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指揮者修業、その6

さてさて、月に3団体のアンサンブル・レッスンと指揮を通年していると色々と気が付く事が自然と増えてきます。
まず、本番前まであちこちをチェックしているつもりでも、どうしても目が泳いで焦っているメンバーがいます。決して同じ人ばかりではなく、何かのはずみで誰でもD.Sのセーニョマークがto Coda のCodaが見慣れている譜面でも見失う事はあるのです。

練習中はもう大きな声で「はいはい!D.S戻りますよ!12小節ですよ!大丈夫かな?」
などとD.Sが来る2~3小節から声掛けします。慣れ来たら勿論もう何も言いません。
でも、落ちるメンバーがまだいると真剣に何が起こっているかを考えます。
勿論人間ですから前日の寝不足でぼ~っとしていて的な事はあります。
でも、諦めないで必ず何かの原因があると探ることは大事で、例えば1.2括弧があって1括弧の前(2括弧に飛ぶ前ですね)が難しくてやっと弾き終えて2括弧に入ると、2括弧が1小節しか無くて直ぐにD.S!そしてセーニョがまた中途半端な位置にあったりすると、これだけで複合要因が多すぎますよね。

私ならここでの原因を練習中によく説明して置いて、1括弧の前の2括弧に飛ぶときに、すべての雰囲気(2括弧飛びますよ!そしてすぐにD.S!セーニョ位置チラ見してどこかは確認できてますか?)を醸し出します(笑)
そんな複雑な雰囲気を完璧に醸し出せるかというと勿論出来ません(笑)
でもそこに行くまでの注意喚起と、出来るだけの事をするのが指揮者の仕事だと思います。
例えば、指揮者がその本番中の大事な場所で「後ろの前列でさっきからカシャカシャとビニールの音がうるさいな、飴でも探しているのかな?」と考えていて、気が付いたらセーニョマークに戻っていたでは絶対に済まされません。
何故ならそのために楽器も弾かずに皆の前で仕事をしているからです。

でもその逆に、残念な場面に出くわすことも、、、。
(2括弧飛びますよ!そしてすぐにD.S!セーニョ位置チラ見してどこかは確認できてますか?)の場面で皆を見渡すと大事な瞬間に何故か足元を見ているメンバーが!チューナーでも落ちたのでしょうか?
予想の通りその方はしばらく演奏には戻ってこれませんでした。

このようにタイムマシーンでは無いですが、指揮者は時間軸を演奏者より早めに進んで全ての合図を出しているので、色々な事が見えてきます。
オアスティナートの様に繰り返しが多く、箱分け(フレーズなどで数小節単位で区切る)してあっても、同じフレーズが続くとやはり不安になり目が合うと「今何小節目ですか?」的なまなざしを送ってくるメンバーも多いです。
基本的に右ききであれば指揮棒を右に持ち、Tuttiなどで皆が揃うところ以外は左手は空けておきます。と言うのが両手で振ってしまうと他の情報が出せないのです。例えば別パートの入りの指示、ダイナミックスの変化、歌いまわし、ヴィブラートなどなど。

しかし、ここでの小節の回数があまりに皆さんが不安そうだと、客席から見えない場所での指揮者カウンターが発動します。小節ごとに自分のおなかの前で握ったグーの状態から指を1.2.3とたてて行くと、皆さんチラ見して分かるわけですね。(幸い私の体は横に大きいので客席からは見えません)
ところが、しばらく練習が進むともう誰も見てません。「もういいのかな?」とやめていると急に本番で「先生!いまどこですか?」という目線が来ます。(本番の緊張感でしょうね)
これに笑顔で進行中の小節の数の指を直ぐに出せないと、皆さんからの私への信頼が崩れます。
もっとも、これは愛好家のアンサンブルの指揮をしているために行う行為で、プロのオケを振っている人がやっているのを見たことがありません。当たり前ですね。(笑)
でも逆に言えば愛好家のギターの独奏はうまいのに、ソルフェージュが苦手で合奏になると急に出入りが分からなくなる方も多いので、なんとかその方々の手助けになればと、今日も練習しながら指揮の趣向を懸命に考えております。

続く


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