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がん診断からペットまで——「Genome Biz 2018」 #genbiz2018 参加レポート

ゲノム解析が技術的にも費用的にも簡単になった現在、ビジネスチャンスをつかもうと多くの企業や個人が関心をもっています。実際にどんなサービスがあるのかを知り、交流するイベント「Genome Biz 2018」に参加してきました。

登壇された方の会社サービスへのリンクと、話した内容を箇条書きにしてまとめました。

セッション1「最新ゲノムテクノロジーとサービス」

「DIYゲノムからゲノムブロックチェーン 海外ゲノムテクノロジーの動向 」
株式会社デジタルガレージ DG lab マネージャー 宇佐美 克明

企業をつなげて新たなサービスを生み出すところ。バイオテックのイベントを結構やっていて、僕も何回か行ったことがあります。これとか。

↑これは知り合いである司会のおねーさんから「来るよね?」と言われるがままに行ったようなものですが……。

・Googleの投資会社であるGoogle Venturesの投資先の3分の1がバイオ・ヘルスケア系
・バイオテックは計算能力の向上、センサー技術の発展、生物学での新たな発見によるコモディティ化
・現在のDTC遺伝子解析サービスはデータ活用に不安視するユーザーがいる
・ゲノム×ブロックチェーンなら自分でデータをもち、どのサービスに渡して報酬の受け渡しの管理もできる(はず)
・↑これをやろうとしているところはあるけど現実にはまだまだ。
https://nebula.network
https://www.lunadna.com

「ゲノム編集技術が切り開く新規産業」
株式会社セツロテック 代表取締役 竹澤 慎一郎

ゲノム編集受託サービスのところ。実は知り合いだったりする。
・受精卵エレクトロポレーションで短期間、低価格を実現
・主に研究者向けにマウスを提供
・将来的には養豚会社にもアプローチしたい(ブタのマイオスタチン遺伝子をゲノム編集で1塩基欠損させるとマッスルなブタになる)
・ゲノム編集産業を開拓するための技術的課題:動物種による違い、遺伝子機能研究そのもの、エピジェネティクス制御、オフターゲット効果、効率、Cas9以外の方法
・ゲノム編集産業の外的課題:国内法と国際条約の解釈の明確、社会需要と消費者の意向、海外の巨大資本力

(個人的に、遺伝子組換え作物よりゲノム編集作物のほうが安心・安全という表現には違和感。このあたりのロビー活動をうまくやらないと遺伝子組換えのような反発の二の舞になりそう)

「ペットのヘルスケアをゲノムで革新する」
アニコム先進医療研究所株式会社 取締役 石原 玄基

ペット保険シェア1位のグループ会社。
・ペット1頭あたりの飼育額が上がっている、特に医療費
・ペット保険の加入率は8%
・先端医療研究所では動物病院の運営や動物医療の研究をやっている
・保険とライフサイエンスの循環を目指している
・予防型保険に向けた取り組み:動物医療データを統計冊子として提供、遺伝病撲滅、腸内細菌の研究、疾患のメカニズム解明など

(犬のゲノムサンプル1万を解析すると、近交係数と保険請求額が高い相関があるとのこと。遺伝病のせいなのか、血統書付きのペットを飼うのは富裕層だから自然と治療費にお金をかけがちなのかは今回の発表だけでは不明)

http://www.bearholic.com

セッション2「ゲノム産業のレギュラトリー」

「医療とヘルスケアを取り巻く岩盤規制の実態」
中外製薬株式会社 田澤 義明

過激な表現が多かったのでなかなか書けませんが……。
・規制の意義は、有効性と安全性を確保して健康と生命を守ること
・ただし強すぎる規制は新規参入の排除や既得権の保持につながってしまう
・適度かつ適切な規制なら新たなイノベーションを生む役割もある
・守る規制と活かす規制のバランスが必要
・未病への意識を変えることも必要

「DTC遺伝子検査の規制・行政対応(MYCODEの経験)」
株式会社ディー・エヌ・エー 澤井 典子

ジーンクエスト、ディアジーン、ジェネシスヘルスケアと並んで真っ当なDTC遺伝子解析サービス。
・DTC遺伝子解析サービスは厚生労働省やPMDA(医薬品医療機器総合機構)の規制対象ではないからこそ企業体制が求められる
・DeNAヘルスケア事業の考え方:生命倫理の尊重、科学的根拠の尊重、個人情報セキュリティに対する厳格な対応、情報公開と透明性
・ITヘルスケアが発展するためには同業他社も必要
・ゲノムに対する意識はアメリカよりイギリスのほうが進んでいる。ステークホルダーと国民との対話が進んでいる

セッション3「ゲノム医療の現場」

「海外検査業界との温度差〜不妊治療のための子宮内フローラ検査の立ち上げと課題〜」
Varinos株式会社 代表取締役 桜庭 喜行

NGS(次世代シーケンサー)によるゲノム解析を受託するところ。子宮内フローラの研究も。
・子宮内はかつて無菌と考えられていたがラクトバチルス属が多くいることがわかってきた
・ラクトバチルス属が90%以上と90%未満で分けると妊娠率、出産率に有意差があったという海外報告(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27717732
・日本人でも似たような結果が得られたとのこと

「個人ゲノム解析の医療実装化における現状と未来」
株式会社ゲノムクリニック 代表取締役 曽根原 弘樹

千葉大学成果活用型ベンチャー。クリニックと付いていますが診療はしておらず研究と解析を行っています。
・医療機関を対象にして検体解析からレポート作成までを担当
・調べるのは27疾患59遺伝子。早期発見によって治療できる可能性が高まるため(http://grj.umin.jp
・ペンシルベニア州ダンビルでは9万2400人以上をエクソーム解析。前向きフォローによってステージ1のがんを診断できたケースも。

「医療分野におけるベンチャーの強み ~癌パネル検査を日本へ導入する取り組み~」
テーラーメッド株式会社 代表取締役社長 緒方 憲太郎

音声配信アプリVoicyの代表も兼ねる。
・アメリカのメモリアルスローンケタリングがんセンター(MSKCC)のがん遺伝子検査を実施
・ 順天堂大学医学部附属順天堂医院、横浜市立大学附属病院、東北大学病院がんセンターと提携してMSKCCに検体を送る窓口として機能
・2018年6月時点で累計150件の受付
・セコム損害保険と連携して検査と治療を保険対象にしている

セッション4 & 懇親会

ざっくりですがこんな感じでした。いろいろ情報を集めることができたので、どこかで記事を書いて参加費を回収したいです。

ここまでご覧いただきありがとうございました。他ではなかなか読めない内容だと自負しています。せめて交通費くらいは回収したいので、下のクリエイターサポートから寄付をお願いします。

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