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講師のおすすめ本⑥~ぶらんこ乗り~

こんにちは、志高塾です。

2か月ぶりに、講師のおすすめ本(こんな日に読みたい本)を再録します!

今回の文章を書いてくれたのは、以前の記事で引用した月間報告の作成者、学生講師の大瀧です。

彼女の紹介文の後に、社員である徳野のコメントを載せているので、合わせてご覧頂ければ幸いです。
またしても手前味噌になり恐縮ですが、2人の文章、じいんと胸に沁みてきます。

「報われない」「みじめだ」と落ち込むときにおすすめ

『ぶらんこ乗り』いしいしんじ 新潮文庫

天才児の弟はぶらんこに乗っているときの事故で声を失ってしまう。それと同時に動物の言葉にならない声が分かるようになってきた…。

弟はぶらんこに乗って人間と動物の垣根を超えてしまったのか。弟は浮世離れした存在となり、ひたすら動物たちの話を聞くのだ。

わたしの実家ではトイプードルを飼っていて、それが末っ子の弟にそっくりです。どんな具合にって「ごはん!眠い!これ買って!(ワンコは「なでろ」)」と三言亭主(「メシ、フロ、ネル」しか言わない亭主)かというほど欲に忠実。おまけに犬に賢悟(ケンゴ)なんて人間らしい名前をつけてしまい、それがまた弟と響きが近いものだからもう最悪。

けれども、いろいろな思考だとか「~こうあるべきだ」とかそういうものをはぎ取ったら、私も似たようなものだなと思ってどうしても2人とも憎めないのです。

打って変わって話は変わり、本文からの引用を。
「ときどき、じぶんがこのよでたったひとりじゃないような、ふしぎなさっかくにおそわれることがある。たとえばひをみるとき。ゆきのあきちにたっているとき。…ぼくはなにかにつながってる、なんてことを、こんなひとりのときにだけおもったりする。けれどすくなくとも、こっちからどりょくはしなくちゃ。ひとりだからって、いんきにとじこもっているなんて、てぬきだ。ずるい。」

何かにエネルギーを注ぐとき、どうしてもそれを誰かに評価してほしい、褒めてほしいと思ってしまいます。けれども尽力したことのほとんどは誰の目にも触れることはなく、結果も伴いません。そうすると、全て無駄で自分は孤独で、一人で生きているかのような気持ちになってしまう。しかし、そうではないのです。誰かは見ている。わたしは、心の中に住む、都合の良い神様が見ていると信じて、できることをします。それがお天道様でも亡くなった偉人でも、遠く離れた誰かでも、ものでも何でもいいんだと思います。でも、生きている特定の誰かに期待するよりわたしは信じることができる。

そのようなことを続けていると、結局、私が力を尽くすのは、それをしたくてしているだけなんだという気になってきます。だから、それに結果を求めたり、人を変えたりしようとしたりするのはエゴなのかもしれない。ただの優しさの押し売り。エネルギーの押し売り。けれども、そのエゴをときどき、万に一回でも「ありがとう」と言って買ってくれる人がいたらそれだけで嬉しい。そして、一人ではなかったことを知るのです。

陰気に閉じこもっていることの方が性に合う私が、それでも人を信じようとしてしまうのは、何にでも首を突っ込んでしまうのは、そういう人との出会いがしたいと願っているからかもしれません。

徳野による講師紹介

某雑誌で心理カウンセラーさんが「人づき合いは”ギブ&テイク”ではなく”ギブ&ギブ”が基本」と提言されていたのが心に残っています。
生活の指針にしたいアドバイスの一つであると同時に、生徒と講師の間でこれだけの関係性を築くには膨大な精神エネルギーが必要だと日々痛感もしています。

そして、大瀧さんが凄いのは、子どもたちへの”ギブ”に全力投球できる真っ直ぐさです。「責任感が強い」とも表現できるかもしれませんが、その一言には収まらない優しいパワーがあると感じます。

相手の課題を率直に述べながら心に寄り添う。叱咤激励のために「講師である自分にとって難しいこと」を臆せず開示する。
生徒たちはそういう真心や噓偽りの無さを”テイク”していく中で徐々に自身が”ギブ”していくことに目が向いていくはずです。

この場で改めて「ありがとう」と感謝を伝えたいです。
(あと、休息も大事にしてくださいね)

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