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草いきれ吸う

暑い。

空き地に鬱蒼と生い茂る雑草を見ては、そこに入り込み湿った足元を想像する。そして立ち込める濃い草いきれ。夏が、近づけば、草木さえ熱い息づかいをあらわにする。

午後の生ぬるい風を全身に受ける。日がまだまだ高いことに安心をする。遠くの松の木に留まる黒い鳥がくあ、と、無く。3時。透明なビニール製の日除けに纏うように鈍く張り付く春の日差しはまた、ぼくを眠らそうとも、起こそうともした。

そして静かに風が休む。

凪いだ後。春の午後の陽気は尚際立ち、その奥底にもはや夏さえ秘めていることを、知る人ぞ、知る。僕はその雑草生き生きと生い茂る、小さな公園に立っていたかった。まだ蔓さえ延びつかない公園のベンチの庇、ところどころ錆びたそれの純白の面影はまた、夏の思いを誘う。

反射した日差しの強さ。見つめられないくらいの、夏の。白銀に煌く庇の支えと、濃い緑の野草の絨毯、その上を再び心地よく過ぎ去るあの薫風。

もう一度深呼吸する。

もう一度目をつぶる。

視界と脳裏の、縮まった距離に僕はまた、にやり、にやけてしまう。


そんな日だ。

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