見出し画像

クラシック音楽はいつごろの音楽なのか?

“クラシック音楽”を少しずつ知るマガジン


冒頭のまとめ

わたしたちの知る「クラシック音楽」のはじまりは、17世紀のヴィヴァルディやバッハのバロック音楽後期から19世紀後半エドヴァルド・グリーグらの国民楽派くらいまでの間の音楽。


「クラシック」っていうけどいつ?

クラシック音楽っていつの時代の音楽なのか?ちなみに英語では「クラシック」ではなく「Classical Music」と言います。バッハやハイドン、ヴィヴァルディなど著名な音楽家の名はしれど、彼ら・彼女らがいつの時代のひとたちなのか?前後も含めてなかなかわからないままではないでしょうか?わたしはそうでした。そもそもどれが誰の曲ってこともわからないでいました。今回は、クラシック音楽の時代ということを大雑把に把握していきたいと思います。

クラシック音楽の歴史は大きく分けると8つ

クラシック音楽の歴史を8つに分けながら、それぞれにどんな音楽家たちが居たかをざっと観ていきましょう。

(1)中世西洋音楽 (6〜15世紀) Medieval

宗教関連の音楽とそれ以外の世俗音楽があります。宗教関連は、主に聖歌。そのひとつが、グレゴリオ聖歌(Gregorian Chant)。グレゴリオ聖歌は単旋律。単旋律とは、モノフォニー(monophony)で、1声部しかない音楽。世俗音楽ならトルバドゥール(男性)やトルヴェール(女性)という歌い手によるものがあり、これらは主に騎士道や宮廷愛(コートリーラブ)などをテーマにしたもの。9世紀ごろになるとスイスで多声音楽が始まります。

(2)ルネサンス音楽( 15〜16世紀) Renaissance

ルネサンス音楽は、ヨーロッパにおいて、15世紀から16世紀のルネサンス期に作られた音楽。ルネサンス(Renaissance)とは、フランス語に「再生」や「復活」を意味する言葉で、その当時にとっての古典であるギリシャやローマの文化の復興を目指した文化運動です。14世紀にイタリアで始まり、それからヨーロッパ全体に広がっていきます。ちなみにレオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)は、1452年にフィレツェで生まれて1519年にフランスで死去しています。

レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452–1519)

ルネサンスはイタリアの教皇周りが運動の中心でしたが、音楽は中期までフランスのブルゴーニュとフランドルという現在のフランス、オランダ、ベルギーに重なる地域が中心でした。

こちらがブルゴーニュ楽派のデュファイの曲。

このようにルネサンス音楽は、まだ現代のわたしたちが「クラシック音楽」として聞く領域ではないもっと古い音楽です。


(3)バロック音楽(17〜18世紀)

この辺からようやくわたしたちが知る「クラシック音楽」の始まりあたり。英語圏では、このいわゆる「クラシック音楽」に相当する期間の音楽を「The common practice period」といいます。この期間に現代におけるクラシック音楽に共通する形式や技術などが形成された、という意味で「Common practice period」というわけです。ちなみに「The common practice period」は、このバロックとん持ちに続く、古典派、ロマン派そして印象主義音楽を含んだものです。

バロックはは1600年代からはじまりますが、日本ではではちょうど江戸幕府が始まったころです(1603年)。

バロック(仏英: baroque)とは、ポルトガル語の“barocco”が語源で、「いびつな真珠」という意味でした。派手すぎる装飾の建築を批判するための言葉として、18世紀に登場したことばで、当時から「バロック」と称していたわけではありません。カトリックの復権を目指すながれで発展した美術様式です。バロックには、かのウィリアム・シェイクスピアも含まれます。

バロックにどんなニュアンスがあるのかというと「劇的な感情の表出」。変化が激しく、移ろいく流れなど。詳しくは「バロック」について書いたこちらの記事に書きました。

https://note.com/shijimiota/n/n0eff3ce6ebea

この時代の音楽家と言えば、まずアントニオ・ヴィヴァルディ。ヴァイオリン協奏曲『四季』が有名ですが、かれはカトリックの司祭であり、劇場支配人でもありました。

ヴァイオリン協奏曲『四季』

ヴィヴァルディはバロック後期です。ついで、バロックといえば、名が挙がるのが、ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685年 - 1750年)。

こうみえて、バッハは、やんちゃで反時代的で、当時はラディカルな存在でした。バロック音楽の中核をなすオペラはまったく作曲せず、休暇はながびかせるし、教会に無許可で女の子を入れて歌わせたりとけっこうやんちゃでした。そんなことまってバロック音楽=バッハという捉え方は、あまり正しくありません。でもバッハはバロック音楽の時代の人というのは正しい。

ちなみにクラシック音楽の楽器としてすぐに想起されるピアノは、バッハの時代でぎりぎり登場するもので、バッハの曲は、オルガンやチェンバロで演奏されていました。

ピアノの発明は1700年ごろ

ピアノを発明したのは、バルトロメオ・クリストフォリ(Bartolomeo Cristofori di Francesco1655年–1732年)で、彼はフィレンツェのメディチ家に仕えいた楽器製作家でした。

もうひとり、バロック音楽の音楽家として挙げておきたいのは、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(Georg Friedrich Händel 1685 - 1759年)。ドイツ出身で、イタリアで成功した後にイギリスで長年活躍し、イギリスに帰化した音楽家。『メサイア』が有名。

ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(Georg Friedrich Händel 1685 - 1759年)


『メサイア』


(4)古典派音楽(1730年代–1820年代) Classical

古典派になってくると、わたしたちがイメージするクラシック音楽の中核、真ん中あたり。古典派の音楽たちの名を挙げていくと「そうか、これが古典派かぁ」というイメージを想起して把握しやすいと思います。特に有名な音楽家たちに限って列挙していくと

  • ヨーゼフ・ハイドン(1732–1809)(77歳没)

  • ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756–1791)(35歳没)

  • ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(1770–1827)(56歳没)

  • フランツ・シューベルト(1797–1828)(31歳没)

古典派音楽はどういう時代背景が有るのかと言うと、理性を重んじた啓蒙時代というもの。

啓蒙時代 The Enlightened Age

バロック時代に注力されていたキリスト教(カトリック)からの揺り動かされるように、聖書や神学から離れて、理性・悟性というものを意識が向いた時代、それが啓蒙時代です。プロテスタントとカトリック、ハプスブルク家(オーストリアとスペイン)とフランスのブルボン家との抗争などを火種として起きた三十年戦争というものが1618年から1648年かけて続きました。この戦争が終わったあとという流れから、絶対主義王権と重商主義が確立した時代が、この啓蒙時代でもあります。

啓蒙時代に活躍した思想家たちは、イングランドのジョン・ロック、スコットランドのデイヴィッド・ヒューム、フランスのヴァルテール、ドニ・ディドロ、モンテスキュー、ジャン=ジャック・ルソー、ドイツのヴィンケルマンなど。

古典派音楽は、この啓蒙時代を背景にして、合理が追求され、ソナタ形式というものが発展していきます。

ソナタ形式

ソナタ形式(sonata form)とは、楽曲の形式の一つで、構成は基本的に、

序奏→提示部→展開部→再現部→結尾部

となっており、二つの主題が提示部・再現部に現れるもの。

古典派音楽の時代には、交響曲や協奏曲、ピアノソナタ、弦楽四重奏曲が多く作られました。

交響曲(Symphony)

管弦楽によって演奏される大規模な楽曲。

協奏曲(concerto)

今日では主として一つまたは複数の独奏楽器と管弦楽によって演奏される楽曲。concertoはイタリア語で「コンチェルト」と読む。

ピアノソナタ(Piano sonata)

ピアノ独奏によるソナタのこと。原則として3ないし4楽章から成り、第1楽章はソナタ形式。ソナタの小規模のものをピアノのためのソナチネと呼びます。

こちらはベートーヴェンのピアノソナタ『幻想曲風ソナタ(Sonata quasi una Fantasia)』。『月光ソナタ』と呼ばれるのはベートーヴェンの死後のこと。ドイツの音楽評論家、詩人であるルートヴィヒ・レルシュタープ(Heinrich Friedrich Ludwig Rellstab)がこの曲の第1楽章を「スイスのルツェルン湖の月光の波に揺らぐ小舟のよう」と表現したのが契機。

弦楽四重奏曲(string quartet)

弦楽四重奏(主に2本のヴァイオリン、1本ずつのヴィオラ、チェロ)による楽曲。構成は基本的に、急→緩→舞→急の4楽章からなり、第1楽章はソナタ形式。

音楽家たちが独立し始めた時代

この古典派音楽の時代から音楽家たちは、自立を試みていきます。つまり教会や宮廷に所属して収入を得るのではなく、自分で稼ぎ始めます。しかしまだまだそれは難しく、モーツァルトをして「忙しすぎる」という手紙をしたためさせるほどでした。

(5)ロマン派音楽(1800年代初頭–1900年代)

古典派音楽をロマン主義(Romanticism)の精神によって発展させていったほぼ19世紀のヨーロッパを中心とする音楽。ロマン主義とは、理性重視だった古典派からの反動で、感受性や主観に重きをおいた思想です。恋愛賛美、民族意識の高揚、中世への憧憬といった特徴をもっています。ロマン派音楽の代表的な音楽家たちは、

  • ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(1770–1827)(56歳没)※古典派とロマン派をつなぐ過渡期の作曲家の一人とされる

  • フレデリック・ショパン

  • フランツ・リスト

  • フェリックス・メンデルスゾーン

  • ジョアキーノ・ロッシーニ

  • ニッコロ・パガニーニ

  • フランツ・シューベルト

  • クララ・シューマン

  • ロベルト・シューマン

  • カール・マリア・フォン・ウェーバー

  • アントン・ブルックナー

  • ヨハネス・ブラームス

  • ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

  • カミーユ・サン=サーンス

  • モデスト・ムソルグスキー

  • アントニン・ドヴォルザーク

  • ヨハンシュトラウスⅡ

  • リチャード・ワーグナー

  • ベドルジフ・スメタナ

  • リチャード・シュトラウス

  • リヒャルト・シュトラウス

  • マリア・マリア・フォン・ウェーバー

  • グスタフ・マーラー

  • ジュゼッペ・ヴェルディ

  • ジャコモ・プッチーニ

  • エドヴァルド・グリーグ

  • セルゲイ・ラフマニノフ


最後のまとめ

バッハといえば、まあまあ破天荒で、当時はどちらかというと彼の子どもたちのほうが有名でした。冒頭でも触れたように彼の作品が脚光を再び浴びる機会を設けたのはフェリックス・メンデルスゾーンです。メンデルスゾーンは、ドイツのロマン派の音楽家で38歳という若さで亡くなってしまったユダヤ人なんですが、しゅっとしていて美しいです、佇まいが(ポートレートから伺うにですが)。メンデルスゾーンについてもここでいつか触れたいと思います。バッハの曲は、非常に数学的で、どのあたりが数学的かということに注目して聴くとさらにおもしろいのでバッハについてもやっぱり深堀りして触れてみたいと思います。今回は、無伴奏チェロ組曲がこうして多くのチェリストに演奏されるものにしてくれたパブロ・カザルスにちょっと触れてみました。またカタルーニャって地域も興味深く、こんな本を以前に読みました。


参照



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?