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グランドキャニオンで推しに30年ぶりに出戻った

3年前のこの時期、私は生徒22人を連れての日本旅行の準備で忙しく、さらには未知のウイルスの脅威とそれが私たちの旅行に与える影響に怯えながら毎日を過ごしていた。(*アメリカ東の私立校で教師をしています)

結局は出発前日に旅行はキャンセルされ途方に暮れたのだが、どうしても修学旅行に連れて行ってあげたい一心で路線を大幅に変更し、アメリカ南西部コロラドからニューメキシコ、アリゾナ、ユタ、ネバダを突っ切りカリフォルニアまでのバスツアーを決行した。
コロラドで大学・大学院を過ごしたことがあり土地勘があるためこの辺りに広がる国立公園や州立公園、温泉や観光地のアクティビティーをめぐる2週間のルートを2日で計画するのはなんとかできた。
その忙しさに、日本旅行が中止になった悲しみや悔しさ、どうにもできなかったやるせなさも薄らぎ、生徒たちにとっても新しい旅行を楽しみにする気力が出てきたのはいいことだった。

結果的には素晴らしい旅行となり、帰ってきてからも思い出話のネタが尽きないほどに色んな経験ができたので終わりよければ全てヨシ、だったのだが、先日写真を見ている時にふと思い出した。

2020年の3月から私は30余年ぶりに中高校時代大好きだったアルフィーにのめり込んでいる。
この旅行から帰るとすぐに学校は閉鎖、全てがオンラインになり毎日家にいる生活の中、楽しみなのは自分が日本を出てから疎遠になっていたアルフィーの30年分のアルバムを聴きまくることだった。

でもぼんやりとしてはっきりと思い出せないのは、私は何がきっかけでその時期に
アルフィーにまた出会ったのだろうか、ということ。
それを写真を整理していた時に思い出したのだ。

あの時、私はバスの一番前の席に座っていた。
ヘッドホンをつけて音楽を聴きながら、グランドキャニオンからの帰り道、うっすらとピンクに染まる空をぼんやり見つめながら、人生とは色々あるものでこれから生徒たち、そして私も、どんな辛いことやどうにもならないことに遭遇するのだろうかと考えていた。これまで続けていたいつも通りの日常はもういつも通りでなくなるのは薄々わかっていた。

2月のグランドキャニオンは人もまばらでまるで私たちだけのために存在してきたような雄大さに、遠くに見える谷底を覗き込んでいるとそれまでの疲れや色んな感情が噴き出してきて知らぬ間に泣いていた。
生徒たちが四方から集まると、涙は次々と伝染し、みんなで声を上げて泣いた。
彼らは心から日本行きを楽しみにしており、12年生はこれが最後の修学旅行で、これからの世界が伝染病でどう変わるのか想像もつかず、ひょっとするとこの中の誰ももう日本へ行けないのかもしれない。

♪朝日が、二人の影を残して、別れの余韻が心締め付ける 
Oh good bye my darlin' 最後の口づけで 愛を焼きつけた夜明けの・・・

その帰りのバスの中、一番前の席で前方に続くまっすぐな道をぼんやりと見ながら私はサブスクにThe ALFEEの”夜明けのLanding Bahn" があるのかを探し、一回だけ聴いた。
どうしてかわからないけれどこの曲を今聴きたいとわざわざ探し、その一度聴いて満足した。

残りの旅行中も帰ってからもバタバタと忙しなく、それからまたアルフィーを聴いたのはひと月も経った頃だと思う。ロックダウン中に有り余る時間の中、ゆーつーぶでぶらぶらしている時に見つけた映像からそのまま転げ落ちるように~like a rolling stone~アルフィーにハマった。

人生には不思議な巡り合わせとタイミングがある。
こうやって振り返りやっと思い出すほどなさほど重要ではない・直接的ではないきっかけが現在の私を作っているなんて不思議だ。

あのまま日本に行っていたらアルフィーに再び巡り会えてなかった

そう考えると、どんな出来事にも意味がありそれが影響して未来の自分が出来上がる と私が常々生徒たちにお説教している信念はそう間違っていないのが証明されたような気がする。

17歳と一緒に見た7000万年の時の流れが作り上げた自然美は、私の奥底に眠っていた17歳の自分をゆっくりと起こしてくれた。

The ALFEEの楽曲やラジオや配信番組にロックダウン中もその後も、現在も、パワーをたくさんもらい続けている。彼らがいなかったら一体何をしていただろう、それほどに彼らは大切な存在になっている。
もしグランドキャニオンでふと聴きたくなったのが違うバンドだったら、今日こうやって高見沢さんのラジオに聞き入っている自分はいないのだ、と思うと過去と未来と現在ってうまいこと繋がるもんだ、と哲学的な感慨に浸る。


君たちの青春がアルフィーなら、その青春は永遠に終わらせない

そう高見沢さんが言い続け、3人が元気で50年も活動を続けていてくれるからこそ、今日の私がある。
そんな風に考えると世界の始まりのような途中のような終わりのような、あの場所であの曲を聴きたくなったのは必然だった。

今年は35年ぶりにThe ALFEEのライブに参加する予定。
それに合わせて一時帰国の準備を進めている。
あの行けなかった日本への修学旅行は大きく形を変えて、今年の夏、3年越しに叶う。
私一人だけだけど、トラベリングバンドのThe ALFEEを追っかけて移動するごとに日本の素晴らしい風景や文化や人々に感動する学び多き修学旅行になるはずだ。

♪Darlin' come back to my heart サヨナラが言えない 込み上げてくる涙のせいか

グランドキャニオン、行ってよかった、ありがとう。

シマフィー



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