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思った通りじゃないけど”最高っす”な出だし

*2023年6月末、4年半ぶりに一時帰国しました(アメリカ東在住です)


JFK空港を夜中の1時半過ぎに出る飛行機に乗ると、羽田に朝4時45分に到着する。

予約した時に、これはいいぞ、と思っていた。

夜中の便だから多分皆さん眠っているし機内は静かだろう。

到着したその夜に余裕を持ってライブ会場近くのホテルにチェックインして、うまくいけば休憩したり仮眠したりする時間が持てる。
そして早朝だからラッシュ時にかからずに電車で移動出来るだろう、そうしたら大きな荷物でも皆さんの邪魔にならずに動ける。

私は到着してすぐに大宮に向かう予定だった(今回の帰国はThe ALFEEのライブに35年ぶりに復帰するための帰国です笑)。
朝早いうちに移動して、駅近くのネカフェでシャワーを浴びて仮眠して、ランチの時間には一緒にライブに行く友人と会おうと思っていた。

大宮へは空港からモノレールか電車で移動して、そこから乗り換えて。万が一乗り換えのホームがめっちゃ遠いと困るだろうと思い、色んな手段をネットで探るという宿題もしておいた。
バスだと直で行けるけれど、始発は8時50分、と到着の4時間後なので残念だが候補から外す。

移動前に羽田でやらなければならないことは3つしかない。
ドルを日本円に両替して、電話用のSIMカードを買うこと、そして実家へのお土産の荷物を送ること。

大きなダッフルバッグ一つで帰ったが、その半分以上はお土産だった。
実家に送るものはあらかじめ分けてあり、それをそのまま箱に入れて送ってしまう。というのも私はそれから10日はライブ遠征の旅に出るために鹿児島には戻れない。弟や姪っ子に買ったお土産を持ったままの遠征は辛いので送ってしまうのだ。

14時間のフライトは快適に、羽田空港に予定通りの時間に降り立ち、ちゃっちゃとパスポートコントロールも荷物受け取りも済ませ、スムーズに外に出る・・・・あとは両替と、荷物とSIMカード! それが終わったら電車の切符!簡単、簡単!

いいね、いいね〜

・・・・ちゃんと計画を立ててどこに何があるかもわかっていたのに、SIMカードを買う場所を確認しようとその方向に向かうと、目的地の隣にシャワー室があるのが目に入った。

シャワー浴びたい

その欲求から計画は狂った。
そして私が羽田空港を出るのは6時間後になってしまう。

シャワー室の混み具合を見ると60分待ち、とある。
所用を済ませていたら60分くらいあっという間に経つような気がする。

そう思いたちフロアの反対側にある両替窓口に向かうことにした。
現金がないとどうにもならん(なるべくカードを使いわない旅にしたかった)。

そして1ドル139円というウホウホなレート(私が前回帰国した時は114円くらいだった)で現金を手に入れ、荷物を送りに向かう。幸い同じ場所でSIMカードも買えることは予習している。

両替から荷物へ向かう途中のベンチでダッフルバッグからお土産を出すことにした。出しながら、やっぱりこっちはライブで会う人たちに分けよう、とかこれは持って帰ろう、とか仕分けをしてしまう。ちょっと時間がかかった。

ようやくカートを押して向かった先は・・・・

長蛇の列

さっき来た時は誰も並んでなかったのに、今は軽く十五人は並んでいる。
どうやら中華圏からの飛行機が到着したらしく、皆さん早朝だというのに大きな声ではしゃいでいる。
すぐそばにあるシャワー室の待ち時間を確認すると1時間半になっている。

SIMカードがないと誰にも連絡できないのでとにかく列に並ぶが前後に並ぶ皆さんの大声が気になって仕方ない。
しばらく耐えた後に優しい店員さんに手伝われ、SIMカードを手に入れ荷物も送った。ふぅ。

さあ!!!シャワーを!!!

とシャワー室に向かうと待ち時間は2時間半になっていた。

シャワーが浴びたくて予定を変えたのにもう浴びる時間はない。用事は終わってしまったので2時間半待つのも嫌だ(そもそもなぜシャワー室に先に向かわなかったのかな、自分)。

ということでモノレールへ・・・・・
ここも長蛇の列。
じゃあ電車へ・・・・
長蛇の列。

もちろん待てばちゃんと切符も買えて乗れたのであろうが大きな荷物をたくさん持った右も左も分からない旅行者に紛れたくなかった。
切符の列にこっちから向こうから押されながら、大声で喚く人たちの中に立っているのも嫌だった。

静かなところに行きたい・・・・・

その時点でまだ早朝7時前。だがこのまま待っていても電車もモノレールも空くことも静かになることもないだろう。飛行機は次々に到着している。

インフォメーションに若いお兄ちゃんが二人立っていた。
テキパキと旅行者たちにあっちへ、そっちへ、と腕を伸ばしながら指示している。

”すみません、大宮へはモノレールと電車とどっちがいいでしょうか”

そう訊く私にお兄ちゃんは
”バスがいいっす!バスが簡単で最高っす!” と教えてくれた。

”バスは8時50分まで出ないので・・・” とぐずる私に追い討ちをかけるように

”シャワー浴びたりご飯食べたりしたらどうっすかね?” と提案してくれたので、羽田空港内のホテルに隣接している温泉について訊いてみた。

”高いっす、5000円・・・シャワー室はもっと安いけど” と私の懐を考えてくれる優しいお兄ちゃんだった。

が、私はもうその時点で羽田空港の喧騒に苦しくなっていた。とにかく静かなところに行きたい、風呂でも食事でもなんでも良いから静かなところへ行きたい。

5000円、上等!!!(そんなに意気込む金額ではない笑)とお兄ちゃんに ”・・・温泉行ってくる!” と別れを告げ、そのままお風呂に向かった。


温泉に近づくにつれ、静寂が増す。
美しいロービーを抜け、エレベーターで入り口まで辿り着く間、静かに開店準備をする人、静かに警備をする人、静かにホテルに向かう人。
誰の声も聞こえなかった。最高。

温泉の受付で一人の外国人女性が係員とやり取りをしていた。
係員は翻訳機(電話のアプリかもしらん)に ”大きい荷物は持って入れないのでこちらで預かります” と話し、画面を彼女に見せている。
彼女は静かに、うんうんと頷き、係のおじさんは静かにOK!とニコニコで荷物を受け取る。
私も大きな荷物がある。預かってもらうなら安心だ。
待っている間に小さなバッグに着替えとメイクセットを移し替えて、荷物を預かってもらい、女湯へ向かった。

静かだ、嬉しい

お風呂に浸かるとやっとホッとした。手足を伸ばして目を閉じるとようやく 帰ってきたー という気持ちになった。

露天風呂で外の風景を眺め、ジェットバスでブルブルしてもらい、気持ちの良い時間を過ごす。
お風呂から上がると自販機で牛乳を買って飲んでいる子を見た。
私もコーヒー牛乳を買って飲む。うまい。

脱衣所の向こうではヘアドライヤーをブーブー言わせている音がするが、それ以外の音はない。

髪を乾かして、休憩室に向かい、ちょっとだけ横になり目をつぶる。

羽田についてから早や5時間・・・・予定は狂いまくっている。
本当ならこの時間は大宮のネカフェで無料のカレーでも食べているはずだった。
隣の椅子で寝っ転がっているおじさんの小さないびきが聞こえる。
音はそれだけだった。


大宮へはバスで行った。10時50分のバス。

”バスが簡単で最高っす!”

あのお兄ちゃんの言った通り、バスは予定通り到着して、東京タワーが見える道を通り、ビルの合間を縫って、予定通りの時間に大宮駅に着いた。

羽田到着からちょっと予定は狂ったけれど、”最高っす” と思えたことがすでにたくさんあった。

日本、最高っす。

シマフィー


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