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隣の芝はエメラルドグリーン

先日イギリスの首相戦でリズ・トラスが下のような発言をしていた。

A candidate to succeed Boris Johnson as UK prime minister, Truss said late Sunday that the government needed to “look at best practice around the world” when determining the target of the BOE and cited Japan as an example.

"Truss’s Citing of BOJ as Model for BOE ‘Makes Very Little Sense’",
Bloomberg, 18/7/2022

ほとんどの日本人はとても日銀の政策が成功してるようには見えていない(と思う)。しかし、半端ではない物価上昇によりエアコンすらもまともに使えない状況の欧州諸国にとって、CPIの上昇率が比較的緩やかな日本の状況はうまく行っているように見えるのだろう。

いつの時代も他国の状況は自分の国より好ましく見えるものだ。

「隣の芝は青い」というが、人間の本質をよくついた言葉だな、と思う。

なんなら「隣の芝はエメラルドグリーン」と言っても差し支えないぐらい、他人の状況は好ましく見える。

日本ではかなり前から欧米諸国に対する根強い憧憬の念があると感じられる。Twitterを見れば、欧米礼賛・日本批判のTweetを見るのは日常茶飯事だし、日本人の友達と話していても根底に「欧米の方が優れている」という意識が無意識的に働いていることに気付かされる。

しかし、それを自分たちの認知的なバイアスによるものかもしれない、と意識できている人はどれぐらいいるのだろうか。

自分も無意識的に他国への憧れがあった分、上で挙げたリズ・トラス氏の発言は自分の「隣の芝は青い」バイアスを顧みる良い機会であった。

例えば、2016年にはドイツへの移民がドイツ、スイス、フィンランドで集団で性的暴行を加える事件があった。2022年のスペインでは脱炭素による電力不足で冷房を27度未満にすることを禁止している。アメリカでは、トランプかクリントンかで離婚した夫婦も少なくないと聞く。

ナショナリズムの台頭、深刻な移民問題、政治的な分裂、エネルギー問題の本音と建前、など、欧米でも目を覆いたくなるような問題はたくさんあるのだろう。

何が言いたいかというと、人間に備わる「隣の芝は青い」バイアスによって他の国や他の人の状況がよく見えてしまうだけで、実際どこも似たようなものなのではないか、ということだ。

そして、その嫉妬に似た感情によって劣等感や悲壮感を抱いているのであればその必要はないと思う。

ローマ最高の詩人の一人であるウェルギリウスも以下のように言っている。

誰もがそれぞれの地獄を背負っている。

人の内面的な苦悩や葛藤はなかなか知ることができない。
しかし、どんな人もその人なりの地獄を抱えて生きている。

だから、人を見て、自分より幸せそうだ、とか、自分より優れている、だとかは思う必要はない。

他人が持っており、自分が持っていないものに目を向けるのではなく、自分が持っているものを見つめ直す。

そうすることで自分の芝もエメラルド色に見えるかもしれない。


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