見出し画像

ワークショップデザイナーへの道Ⅲ

ワークショップの目標設定

ただ漠然とワークショップを行うのではなく、目標を意識することは重要です。以下の構文に整理するイメージで、目標を言語化していきます。

○○(活動目標)を通して、○○(学習目標)する。

ワークショップデザインを考えるなかで、迷走したり、ついあれこれと足し算してしまうことがあります。そんなときに目標に立ち返って、デザインをスリム化したりすることで、目標に向けて一気通貫された活動に洗練していきます。

省察的実践家

ワークショップでは、複雑なコミュニケーションが行われており、その場1回限りの限定的・一時的なもので、同じものが一つとしてありません。それゆえ、ワークショップ実践をプログラムデザインとファシリテーションの両面から省察して、自らの知を積み重ねていくことで専門知としていく必要です。

ドナルド・A・ショーンはそうした存在を「省察的実践家」と呼び、技術的合理性に基づき、原理・原則を現場に適応する存在ではなく、現場の状況変化に応じて、その都度リフレクティブに意思決定を行い、行為を決めていく存在であるとしました。

省察的実践家は、状況と対話し、行為の中の省察を通じて自ら学び、解決策を身につけ、発達していきます。ショーンが提唱する「リフレクション・イン・アクション(行為の中の省察)」には2つの場面想定があります。
1つは実践中、参加者の反応を見ながら、臨機応変・直感的に対応し場を進めるもの。もう1つは実践後に、実施中の言動を思い返していくものです。

実施者は、自分の知識、技術、能力、価値観を越える問題に直面した時、不安や戸惑いを感じます。ここに技術的合理性の限界性があり、実施者はそれまでの経験を総動員してなんらかの行動を起こし、直面する状況に変化をもたらします。こうした経験を経験で終わらせることなく、省察して抽象的概念化することで自らの知として蓄積し、次の実践に活かしていくことが大切だとされています。

リフレクションデザイン

リフレクションデザインの具体的な方法として、プログラムデザインの振り返りは下記のような手順で行われます。

①実施中の参加者の様子を書き出す:プラス/マイナス要素で付箋の色を変える
②付箋を時系列に並べ直して整理する
③全体を見渡して特に振り返るべき場面を抜き出して深めていく:参加者の反応/活動のねらい/ギャップからの気づき/改善ポイント

ファシリテーションの振り返りは、観察者役をつくって動画を撮ってもらい、自分の立ち居振る舞いを客観的に確認したり、F2LOモデルで簡素化・構造化して振り返るなどの方法があります。

[実践例]瀬戸内スタディツアーでのワークショップ

僕が先月に行ったワークショップを思考の題材にしてみようと思います。瀬戸内にある直島にて、中高生がアート作品の鑑賞をしながら島をめぐるツアーの振り返りのワークショップです。

学習目標は「新しい作品名をつくるワークを通して、アートについて自分の言葉で表現することができる。」と設定。中高生2~3人とスタッフ1人のグループサイズで行いました。ワークショップデザイン(構成)は下記のとおりです。

振り返りをメモ
スケッチブックに鑑賞したアート作品と感じたことを書き込む。

印象に残っている作品について共有
①1人ずつ「印象に残っている作品」と「その理由」を共有する。
②共有された作品について、他の参加者はどのような目線で鑑賞していたかを共有する。

マインドマップで発散
①今日鑑賞した作品の中からグループで1つ選ぶ。
②その作品について感じたことや自分なりの見方・捉え方をA3用紙にマインドマップで書く。

新しい作品名を考えよう
①マインドマップに出てきた単語やキーワードを参考に、選んだ作品にグループで新しい名前を付ける。
②その作品名をA4用紙に記入する。その際、マジックやマスキングテープなどを駆使して、自分たちが伝えたい作品名の雰囲気を表現する。
③「作品名」「その作品名にした理由」「工夫したポイント」を発表して全体共有。

[実践例]ワークショップの省察

マインドマップと新しい作品名を作る場面で参加者の熱量が上がっていました。事前レクチャーや当日に行った対話型アート鑑賞での思考の感覚を、このワークで活用できたように感じます。思考方法が分かっているという安心感が、自分の感覚や考えを表現できる参加の保証につながったのかなと。

新しい作品名を考えるワークでは、自分たちらしさを表現したいという欲求が参加の増幅に寄与していたように思います。その点で、作品名を考えるだけでなく、A4用紙に表現するワークにして正解でしたが、早くに完成したグループに対しての追加ミッションを設けておけば、さらによかったと思います。

ファシリテーションの振り返りについては、意見の発散や収束をグループファシリテーターの介入によって生み出すこと(介入が必要な場面)が続きましたが、最後の作品名づくりではグリップを手を放すことができたので、よいバランス感覚でグループに関われたように思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?