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夏待ちかねる鼻歌を

1青い夜に風になってさ

みつる雨のたまり場に、陰る言葉の散らす海

まもなく晴れて月の手が 伸びる深夜の青い空

船を出す ぼくたちまで

捨てきれない荷物を抱えて沈む片側の

バランスはいつになってもとれやしない

漕いで行こう

いつか沈むその海の底

逆さに沈めば兆す陽の日に


2数多雨の降るフシカ

知らん顔のぽっけ 俯く顔まで入れ込むのさ

けれど傘が持てない 水たまりに移るよ殻よ

殻よ

数多雨の降るフシカ 僕の名前は

僕のいうように今変わって 水たまりの輪

輪 輪 芯から変わるのだ ありがとうフシカ

けれど空が見えない 生きてみたいさ空を浮かべて

頭上に浮かべてさフシカ もう少し 僕の名を

美しく書き換えておくれよ あの流れる雲をそれにして

浮かんで飛べたらそれでいいんだ 空に近づく


悲しいかな 感情をハサミで切り離したら手のひらから浮くか

其れとも沈むか 沈んだら 抱えた量の手を透けて

ゆっくりゆっくり足元の水たまりに

水しぶきさえ上げず

鏡面に溶け込むようなフシカ そうなんだね


夕方の空からゆっくり暗雲が掃ける

縮こまった個体に分裂したそれはやがて力を失い

確かな夜を連れてきて …雨が上がってしまうよ フシカ

           …空が晴れてしまうよ フシカ

静かにしておくれ

つま先に一本刺さったままの雨粒の矢がいたいのだ

留まらないでくれ フシカ

浅い川のほとりに夜影をいつからか

君に惹かれて辿るあすみ


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