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デンマークと日本での一番の違いは…

『けれども、正直なところデンマークに対して「高度なIT技術」のイメージを持っている日本人は、それほど多くはないでしょう。実際、デンマークから日本への主な輸入品は、豚肉、乳製品、医薬品であり、電化製品などはむしろ日本からデンマークに輸出しています。私が持っているデンマークの印象も、機械的というよりは、自然・農村といった、素朴で田舎っぽい感じです。デンマークの例から私たちが学べることは、電子政府を進めるに当たっては、必ずしもその国に高度な技術を開発する力が求められるわけではない、ということです。その代わりにデンマークが持っているのは、国民の個人データを扱う政府への信頼感、そして他人のデータを盗んで悪用しないであろうという社会への信頼感です。このことは、1位のデンマークのみならず、4位フィンランド、6位スウェーデンといった北欧諸国がランキングの上位に名前を連ねていることと無関係ではありません。図表2は、ISSP(国際社会調査プログラム)の2017年調査において「あなたは、他人と接するときには、相手の人を信頼してよいと思いますか。それとも、用心したほうがよいと思いますか。」という質問に対して、「いつでも、信頼してよい」「たいてい、信頼してよい」と答えた人の割合ですが、ここでも北欧諸国が上位を占めているのは、決して無関係ではないと思います。またこのことは、北欧諸国における高福祉高負担のシステムにも通ずるところがあります。強権的な政治が行われているわけではないのに税率が高いのは、政府が税金を公正に使うという信頼に基づいていると考えられるからです。~デンマークにおける政府の電子化の事例で、私がとりわけ重要だと思うのは、その利用を国民に義務付けているところです。具体的に言うと、デンマークでは全ての市民に対して電子署名システム「NemID」の使用を義務付けています。また15歳以上の全てのデンマーク市民に対して、障がいなど特別な免除要件に当てはまらない限り、政府との連絡ツールとなるデジタルポストの利用を義務付けています。この結果、2018年においては国民の91.1%がこのデジタルポストを使用し、1億4000万通のメールが送受信されています。デンマーク政府によれば、電子政府化によって行政手続きの時間は約30%短縮し、年間3億ユーロ(約370億円)の経費が削減されたとのこと、これを人口が約20倍の日本に当てはめれば、約7000億円の経費削減ということになります。「いや、そうはいっても日本にはそもそも機械が苦手なお年寄りが多いから……」という声も聞こえてきますが、日本ほどではないにせよ、実はデンマークも65歳以上の高齢者の割合が世界で11番目に高い国です。それでもこの仕組みが機能していることの背景には、「政府が社会のためにやりましょうというのだから、私も頑張って馴染むようにしよう」という、信頼に基づいた社会への貢献意識があるのではないかな、と思います。私は、日本にも善意や信頼があふれていると思っています。よく「日本では、財布やスマホを失くしてもちゃんと戻ってくる」という話を聞きますし、そのことを誇りに思う日本人は多いのではないでしょうか。ところが、それでも他人を信頼できると考えている日本人は多くありません。悪人や犯罪はゼロではありませんが、それはデンマークとて同じことです。何事にも用心することは大切ですが、私たちは、私たち自身の社会にもっと自信を持ち、社会を信頼することによって得られるメリットを積極的に追求するべきではないでしょうか。これがデンマークの「すごい電子化」に日本が学ぶことのできる教訓であると、私は思います。』

デンマークと日本での一番の違いは「国民の個人データを扱う政府への信頼感、そして他人のデータを盗んで悪用しないであろうという社会への信頼感」と「強権的な政治が行われているわけではないのに税率が高いのは、政府が税金を公正に使うという信頼」に尽きると思うのです。

世界ランク1位「デンマークの電子政府」と日本政府の重大すぎる違い
高い技術だけでは電子化は進まない
https://president.jp/articles/-/40080

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