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日本「語」学校と日本「人」学校

どちらも1文字しか変わらない言葉です。私は、日本人学校の教員として、海外で8年間教壇に立ちました。日本へ帰国後、様々な場面で自己紹介をしたり、プロフィールを書いたりすることがありました。すると「日本語学校だよね?」「海外で日本語を教えていたんだよね?」という反応が返ってくることが多いのです。

自分が思っている以上に「日本人学校」のことが認知されていないのではないかということを感じました。そこで、ざっくばらんではありますが日本人学校の概要について書いてみようと思い立ちました。

日本人学校はどんな学校?

日本人学校は、国内の小学校、中学校又は高等学校における教育と同等の教育を行うことを目的とする、全日制の教育施設です。一般に現地の日本人会等が主体となって設立され、その運営は日本人会等や進出企業の代表者、保護者の代表などからなる学校運営委員会によって行われています。

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/002.htmより引用

日本人学校は、海外に居住している日本人のために、日本の教育を行なっている学校です。地域にあるような〇〇小学校や〇〇中学校が、ロンドンや北京、バンコク等の都市に設置されているイメージです。専門用語では在外教育施設と言います。教育課程は日本の学習指導要領に則って行われ、日本の教科書を使います。

令和3年4月現在、文部科学省が認定した在外教育施設は世界に101校設置されています。https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/002/001.htm

学習内容

基本的な学習内容は日本の学校と同じです。小学3年生であれば、国語、算数、社会、理科、体育、音楽、図工、学活、道徳、総合的な学習などの科目を学習します。大きく違うのは、外国語活動としての英語の他に、現地語の授業があることです。中国の日本人学校であれば中国語、タイの日本人学校であればタイ語の授業があります。

また、校外学習や修学旅行などは現地で計画されますので、その国ならではの特別な経験をすることができます。多くの日本人学校が現地の学校と交流を行なっており、国際交流に関する学習は充実しています。

施設について


設置されている都市や規模によってかなり変わってきます。私が最初に勤務したバンコク日本人学校は、ピーク時の児童生徒数が3,000人を超えた程の超大規模校ということもあり、複数のグラウンドや体育館が整備されていました。

一方で、2校目の深圳日本人学校は、設立時、市内のホテルの1フロアを借用して開校した歴史をもちます。ちなみに現在は別の建物に移動し、小規模ながら教室、グラウンドなどの設備があります。日本と全く同じというわけには行きませんが、国や都市の事情に柔軟に対応しながら、日本の教育に適した設備を充実させようと、どの学校も整備を重ねています。

教職員について


実際に子どもたちの教育にあたる教員は、日本で実務経験を積み、文部科学省から派遣された教員と、学校に直接雇用されている学校採用教員です。いずれも日本の教員免許保持者です。国によってビザに必要な要件が異なる場合もあるため、詳細は割愛します。

英会話や現地語の教員は、多くの場合現地のネイティブの方が担当しています。ただし、中学校の英語は高校受験やカリキュラムの観点から日本の教員が担当していることがほとんどです。

事務職員や用務員、清掃スタッフ、警備員は基本的に現地の方たちです。現地スタッフの方々の日本や日本人への理解が土台となり、学校が運営されていると言っても過言ではありません。

子どもたちについて

多くの子どもたちが、日系企業の駐在員の子女です。また、ご両親のどちらかが外国籍の子どもたちも一定数通っています。日本の公立の学校と比べると転出入が多い傾向にあり、新しい出会いが多い分、別れも少なくありません。個人の経験としては、ユニークな子が多く、出身地も多種多様です。日本より海外で過ごしている時間が長い子も少なくありません。

では日本語学校とは?

日本語学校はその名の通り、日本国内で日本語を教える学校のことです。

その対象は、日本語を母語としない外国人です。外国人が日本語を学ぶには、私立大学・短期大学の日本語別科のコースを履修するか、法務省より告示を受けた日本語教育機関で学ぶのが一般的です。

いわゆる日本語学校というのは、大学のコースではなく、法務省より告示を受けた日本語教育機関のことを指します。告示を受けた日本語学校で学ぶ外国人には在留資格の「留学」が付与されます。

日本語学校では、専門学校や大学へ進学したり、特定技能実習生として働いたりすることを見越して、日本語だけを学ぶのではなく、文化や習慣も学習します。

日本語学校の教員になるための国家資格はなく、教員免許も不要ですが、以下のいずれかの条件を満たしていなければなりません。

・「日本語教育能力検定試験」に合格する
・学士の学位をもち、文化庁認定の「日本語教師養成講座(420時間)」を   修了する
・大学または大学院で日本語教育に関する主専攻プログラムか副専攻プログラムのいずれかを修了する

同じ教員といえど、小学校や中学校の教育とは異なり、専門的な知識や経験が求められます。

おわりに

私が海外で8年間取り組んできた仕事は「日本の学校で行う教育活動を海外で行ってきた」ということに他なりません。

8年間のうち、7年は学級担任としてクラスを受け持ち、国語や算数を教え、子どもたちと一緒にグラウンドで遊んだり、運動会や学習発表会の行事にも取り組んだりしました。

専科教員として、図工や中学校の国語の授業を受け持ったこともあります。日本の学校の先生と何ら変わりありません。

海外でも、多くの日本の子どもたちが日々学んでいます。またそこで教育活動を行う日本の学校の教員がいるということも知っていただけたら幸いです。

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