ずいぶん前から、公民館も転換点に来ていた。
本年度より、岡山県社会教育委員の任を拝命しましたので、社会教育について、僕も探究を始めたいと思います。
公民館の旧来からある専門性の1つとして、貸し館業務だけでなく、自ら講座を主催することが重要だとされてきました。しかし、その専門性は変遷しつつあります。
加えて、社会教育そのものが健康や福祉など、隣接する領域との連携・融和を求められています。
とりわけ周縁部においては、人口減少の状況も相まって、行政機能は「市民センター」として1つの施設に集約される傾向にあります。
その状況において、公民館職員さんは市民センター職員としての業務を兼務するかたちになり、社会教育へのコミットメントを高めにくいのです。
必要条件となる機能には、当然ながら専従職員が必要。一方で、十分条件となる学習機会については、その創造方法を転換する必要があります。
これまでのように、公民館職員さんが主催講座を運営するというスタイルでは、創造主体はいつまで経っても職員に制約され、摩耗の一途を辿っていきます。上記のような兼務を前提とする場合ならなおのことです。
そこで、教育機会の創造主体を地域住民にも延長していく必要があります。その場合、公民館職員に求められることは、地域住民がまちの教育機会を創造する生産者になるための「仕掛け」を行うことです。その「仕掛け」によって、地域住民が楽しく活動することができ、地域の教育力を高めることにつながります。
公民館職員には、まちの教育を駆動させる「仕掛け」の専門性が必要。では、その専門性とは何かを探究するため、NPOだっぴでは公民館との連携を始めています。
連携する中で見えてきた要素としては「巻き込む力」と「協力のプログラムデザイン」です。
人を巻き込む力は、ある程度突出したコミュニケーション能力を要求します。以前、岡山市の公民館職員・塩瀬さんに取材をさせてもらったときも、その突出したコミュニケーション能力が垣間見えました。
一方で、そのスキルセットだけでは「個人の才能」に頼ってしまうことになるので、「あの人だから」となりやすいです。それを乗り越えるもう1つの要素として「協力のプログラムデザイン」があります。
地域住民の方には、金銭報酬による交換ロジックではなく、自主的に(ボランティアとして)活動してもらう世界観において、「どうすれば地域住民の方にもメリットがあるかたちがつくれるか」を思案することはとても重要です。この点で『協力のテクノロジー』が参考になります。
みんなが協力しやすいプログラムを開発することで、まちの教育の生産者を増やすことができるのではないかと考え、活動に邁進しています。
加えて、公民館が中高生に開かれていくことにもチャレンジしています。これについては、職員さんがユースワーク的観点をもった立ち居振る舞いを実行できるかという専門性が求められます。
ここに、僕が2019年にフィンランドのユースワークについて視察してきたことを活用できればよいなと思っていて、実践を進めていきます。
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