図書カードを作った私は無敵なので、ネットで本を予約して、受け取っては読んだり、読めずに諦めたりしている。この夏は色々読んだ。持前の引きこもり力を発揮して、予定がないときはほぼ家から出ず、ひたすら本を読んでいた。教養を身につけるとか、自己肯定感を上げるためとかじゃなくて、暑くて外に出たくないからクーラーをがんがんにした部屋の中で本を読んでた。本を読むのに疲れたら、ネットフリックスでドラマやアニメを見た。最高だぜ、と思った。

ガルシア＝マルケスの『百年の孤独』は分厚すぎて、村の皆が不眠症になるところで途絶えた。『モラハラ環境を生きた人たち』はすげーすげーと言いながらメモをして読んだ。モラハラをされて嫌な気持ちになったときは自分の気持ちを否定せず、受け入れるのが良いらしい。あとは、川上未映子さん『あこがれ』、くどうれいんさん『氷柱の声』、國分功一郎さん『暇と退屈の倫理学』、小川哲さん『ゲームの王国』、森下典子さん『日日是好日』、リチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』、福岡伸一さん『生物と無生物のあいだ』を読んだ。小川さんの『ゲームの王国』は輪ゴムに輪廻転生を見出し、人の死を予言することのできる少年がでてきた。天才だなと思った。リチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』も分厚すぎて、借りたのは良いけどほぼ読んでない。生命は個を生かすときと種を生かすときに利己的になるらしい。『利他』っていう言葉を最近よく耳にするから『利己』的な遺伝子を読んでみよう！と張り切ったものの全部読み切れなかった。そんなもんやろ、と思った。

リディア・デイヴィス『分解する』

この人、まじでまじでまじで、天才だと思った。天才を多用しすぎかもしれないけど、天才だった。この人は人であり、物であり、性別も人種も飛び越えていって、あなたは私ですか？という気にさせられる。短編集になっていて、一つ一つがかなり短い。４行くらいの話もある。

一番最初の「話」が秀逸だった。仕事から帰ってくると、彼がいなくて今日は来れなくなったと言われる。彼の家に行ったら彼はおらず、家へ戻り、電話をすると「元カノと映画観に行ってた」と。翌朝５時に出発しなくちゃいけないのに、彼のことが気になって準備ができず、電話で喧嘩する。もう一回電話をかけると出なかったから、再び彼の家に行く。すると、家の前に車が２台止まっている。呼び出すと家から彼が出てきて、「電話してるときは彼女はいなかった、あとから来た。なんか悩みがあるらしい。他に言える人がいないから聞いてる。他意はない。でも、きっと信じてくれないんだろうね。」と言い訳をされる。私は彼に言われたこと、そして起きたことを整理する。整理しながら、この人は私に怒ってるのか、彼女が好きなのか、どのくらいか、私が好きなのか、どのくらいか、この人は私をどれくらい平然と裏切ることができるのか、そのあとでどれくらい平然と嘘がつけるのかと考える。

もう少し長いけど、ほぼオチまで書いてごめんよ。思考の辿る道がすごかったし、点が線になる感覚がおかしかった。整理する頭の中の描写が冷静に、事実だけを淡々と並べていて、そこがまた良かった。

孤独な女がいて、テーブルの上には魚がある。女は今日してしまった過ちを後悔している。女は冷めていく魚をとても食べる気にはなれない。でも、骨を抜かれ、銀色の皮膚をはがれてじっと動けない魚も、かつて経験したことのない孤独を感じている。

っていう話も面白かった。女のことを描写していると思ったら、魚やったんかい！という。そして、その風景が目に浮かぶ。リディア・デイヴィスさんは人になったり、物になったり、言葉の中で自由自在に姿を変える。孤独な中年男性の話もあれば、フランス語教材に例えながら物語が進んでいく話もある。あなたそんなに武器を持っているんですかー！天才。まさしく、天才だと思う。私が天才なんて言ったら烏滸がましいんだけど。いや、私が見ていた世界なんて狭いでございましたわ。視野せまお。視野せまこ。この人が持っている圧倒的な想像力。想像力よ。。

今は夜中の３時半を回ったところです、はい。頭がぽけーっとしてくる。この夏は家から出ず、本とネットフリックスやUNEXTで体を構築してきたから、この前の稽古のアップで筋トレをして、次の日筋肉痛すぎて、早歩きができなかった。今も出来ない。あと、深夜にkindleで買った「ちひろさん」っていう漫画がめちゃくちゃいいよ…。読みなよ…。

最後に、私が最近覚えた言葉を羅列するね。人煙まれな、該博、かかずらわせた、嘆賞、鶏冠石、進取の気象、山刀、舷、策具、装甲、極彩色、演繹、苦心惨憺、思慕(しぼって読むのすごくない！？)、蹂躙。ははは。自分で自分をすごいと言うシステムだぜ。進取の気象の意味は忘れちゃったぜ。使った方がたぶん覚えるだろうな。苦心惨憺だぜ。しぼしぼしぼ。かかずらわせたな、寝ます。おやすみ！