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ココちゃんの嗅覚 

はじめて会ったときから
なぜかリラックスしていた。

みんなでペンションに行く車の中
バイト先のママのお気に入りで
ママの飼ってたワンコも一緒に
ペットも泊まれるペンションに向かっていた。

ママのお嬢さんやお友達や
全部で3台の車で行ったかな…
わたしははじめて会った
お父さんみたいな年齢の
お父さんとは違う雰囲気の
おじさんの車の助手席にいた。

人と話すのは苦手で
みんなが話すのをただ聞いていて
会話に参加はしなかったが
放っておいてくれる感じも
自由で心地よいものだった。

ママからもらったグリーンの
素足で履く靴にあわせて
黄色のショートパンツで
車内が寒く感じ体を縮めたら
寒いのか?と冷房を弱めてくれた。

ワンちゃんの名前はココちゃんだった。
途中に寄ったサービスエリア
お天気が良くベンチに腰掛け
ジュースを飲み靴を脱いだら
ココちゃんが寄ってきて足をクンクンする。
私が足を動かすとまたついてきて…

何してるんだ?と
車を運転してくれたおじさんが聞くので
ワンちゃんは鼻が人間の何倍も良いってホント?
ずっと私の足をかいでいると言ったら
ママが「ココちゃんやめて〜」と言うから
みんなで笑っていた。

ホテルにつき宿泊客は私たちだけで
みんなで楽しくお話しをしたり
ダイニングルームに
アップライトのピアノがあって
ママのお嬢さんが弾いてくれた。

ママのことを
おかあさまって呼ぶから
少しびっくりして新鮮だった。
ペンションにいた大きなレトリバーや
小さなココちゃんが駆け回り
憧れた家族の中にいるようだった。

私は自分の家が苦手な人だった。
悪いことをしたら叱られる
それは躾や教育と呼ぶが
親自体が未熟だと理不尽な権力となり
不安定に振りかざしてしまう。

また単に家族より他人の方が
お互いに適度な距離感を保つからか
居心地が良かったりするのかもしれない。

夜は花札やトランプやオセロをしたり
チンチロリンも教えてくれて
みんながやるのを見ていたり
気ままに参加したり
私は大好きな耳かきをしたり
思い思いにリラックスして安心して過ごせた。

バイト先のママは
お料理もお花もプロのようで
社交的でまわりの人が寄ってくる。
居心地が良いからまた会いたくなる。

辛いことに、ママのお嬢さんは
その後、若くしてガンで亡くなったが
今も電話すると明るい声で
いろんな話をしてくれる。

お宅に行くと小さな仏壇があって
手入れされた緑やお花にあふれ…
みんないろいろな体験をしていて
それでも明るく楽しく生活している。

あなたは幸せになるのよ
あなたには幸せになる権利がある

優しくて可憐な花のような女性だ。


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