造であれば、発酵は悦びや歌や笑いとともに順調に進み、そう簡単に腐ることもなく、透明度高くクリアな喉ごしになって、共有共感も楽しくなると思います。

苦味は肝臓のエネルギーを発散して、はたらきを助けるという意味もありますから、肝臓の感受性が高まるこの時期は、総じて苦味のある春の山菜をドシドシいただくのも理にかなっているんだなぁと。

五行説


「人間意識は時間と空間に閉じこめられている」という近代的思想にはおさまらないフシギなはたらきが、春の霧霞きりかすみにまざって地表をつつみこむ。
空はかすみ、あちらこちらで蜃気楼がたち、物質的な境界線がゆるむ魚座のころは、顕在意識がぼんやりしやすい魔法の季節。

相対する潜在意識の大海原にエイヤッと飛びこんで、海神エーギルの造ったビールのご相伴にあずかれば、魂はたちどころに息を吹き返し、血は大海とともに地球周回の壮大な旅をはじめて、24時間ほろ酔い多幸感の醍醐味を味わえるのかもしれません。

☆☆☆

お読みくださりありがとうございました。
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