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渡米後1stアルバム、セルフライナーノーツ

10月1日、2018年に渡米して以来最初のフルアルバムをついに発売しました!!パチパチパチ!
そして9月にNYからLAに引っ越しました!

「公開アメリカンドリームプロジェクト」を掲げて渡米してこの3年、外国でゼロから始めた生活・音楽活動。
あまりにも大変すぎて体や心が折れてしまった時期もあったけど、ここまで頑張ってきた集大成として最高の1stアルバムをリリースしたくて、今年は2月頃から全力疾走してきました。

Shihori - MUTATION
- Spotify、iTune Music、Google Music、LINE MUSICなど、世界中の音楽配信プラットフォームでお聴きいただけます!

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♫CD販売ページはこちら。→日本 →海外

2つのシングルに、フルアルバム、MVを3本、1年でリリースするだなんて、これまでの音楽か人生20年の中でも初めてのことです。
(そういえば今年は音楽活動を開始してから20周年でもあります!!)
それくらいこのアルバムに全エネルギーを注いできたので、数々のトラブルも乗り越えてやっとリリースできて本当に嬉しい!(涙)
そして、ついにみなさんに楽しんでいただくのみとなりました。

日本からアメリカに来て私が経験した文化間の違いや、どういった変化のプロセスを辿ってきたかはこれまでも色々と書いてきましたが、このアルバムを通じてしほりの変異(MUTATION)を実際に味わっていただけたら嬉しいです。

♫モデルプレス水樹奈々、ももクロらに曲提供のアーティスト・しほり、渡米後初のアルバムリリースで見せた「変異」

というわけで今日は、全曲のセルフライナーノーツをご紹介したいと思います。

1. God Writer

8月まで住んでいたヘラルドスクエア(ニューヨーク、34番ストリート)の街角の騒音(iPhoneで録音)から始まるこの曲は、いきなり日本語なのですが(笑)長いこと思うように英語の曲が書けずにフラストレーションが溜まっていたのを憂さ晴らしするように書いた、ファンクな1曲です。

内容は、今では「青汁王子」として知られる三崎優太さんが脱税事件で大変だった時に、インスピレーションを受けてというか、ひっそり応援したくて。
ニューヨークに移住する直前に、彼が審査員として出演されていた「マジあげ」という番組に出演する機会があって、その時に結構無茶な企画を提案したので、他の審査員の方々には「うーん・・・」という感じの反応だったんですけど、三崎さんだけは「この人は絶対何か成し遂げると思う。面白いじゃないですか。」と、手放しに応援してくださった。
実際目を観てお話して、「この人本当にすごいな」と思ったし、事件をニュースで知った時、「絶対に三崎さんはやってない。騙されたり利用されたりしたのではないか。」と真っ先に思いました。リリースがかなり遅れてしまったのですが、三崎さんの状況や思いを想像しながらと、アメリカに意気揚々とやってきたものの、全く通用しなくて七転八倒をしていた自分の状況とを重ねながら書きました。
英語だとまだ複雑なギミックとかを入れられなくて悶々とするので、日本語で好き勝手発散してます。(笑)


2. Soul Trip

去年9月に発売したシングル曲で、LA在住の音楽プロデューサー、Killian Cruiserに編曲を依頼しました。アメリカでの音楽制作にやっと慣れてきた頃で、「あんな曲も書いてみたい、こんな曲も書いてみたい」と、楽しみながら実験している感じが出ていると思います。
長くアニソン業界に携わっていて、何を書いても「アニメっぽいね(笑)」と言われがちなんですけど、この曲に関してはアニメっぽさがなく、おそらくアルバム中では一番「アメリカのトレンディなポップス」っぽい、R&Bポップになっていて、メディアからの反応も良かったように思います。
当時ニューヨークは絶賛ロックダウン中で、自宅で撮影環境を揃えて、全部一人でMV撮影・編集までこなしたりしたのもいい思い出です。(笑)

3. Let Me Go

アメリカでの1st シングル(2019年発売)です。初めて現地ニューヨークの音楽プロデューサーと仕事をしたのですが、アメリカでの音楽制作の進め方が、長年日本で慣れ親しんだやり方とあまりにも違って、何をどこでどうコメントしたらいいのかがわからず、本当に戸惑いながらの試行錯誤でした。音楽でも日常生活でもこの頃はたくさんのカルチャーショックに自信を失い始めてた混迷の時期で、自分なりに「アメリカ風の音楽」を一生懸命目指していたんですけど、頑張りすぎて本来の自分らしさを見失ってもいました。
今となってはもっと肩の力を抜いて、下手だろうが他の人と違おうが「これが自分のやり方!」って貫けば良かったんだなぁ、と思いますけど、半壊した「自分らしさ」という土台に一生懸命自分なりの新しい建物を建設しようとしていた苦労が見える一曲だと思います。

4. Garden / 5. Jungle -Cyber Mix-

この2曲は渡米後程なく発売したEP「Angel in the Garden」用に書き下ろしたアメリカで最初の新曲でした。
まだ「アメリカでやったるぞー!」という殴り込みパワーがほとばしっています。
日本語禁止令を自分に課して、本当に手探り状態で友達を作るところから試行錯誤していたんですが、まさにこのEPをレコーディングするのに現地ミュージシャンから述べ7回もドタキャンに遭ったり、練習してこなくてリハでリフが弾けなかったので別のプレイヤーに欲しかったフレーズを取られたことで「面白くない。もう明日弾きたくない。」とミュージシャンに言われてリハスタジオで大号泣したり(笑)。とにかく、全てにおいて日本で当たり前だった「常識」が通用しないんですよ!!
逐一が混乱とショックの連続で、まさにコンクリートジャングルで猛獣に襲われつつサバイブしていくような日々が、そのまま楽曲になっています。
「Jungle」は元々ロックxジャズな、私らしい「変態的なロック曲」だったのですが、ももクロちゃんの楽曲で間接的にご縁があったTeddyLoidさんと、ピッツバーグのアニメコンベンションでご一緒した時に「ぜひリミックスしてください!」とオファーして、キレッキレのEDMにリアレンジしていただいたバージョンをアルバムに収録しました。

6. Wonderful World

ロックダウン中に、日本にいる親友でアーティストのeriちゃん(eri’s Art)と「何かコラボをしたいね!」という思いつきで制作しました。
彼女はクリスチャンで、イラストや皮製品に愛と平和のメッセージがいつも添えられているのですが、その言葉を歌詞にして、彼女の可愛らしい世界観をそのまま楽曲に。
Bandcampで販売した売り上げを、虐待被害者の支援団体へ寄付しました。
いわゆる普通の「ポップス」ではなく、シネマティックでファンタジーな雰囲気が個人的に気に入っています。

7. Forest of Longing

ゲーム挿入歌のコンペ用に書き下ろしたのですが、JASRAC会員は参加できないものだったので、今回のアルバムに収録しました。
こちらもいかにもファンタジーな、シネマティック曲です。
たまに歌手としてのお仕事で、多重系エスニックコーラスをしたりしていたのですが、この曲にもそんなしほり節がふんだんに入っています。

8. Your Song

2015年に日本でリリースした「キミノウタ」の、英語歌詞版です。
この曲は、子供の自殺ニュースが多発した頃に、何か自分にもできないかと思って書いた渾身の曲なのですが、実は私自身子供の頃にひどいいじめを受けていて、自殺を考えたことがありました。でも、いじめっ子の名前をノートに書きながら、色々シミュレーションした結果、「死んでもあいつらへの復讐にならない」という結論にたどり着いて、将来歌手になろう!と決意しました。
11歳か12歳当時、そんな未来を朧げに想像しながら、未来の私へ手紙を書きました。
この曲は、今の私から当時の私への手紙であり、今苦しんでいる誰かへの手紙であり、もしかしたら将来の誰かから今の誰かへの手紙かもしれない。だから「キミノウタ」なんです。
そんな大切なメッセージだから、アメリカでもどうしてもはっきり歌詞を伝えたくて、英語版を作りました。
最近NYでMVも撮影したところなので、ぜひそちらも楽しみにしていただければ!

9. Invisible

今年の4月にシングルとしてリリースした、ヒリヒリと痛むような恋愛末期を描いた悲しいバラード曲です。
2年ちょっとお付き合いした方との実体験が元になっています。
Invisibleとは「見えない」という意味ですが、恋って「盲目」から始まる。
悪いところなんて見えない状態である意味相手に幻想を抱いている。でも実際に関係が長くなったり一緒に住んだりすると、最初には見えなかった相手の悪いところや嫌いなところが目立ってくる。そこでうまく感情のもつれを解消できないまま進むと、目に付く悪いところを前提に、有る事無い事まで嫌な被害妄想に繋がってしまって、現実の相手の本当の姿が見えていないで怒りが膨らんでしまう。
そこまでくると自分にも相手にも、愛が毒になってしまう。
もう相手を幸せにすることができないならば、自分自身が去って「見えない」状態になった方が良いのではないか。そんな悲しい葛藤が描かれています。

MVでは自分で監修して、憧れだったコンテンポラリーダンスにも初挑戦しました。
監督は、ジェームズブラウンのMVやメルセデスベンツなどのCMも手がけるClint Mourino、振り付け・ダンサーは映画「グレーテストショーマン」に唯一の日本人キャストとして出演した、Yusaku Komoriさんにお願いすることができ、この悲しいラブストーリーが結果的にとても美しい映像にもなって嬉しかったです。


10. I cover you


日米の文化の違いと、恋愛における文化の違いのダブルパンチで、コテンパンに打ちのめされて、一時期全ての自信を失ってしまいました。
「もう二度と音楽家としては再帰できないかもしれない。」と本気で覚悟をしたくらいのレベルで!
今までどう音楽業界で生き抜いてきたのか、自分が何を好きだったかすら思い出せませんでした。日本で生まれて培った全てが自他共に否定されて、一旦完全に崩れ去ったんですね。

でも今となっては、その自信喪失は新しく生まれ変わるのにとても重要なプロセスでした。
日本で重ねてきた経験や自信が全部粉々になることで、改めて「文化や環境に左右されない今の素の私ってどんな人間なんだろう?」と、一から見直した上で、丁寧に選択し直し始めました。
そんな再生のために、「自分を愛する」プロセスの中で久しぶりに書けた楽曲でした。

G.ボッテジーニ作の「エレジー」というコントラバス用に書かれたクラシック曲をふと聴いた時にインスピレーションを受けて降ってきたメロディに、傷つき疲れ果てた自分の中の小さな女の子にそっと「ごめんね、そばにいるからね」と声をかけ続けるメッセージがあいまったあたたかい曲です。

11. Perfect Imperfection

「I cover you」と合わせて「ご自愛シリーズ」の一環として去年夏にリリースした最初のシングルです。コロナでロックダウンになった頃にちょうど制作をしていて、それまでのように外に出て人脈作りができないので、初めてオンラインでクリエイターを探し出しましたが、依頼した音楽プロデューサーのDibs(LA在住)が本当に素晴らしくて、アメリカでの最初の代表曲ファできたと感じました。

片耳が生まれつき重度難聴だったり、アスペルガー症候群のために友達を作れずにたくさんいじめられたりと、子供の頃から「自分らしく生きる」ということがとても難しかった頃から、「そのままの君が好き」というメッセージが私の音楽人生でのコアメッセージになっていったのですが、上記の自己再生プロセスを通じてやっと「人生最大(最低?)のどん底」を乗り越え始めたかな?という頃にふと降ってきました。

「君とずっと一緒にいるのは誰か?それは君じゃないのか?」
「だから、君は君が、不完全さも含めてそのままで完璧であると知るべきだ」

というメッセージが、考え方だけでなく歌い方もコロナ中の自主練の賜物か、脱皮できて、魂の雄叫びのように歌われていると思います。新生しほり誕生の合図だったのかも?

MVは、ロックダウンが明けた瞬間を狙って、去年の夏にLAで撮影してきました。
ジョシュアツリーという砂漠地帯にある壮大なパワースポットで踊った後に、水深2mもあるプールの中で夜を通して撮影しました。
最初溺れそうだったり、体が冷えて死ぬかと思うほど過酷な撮影でしたが、スタッフの必死のサポートあって神秘的な映像が出来上がったのでそちらもぜひご覧いただきたいです!

12. FIRE

今年5月にシングルとして発売した、文字通りめちゃくちゃ熱いEDMロック曲です。
去年までの、英語での作曲が要領を得ずに探り探り、迷い迷い試行錯誤していたのが嘘のように、アメリカ版なんだけど、日本でやってきたのと同じ感覚で作曲できた手応えを感じました。
歌詞はネイティブチェックを何重かに入れるようにしているんですけど、新曲を作っていくほどに、直される箇所が減っていくので、その度に成長を感じられて飛び上がるほど嬉しいです。

不死鳥のように、新生しほりとして蘇って強く羽ばたく!!という勢いがあふれています。
日本では長年ピアノ弾き語りのしっとりした曲がメインで、「踊れる曲」というのはほぼ皆無(笑)だったんですけど、この曲はダンス要素もあるし( MVではダンスもしました!)、何気に生まれて初めてラップを取り入れたり、ビジュアル面も含めて今までのしほりでは絶対に考えられなかったような「遊び」が色々と詰め込まれていて楽しんでいただけるのではと思います。

13. Under the Skin

今回のアルバムのリード曲です。
コロナがひどく広がる中、黒人差別や、アジア人差別の問題が次々と起こり、大統領選とあいまってアメリカが真っ二つに割れて、国が破滅してしまうのでは?と怖くなるほどに緊迫していました。その深刻さは日本にいた時には全く想像もできないものでしたし、アメリカに住んでその深刻さを肌で感じても、安直にコメントしたりプロテストに参加したりは憚られるほど非常に複雑な歴史があることを痛感しています。

しかし別の面では、「アジア人として一致団結していこう!」というムーブメントもかつてないほどの熱になっていて、「日本人」という枠を超えて、「アジア人である」という意識が初めて自分に芽生えたことに驚きました。
日本では、どうしても中国人や韓国人を嫌う人が一定数いて社会問題となっていますが、アメリカに舞台を移せば日本人も中国人も韓国人もベトナムやタイ人なども、「アジア人」ひとくくりなわけです。それだけの理由で「国に帰れ!」と罵声を浴びたり、突然攻撃されたり、最悪なケースでは殺されたり。
そういう現実に対して抱えきれないほどの怒りや悲しみをみんなが抱えて、必死の思いでプロテストに出たりする人もたくさんいます。

でも、BLMでも同じですが、プロテスト自体は平和なはずでも、そこにもともとただ暴れたい過激な人や犯罪者が夕方以降にジョインして、略奪や暴動に発展してしまうのを見ていて、私はその可能性を作ってしまう場所に出向くよりも、音楽家として自分にできることはなんだろう?と考え、差別に対する怒りや悲しみや疑問を楽曲に託しました。

個人的には、魂やエネルギーで人や物事を見るので、肌の色や人種の違いで優劣をつけるという感覚が理解できないところがあります。

「肌を一枚はいだら、体が死んだら、みんな同じただの魂じゃん?」
「肌がこうだから俺が上!って思う、その精神性が非常に未熟だよねえ?」
でも、突き詰めたらただ差別する人を糾弾しても、絶対にこの問題は解決しない。
ゆえに、最終的には
「あなたには銃ではなく、ハグが必要なんだ
とにかく黙って、愛を示してみたらどう?」

というメッセージで締めくくっています。それが、渦中に色々と悩んで出した私なりの結論でした。

アメリカで成功して「日本人ももっとやれるよ!」って日本人の励みみたいな存在になれたらいいなぁ、と思って移住した面もありましたが、この件をきっかけに、「アジア人女性として新しいロールモデルのような存在になれたらいいな」という新たな目標ができました。

これまた素晴らしい才能を持つ音楽プロデューサーのTrey Vittetoe
と(オンラインで)出会うことができて、最も踊れるしほり曲が誕生しました。アジアンエキゾチックを感じるアレンジでもあります。

個人的には、初めて1つの文法ミスもなくすんなりと書けた歌詞でもあって、渡米してからの「NY編」の集大成として相応しい曲ができたなと嬉しかったです。

14. Would you marry me?

「結婚してくれますか?」というプロポーズの文言ですが、曲を聴いてみると「来世では、結婚してくれますか?」という別れの曲です。
実は、決定的には結論を描いていない「Invisible」の「その後」として描かれています。
逆にこの曲では、なぜ「そんなに好きなのに離れちゃうのよ!?」と言う感じがしますが、「Invisible 」と合わせて聴くと、「なるほど、好きだからこそ離れるしかなかったんだね」と。

一見優しく平和的なジャズ調曲のアコースティックサウンドに乗せて、果たせなかった旅行のプランや、辛かった喧嘩を振り返り、「幸せにできなくてごめんね。本当の運命の人を見つけてね、正直今はそんなこと考えたくもないけど。」と複雑な心の内を独り言ちる、等身大で自然体な曲だと思います。

15. Long Way Home

クラシック要素をベースに日本的なコードやスケールで綴る、元々のしほりらしい曲です。

渡米後しばらくは、「アメリカ版しほりになろう!」と頑張りすぎて自分らしさも見失って迷子になってしまいましたが、様々なカルチャーショックやしんどい学びを通じて、アメリカとか日本とか関係ない今の本当の自分らしさを見つけ直すことができて、あえて恐れずにアメリカ要素ゼロのしほり曲で、日本語で、故郷日本を想う締めくくりにしました。


最後に

こうして見ると、新曲のほとんどがLA在住の音楽プロデューサーとのコラボなんですけど、コロナ中でオンラインに頼らざるを得なくなって結果的に気づいてしまった。
「私、NYで3年奮闘してきたけど、もしかしてLAの方が近しいジャンルの仲間がいっぱいいるのでは!?」と(笑)

ビルボード6位にランクインしてしまったコラボシングル主宰のMason Liebermanも、リーグオブレジェンドで共作した作家のJason Walshも、LA在住なんです。

それで、ポップマーケットや、アメリカのアニメゲーム音楽業界もみんな中心地はLAだったことを改めて思い知って、去年の11月頃には家のリースが切れたら次はLAに引っ越そう!と決意しました。

図らずも1stアルバムリリースのタイミングでLAに拠点を移すことになりましたが、 最初にNYに来て体当たりでアメリカの厳しさを乗り越えてこられたのは、私にとって重要な足場作りだったと感じています。


まだまだ「変異」の途中なので、このアルバムの続きもぜひ注目していただけたら嬉しいです!


しほり

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