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サーモンの塩辛とかいう心のお薬

「お兄ちゃんから、お土産届いたよ」

4つ離れた兄は地方にひとり暮らし。たまに、仕送りの代わりに美味しいものを届けてくれる。
今回も、お菓子やお惣菜が届いたようだ。
ここで私は、運命ともいえる出会いをする。

冷蔵庫には封を切られていない瓶がどどんと二本構えている。チョコがパックのまま、暑さに溶けないように身を隠している。それにかまぼこのバラエティパックまでみちみちに。
母もそうなのだが、うちの人はみんな多く買ってしまう癖があるらしい。母と二人で消費しきれるのか?
二本の瓶詰に印字された”サーモン塩辛”の文字。とにかく、今日のテーマはこの子についてである。この子はご飯のお供としてずば抜けた才能を持っている。

かちゃかちゃと瓶のふたを回す。
とっぷりとしたサーモンの切り身が、イクラできらきら彩られている。鮮やかで美しいお姿。
ほかほかご飯にのせていただけば、あら不思議。不安な気持ちはみーんなどっかに行ってしまった。残ったのは次のひと口への期待だけ。こ、これがエクスタシー???
サーモンのたぷたぷもイクラのぷちぷちも心地よく揺蕩う。いい塩味がご飯に伸びる手を進ませる。ご飯、口、ご飯、口、を繰り返していたらお茶碗は空っぽになった。
そうか、物には限りがあるんだった。また次のご飯が楽しみだ。バイトがんばろう。

この子は、私の人生に彩りを与えた。生きる活力をくれた。いまや心の処方箋である。


のみぐすり  しいだ 様
1日 2回  朝・昼  食事中
”サーモン塩辛”

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