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ミニジオラマで水の都を表現する

 今年も「鉄道模型コンテスト2023」の季節がやってきた

 私はほぼ毎年、このコンテストに作品を出品しています。

 鉄道模型を主眼としたイベントは数少ないので、こういう大会を開催してくれるのは非常にありがたい。

 今回、私はミニジオラマ部門を新作しています。
 エントリーは5月でした。

 しかし毎度のことながら、制作するにあたり、なかなか良いプランが思いつかず、苦戦。
 結果、提出締め切り日当日に慌ただしく提出する羽目になりました。

 使用したミニジオラマベースですが、3種類あるうち、今回は曲線を選びました。
 曲線だと風景に変化をつけやすいからです。

 構想を練る中で固めていったアイデアは、ズバリ「海岸通りの街」を再現すること。
 もう少し詳しくいうと、欧米、それもイタリア・ヴェニスやフランス・ニースなどのイメージです。
 地中海地域に存在していそうな洋風の建築物の横に水路があり、その水路は線路を隔てエメラルドグリーンの海に通じている、そんな風景をぼんやり考えていました。

 ただ私は、それらの場所には未だかつて行ったことがありません。
 そこで、海外旅行のパンフレットや、世界の路地裏を写した写真集などが大いに参考になりました。

 構図的には、線路を挟んで片側は海を表現する、というところまではほぼ固まっていました。

 全体のバランスを調整するため、折り紙と工作用紙を切って、それぞれ仮置き。
 この段階では、まだしっかりとした配置は決めていません。

 とにかく、想定されそうな色合いは全て試して見ることに。
 この作業にいちばん時間を費やしました。

海の色調整その1
海の色調整その2

 いつものことなのだが、構成・配置を考えるのは伊達にはいきません。
 あんまり作り慣れていないせいもありますが、この作業でだいたい1ヶ月は消費しました。

 話がそれますが、ジオラマ制作に限らず、ものづくり全般に言えそうですが、一番時間がかかる工程って、たぶんこの構成を考えるところでしょう。
 でも、この工程をおろそかにしてしまうと、のちのち制作に影響してくるので、手を抜くわけにはいきません。だから大変なのです。

 てんやわんやで、ほぼ、方向性が定まりました。
 これから実際に作っていきます。

 短い期間で効率よく作業が進めるように、作業の工程を充分に考えます。
 その結果、取り掛かる順序として、

  1. 建物部分の制作

  2. ベースとなる土台部分

  3. レリーフ状にするつもりの樹木部分

  4. 海と河口の部分

と進めるように配慮していきます。

 そういうわけで、私が最初に取り掛かった部分は、建物の製作です。

 こちらは建物全てを作るわけではありません。
 必要な部分だけ表現する半立体です。
 ですからまず、工作用紙を切り出し、建物を表現する部分のガイドを作っていきます。

左側が工作用紙で作ったガイド、真ん中の部品はアーチ橋梁に使う

 工作用紙を組んだだけだと強度が弱いので、適宜スチレンペーパーで補強。

 これができたら、今度はプラ板とプラ棒をガイドの大きさに切り出します。
 この際、他の部分のパーツも切り出しておきます。

 切り出したら、組み合わせて、建物の外装を作っていきます。

プラ板切り出しその1
プラ棒で窓枠の縁取り補強
各部品を製作中

 ちなみに屋根は、エバーグリーン製の細長いプラ棒を、少し重ね合わせながら成形していきます。

左が屋根の部品を作っているところ。プラ棒を段段重ねにしている

 それぞれが完成形したら塗装します。
 庭でスプレー塗料を吹き付けました。

庭で塗装

 土台部分は、ミニジオラマのキットに付属のフォームを必要な大きさにカットして配置。その上に石畳の模様が再現された、特殊なプラ板をこれまたフォームの大きさにカットして接着していきます。

今回使った素材は、津川洋行製のデザインプラスチックペーパー石積み150という製品
切り出し位置調整
建築限界も忘れずに

 レリーフ状の樹木は、あらかじめスカイブルーに塗装しておいたプラ板に、カトーから出ているジオラマ素材「広葉樹の幹」の、いちばん小さい幹を使用しました。
 これを手芸用ボンドで接着し、さらにその上から接着剤をたっぷり塗って、その上に緑色のコースターフ(模型用の目の細かいスポンジ)を撒いていきます。

スカイブルーに塗装したプラ板に樹木を貼り付ける
コースターフを撒く。この際、たっぷりと撒くようにする

 乾かして形を整えたのち、コースターフがこぼれ落ちないように、フィキサチーフをかけました。これで十分頑丈になったと思います。

 海と加工部分の工作は、ほぼ半日で終わらせました。
 土台に直に粘土をのせて伸ばし、形が平たくなるように成形していきます。

 乾燥後、アクリル絵の具で、黄緑と、スカイブルーっぽい色を混ぜ合わせ、エメラルドグリーンのような色を作り、塗っていきます。
 その際、海の側はなるべく手前が青の濃度が濃くなって、反対に奥が河口の色に近づいて明るくなるように塗り分けました。
 写真からだと暗くてよくわからないのですが、海のグラデーションを表現しました。

海・河口部分の塗装。海はグラデーションを意識している

 さらに乾燥後、メディウムという乾くと光沢が出る塗料があるので、それを上塗りしていきます。
 すべて乾燥した後には、ツヤツヤした感じになって、一気に水らしくなりました。

メディウム、薄く塗り重ねると光沢が出て仕上がりが綺麗になる
メディウムを塗って、全ての部品を組み合わせているところ

 以上、それぞれ別個に作っていたのですが、最後にすべての部品を組み合わせます。
 接着剤を用い、建物→背景の空という順にくっつけます。

 完成です!

 果たしてヨーロッパの風景に見えるかは分かりませんが、うまく遠近感が出ていて、コンパクトに要素をまとめられたかなと思います。

 ミニジオラマはちょうど、はがきサイズしか面積がなく、かつ真ん中を斜めに線路が横切っているので、表現できるものが限られてしまいがちです。

 いわばディフォルメをうまく駆使できるかが、うまくみせる鍵だと思うのですが、今回の作品では、それを実践してみた形となりました。いかがでしょう?

 心残りもあります。
 それは、ジオラマにおいて重要な小道具である、人形や船などを入れられなかったことです。
 確かに、最初の段階では入れようと思ったのですが、時間切れになってしまいました。

 でもそれはそれでよかったのかもしれません。

 その分、建物などがしっかり作れたので、私としては表現したいものが表現できて満足しています。

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