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科学ニュースのテンプレを守るとき、壊すとき

「みんな、宇宙に最も近いところに行きたいんですよ」
2030年。東北新幹線、一ノ関駅・水沢江刺駅間の走行中、こんな車内アナウンスが流れるかもしれない。「ここから東にある北上山地にILC、国際リニアコライダーがございます。世界中から研究者が集まり、宇宙の謎を解明する研究が行われています」

この2つの文章は、今週JBpressで公開された記事の書き出し、いわゆるリード文というもの。2本とも7月6日までなら全文が無料で読めます。

記事は、素粒子研究で使う大型実験装置「加速器」の新型(ILC:国際リニアコライダー)を東北地方でつくる流れになっているというもので、研究者へのインタビューをもとに書きました。

科学ニュースに存在するテンプレ

この記事では少し実験的なこととして、科学ニュースっぽくない書き出しにしてみました。

科学ニュースって「こんな背景があってこんなことがわかっていなかったんだけど今回こんなことがわかってこんなことにつながりそう」という書き出しで始まることが多いです。テンプレみたいなものです。

テンプレは、書く側としては楽に書き始めることができる。読む側としても、いつも通りの心構えで読めばいいので楽。ウィン-ウィンです。僕もよく使います。

ただ、問題は「読む側の心構え」。科学雑誌を愛読するような読者であれば問題ないのですが、そうでない場合には最初から身構える必要があるので、最初の数行で読み続けるのを諦めてしまうことがあります。「あー難しそうだなー」とか「知らなくてもいいかー」とか。

有料の雑誌なら「せっかく買ったんだから読んでみるか」という気にもなりますが、無料のネット記事だとそうもいきません。読みたくないものを読むのは時間の無駄。

つまり、読者がある程度限定されているなら(有料で買っている、その記事の分野にすごく興味がある、仕事として読む必要がある、その記事を書いた人のファンであるなど)、テンプレが有効なのは確かです。

ただ、無料のネット記事で広く読まれたときには、もう少し違うアプローチも必要になりそうというのが最近僕が考えていることです。

テンプレをあえて外してみる

いかに「この先も読んでみよう」と思ってもらえるか、というところが無料のネット記事の最初の数行の勝負になります(実際にはタイトルも含めて)。

なので今回は、科学ニュースでよく使われるテンプレをあえて外して、少し情緒的な、小説の1行目のようなもので書き始めてみました。

「みんな、宇宙に最も近いところに行きたいんですよ」
2030年。東北新幹線、一ノ関駅・水沢江刺駅間の走行中、こんな車内アナウンスが流れるかもしれない。「ここから東にある北上山地にILC、国際リニアコライダーがございます。世界中から研究者が集まり、宇宙の謎を解明する研究が行われています」

これが「エモい」というものかどうかわからないけど、いろいろ模索しているところです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。サイエンスの話題をこれからも提供していきます。いただいたサポートは、よりよい記事を書くために欠かせないオヤツに使わせていただきます🍰