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069.読書日記/ガルシア・マルケス「わが悲しき娼婦たちの思い出」と私の思い出。

例によって、図書館を彷徨っていて、海外文学の書架でガルシア・マルケスの「わが悲しき娼婦たちの思い出」を見つけた。2006年に出版されている。本の見返しに「90歳を迎える記念すべき一夜を処女と淫らに過したい!」と言う帯の惹句を切り取ったものが貼られており、なんとなくゴーギャン的な嫌な感じもしたのだけど、ガルシア・マルケスは割と好きな作家なので借りてみた。

2004年発表、とある。最晩年の作品?

高校生の頃、「百年の孤独」とか「予告された殺人の記録」とかタイトルがカッコいいし、「ガルシア・マルケス読んでる」って言ったら、ダザイやソーセキが好きな級友にマウント取れる、というアホ丸出しな理由で文庫を買って読んでみた。…読んでみたけど、さっぱり理解できず、「理解できない」を知られたくなく(だってノーベル賞だし)、その読書はなかったものとした。

それから幾歳月。何繋がりでか、キューバ革命やチェ・ゲバラに興味を持って、その辺のテーマの本を乱読した後、ふとガルシア・マルケスの本を再度手に取ってみると、とても面白く読めて、大人のファンタジーというか、南アメリカにエキゾチックな幻想旅行体験をしたような気分になって、なるほど!こんなに面白いからノーベル賞だったのね、と腑に落ちたのだった。
物語を読むのに、アタマの中で何かしらイメージを作らないと理解できないタイプなので、高校の頃は南米に対する知識がなさすぎて、その物語に入るドアを開けられなかったのだと思う。

ちょうど2回目のガル読書の翌年くらいに映画「コレラ時代の愛」が封切られて、映画も楽しんだので、三十代半ばごろのことだったかと思う。

映画、面白かったのにあんまり評判にはならなかったみたいで残念だった。


で、3回目のガル読書「わが悲しき娼婦たちの思い出」である。なんかね、楽しむ前に読み飛ばしてしまった。 川端康成の「眠れる美女」(大学の時に読んだ記憶)にインスパイアされて書いたそうで、売春宿で90歳のジジイが14歳の裸の処女に添い寝しながら初恋(?)する、そのジジイは50代で寝た女性の数が514人を超え、商売女かどうかにかかわらず寝た女にはお金を払うようにしていた、って。
どーもその処女の気持ちや514人の気持ちを考えると、あんまり楽しめなかったというか。若い時は心が強靭なのと無知なのとで、娼婦が出てくるとか平気だったけど、今は貧困女子の社会ルポみたいなのをたくさん読んだので、やっぱりいい気持ちがしないというか、その辺のことが気になりだすと読書に集中できませんね。
少し前に東京藝大美術館の「大吉原展」が炎上してましたね。展示の意図に反して、遊女のことを思うとそこで発展した美術を楽しめない、という気持ちはよくわかる。「お気持ち」の問題は難しいのだ。

トルティーリャを食べるフェルミーナ(from コレラ時代の愛)

東京の大学に進学した友人から「東京の男の子たちは、友だちの誕生日にお金を出し合って『風俗』をプレゼントする」と聞いた時は、別世界というかそれこそ映画や小説の中のトーキョーであんまりピンときていなかった。大阪の太融寺近くのビルに通勤していた時には、夕方に外国人の女の人が角に立っているのも嘘のように思えた。
だけどもスマホやネットが普及して、子どもでもエロサイトに簡単にアクセスできるようになり、地上波ではおっぱいは見られないけど(「不適切にもほどがある」で言ってましたよね)、インターネットにはなんでもござれで、それを見ていると、吉原はなくなっていないのか、私が別世界や嘘だと思っていたことは真実なのかと。「ニュースウォッチ9」でも円安で海外に出稼ぎ売春に行くニュースを取り上げていた。江戸時代みたいに、飢饉があったり親に売られたわけではないと思うけど、若い女の子が無防備すぎて、もう少し周りの大人が守ってあげられないものかと歯痒く思ったり、冒険したい若い女の子的にはありがた迷惑で「守られたくない!」と思うだろうし、一度の人生なのだから、思ったように生きていくしかないのかな、と思ったり。

…どんどん脱線してしまった。「わが悲しき〜」を読んでいても、このようにいろいろと思案が飛んでいって、集中できない読書であった。
この本にも「注釈」が付いていて、「コロニアル風」とか「トルティーリャ」「カサーレス」「アシュケナーゼ」等々。私はこーゆーのは雰囲気で読み飛ばすから、注釈なんていらないのにな、ほんとに知りたかったら調べるし、なんて思ってたら「膕(ひかがみ)」というシラナイ語句が出てきて、日本語だから注釈なしだ。洗濯する家政婦のスカートが短くて、むっちりとした膕(ひかがみ)に欲情して主人公がうしろから行為に及ぶ、というシーンなのだが、「膕(ひかがみ)ってなに!?イヤラシイところ?」と思って検索したら「ひざの後ろのくぼんでいるところ」であった。

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