現代医療では原因の解らない難治性のヤマイを患ったモノは「患者」にすら成れないのだ。

『「標準治療」は患者さんにどれくらい効果があるか、安全性があるか確認されたその時点での“治療のチャンピオン”です。しかし、卵巣がんは早期発見が難しく発見時に進行している患者さんも多いことから、標準治療を受けても効果が出ない患者さんや再発を繰り返してしまう患者さんが少なくありません。~それでも情報を探してしまうのはなぜでしょうか。そこには、卵巣がんはいまの時点では標準治療をうけたとしても100%効果があるわけではないこと(抗がん剤が効かない・再発する患者さんが少なくないこと)、生きていくためになにかできることがあるのならやりたいという患者さんの追い詰められた気持ちであり、「藁でも構わないから可能性があるなら生きたい、治りたい」といった「本音」があるからかもしれません。~患者さんは「自分が不利益を受ける可能性がある」ことなどあまり警戒せず治療を受けていたと感じることが少なくありません。しかし、なかにはそういった治療を受けたことを激しく後悔している患者さんと出会うこともあります。老後のためにと夫婦で貯金していたお金を科学的根拠のない治療にすべて費やしてしまった患者さん、抗がん剤の副作用が怖くてトンデモ医療にすがってしまい、結果としてどんどんがんが悪化してもう標準治療を行うことすら困難なところまで悪化した患者さんと出会うこともあります。トンデモ医療は場合によっては患者さんの適切な医療機会を奪うことにもなりかねないのです。日本では医師に「裁量権」というものが認められており、提供できる医療行為の制限がありません。それを逆手にとる形で、科学的根拠なきトンデモ医療を提供する医療機関が存在するのです。~しかし厚生労働省もトンデモ医療に関して何も対応していないわけではありません。「医療機関ネットパトロール」という事業を開始、「医療広告ガイドライン」を守らない医療機関を発見したら通報してもらうシステムを導入、必要に応じて指導するといった取り組みを行なっています。厚生労働省の会議で通報件数や指導件数など報告が行われることがありますが、トンデモ医療が実際に減るといったことに繋がったかは分かりにくい状況です。医療機関のホームページの広告が難しくなったことが影響したのか、最近では表向きがんの医療情報を提供しているように見える一般社団法人のホームページから巧みにトンデモ医療に誘導しているようなものが見受けられるようになり、まるでイタチごっこのようにもなっています。私がこれまで患者さんから相談された科学的根拠が示されないトンデモ医療は、高級外車が買えるほどの高額な免疫細胞療法から、牛乳にイソジンを混ぜて飲むといったさしてお金がかからないものまで数多くあります。そしてこれらの相談をしてくる患者さんの多くは、けっして「トンデモ医療に湯水のようにお金をつぎ込んでも痛くもない大金持ち」や「学力が低い」といった方ではありません。むしろ、ごくごく私たちが日常会社の同僚として、友人として接している普通の方たちばかりです。それでも、自分や家族が、がんという病気になってしまうと、不安のなかで必死に情報を探し、「もしかしたら効果があるかもしれない」と思い込み、トンデモ医療にすがってしまうのです。よく「医療リテラシーをあげればトンデモ医療にひっかからない」「臨床研究がどういったことかを知ればトンデモ医療にひっかからない」という人がいます。けれど本当にそうでしょうか。自分がこれからどうなるのかという不安に苛まれる中で、正確な情報を得て、正確な判断をできる人はわずかではないかと私は思います。病気が深刻であればあるほど、治療に難渋すればするほど「なにかいい方法がないか」と探してしまい、追い詰められた心理状態のなかで「治りますよ」「副作用が軽減できますよ」といわれたらついつい信じてしまう。その気持ちはとても理解できる気がするのです。だからこそ、国には科学的根拠のない治療に関しては臨床研究で行うなどの制度づくりを、そして主治医には患者の不安を想像し正確な情報提供を期待します。そして私たち患者や患者を支える人たちは、私たちの周囲には正確とは言えない医療情報が多くあること、その真偽の判断はとても難しいことを理解すべきです。世の中に流布している医療情報を安易に信じず主治医に確認をする、無責任に他人に提供しないことを心がけていくことが大切ではないかと思います。』

「標準治療」…なんとも罪つくりな表現だ。大多数の患者に効果がある「実績のある治療法」なのは理解できるが「標準治療」で回復の見込みが期待できない患者には何の役にも立たない治療方法なのだ。これはがん患者に限った事ではない。現代医療では原因の解らない難治性のヤマイを患ったモノは「患者」にすら成れないのだ。これは今のヒノモトの現代医療の限界なのかもしれないが医療制度の問題であり裁量権のある医師の資質の問題なのは確かなのだ。

「トンデモ医療でもすがりたい…」がん患者の本音を知っていますか
批判するのは簡単。でも現実は…
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68652

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?