ZARA_VenusFort店134

小売業用語=VMDを深く掘る。その2

前回の続き。

実店舗、売場はVMDによって人が吸い寄せらて、店にはいってから買うもの・欲しいものが見えてくる。今のEコマースにはそれがない。タイムセール訴求やクーポン訴求ばかりである。

取り立てて色とか素材とかに興味のない人も、色とか素材が美しく揃っていたり、組み合わせが素敵だったりすると目が留まるものだ。それを考えてファッションやセレクトショップのMDやデザイナーは、そのシーズンのテーマカラーやテーマとなる素材を決めて、それを中心に、まずスタイリングを起案する。

※IP=アイテムプレゼンテーション、PP=ポイントオブプレゼンテーション、VP=ビジュアルプレゼンテーション

ここがまず、他の商品のECバイヤーさんと異なるとこだ。通常は商品の品種(カテゴリー)ごとに担当が分かれて、統率者がカテゴリーバランス
(品番数、SKU数、在庫数、在庫高、販売数、販売額)の概算を決めて仕入計画を実行
する。仕入形態…完全買取なのか委託・消化仕入れなのか?も在庫リスク上大切なバランス管理要素だ。いずれも、例えばファッションで言えば、ロングコート何着、ダウンジャケット何着、カジュアルコート何着、ダウンベスト何着……のような品種でバランスを整える概念。

しかし、ファッションの場合はトータルコーディネートが重要になるために、この品種のバランスより先に、実際に着用した時のスタイルのバランスをまず考える。
例えばティーンズの『ビッグシルエットのミリタリー意識ルック』で4タイプ、『20代のきれいめレトロモチーフスポーツルック』で3タイプ。
等という典型的なコーディネートを組み上げてゆく。

それがそのまま添付や陳列のエンドで見せるVP※スタイリングになるのだ。ファッションというのは、単品のコートだけで見ても、昨年と変わらなかったり、新しさ=今年らしさを感じないことが多い。なので商品企画サイドは、今年らしい着こなしの提案にエネルギーを割く。その中で偶々ヒットアイテムがでることも多いのだ。

ここまで読んでもらえればわかると思うが、
ファッション店の売場は企画側の提案力、シーン訴求力がモノを言う。来店客はたいてい、アイテム(品種)を探しにくるけど、そんなお客に、トータルでこんな感じに仕上げたら素敵でしょう?会社でモテルでしょう?生活が楽しくなるでしょう?インスタ映えするでしょう?みたいな、ホントは相手の生活に深くはいりこんだ魅力の提案が大事なのだ。

Eコマースが売れる……という世の中が認識したときから、安さや便利さばかりにスポットが当たって、この根源のところがあまり見られなくなった気がしている。それを取り戻さなければ。

その3に続きます。