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講師のおすすめ本④~「愛」にまつわる本~

こんにちは、志高塾です。

今から3年前、2020年の2月に募集したおすすめ本のテーマは、「愛」でした。今回は、その時に集まった紹介文の中からいくつか厳選してお届けします。

一つ目は、社員の徳野が学生講師時代に書いた紹介文です。
二つ目は、2年前まで勤務していた学生講師による紹介文です。

「愛」の定義やかたちは人それぞれ。
でも、作品に対する「愛」の深さは、どの文章からも等しく伝わってきます。

徳野のおすすめ本2選

①『レンゲ畑のまんなかで』富安陽子(小学校中学年以上)

ある日、小学2年生の悦子はどことなく独特な雰囲気をもつ女の子・なつきに出会います。いつもぶっきらぼうで、学校にも通わず、「魔女」に囚われていると言い張るなつきに悦子は最初こそ戸惑いつつも、遊んだりおやつを食べたりすることで彼女との絆を深めていきます。しかし、なつきが弟を恨むおまじないをしてしまったことで大変なことが起こってしまいます....
語り手の悦子のほうは比較的のほほんと生きてきた一人っ子です。だから、似たような境遇の同級生たちとなんとなく遊ぶのが当たり前だと考えていました。その中で、自分とは正反対の環境にいるなつきの存在に驚きます。しかし、悦子にはなつきを異端視せず、彼女が漏らす不平不満を独自の視点で諭すという誠実さがあります。惰性や保身に走ることなく相手にまっすぐと向き合う、これも他者への「愛」の普遍的な形のひとつではないでしょうか?

②『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』桜庭一樹(中学生以上)

中学生のなぎさは「生きていく上で必要なことしか考えない」と決心したにも関わらず、自分を人魚だと言い張る(またしても虚言ガール)美少女・海野藻屑に執着されてしまいます。なぎさは身勝手だけど健気な藻屑を鬱陶しく思いながらも、どうしても無視できません。しかし、次第になぎさは藻屑が抱える闇に巻き込まれていってしまいます...
この物語の読者は1頁目で大きな衝撃を受けることになります。そして、私たちはそのショックゆえに藻屑となぎさに切なさを覚えるのです。愛を求めたために大人になれなかった藻屑と、藻屑を救えないまま大人になってしまうなぎさの姿は悲劇にちがいないけれど、読者は彼女たちを美しいと思う。それは私たちが消える運命にあるものに「愛」を感じてしまうことの証拠なのかもしれません。

学生講師(OB)のおすすめ本2選

①『愛なき世界』三浦しをん(中学生以上)

洋食屋の見習い・藤丸陽太は、 植物学を研究する大学院生・本村さんに恋をします。しかし、本村さんはシロイヌナズナ(草)が大好きで「植物には思考も感情もない。私は、植物を選びました。愛のない世界を生きる植物の研究に、全てをささげると決めています。」と言い放ちます。恋のライバルは草だったのです!二人の周囲では、サボテンに熱中する後輩など個性豊かな人物も登場します。誰もが知りたいことに真摯に向き合い、様々な形の愛情をもって必死に生きています。読後、きっと毎日の食事や目にする景色が愛おしいものとなります。 

②『小さい“つ”が消えた日』ステファノ・フォン・ロー(小学校高学年以上)

舞台は威張ってばかりの“あ”さんや優柔不断な“か”さんという妖精が暮らしている五十音村。ある日、みんなに役に立たないと馬鹿にされた小さい“つ”は家出をしてしまいます。すると大変!人間も巻き込んで、誰も伝えたい日本語を発することができません。いなくなった小さい“つ”は無事に帰ってくるのか、可愛いイラストとともに目が離せません。もし○○が存在していなかったら?と少し考えるだけでも、見落としがちな大切なものに目を向けることができます。そのようなきっかけの一冊になってもらえたら嬉しいです。


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